第100話

 潤がお店に向かって指を差す。


 パン!パン!と賑やかな音が何度も聞こえてくる。夕方見かけた遊技場である。


 早速とばかりに足を踏み入れる。何人かのお客さんが長い銃を構えて的を狙い、パン!という音を響かせる。的は小さいものから大きなものまであって、ひな壇のようなところにずらりと整列している。人形であったり将棋の駒であったりと様々だ。


 潤がお店の人に何か話してからこちらを向いたので、私も挑戦すると頷いた。小さなお皿が二つ差し出される。その中にコルクで出来た弾が五個入っていた。


 銃は思っていたよりも重く、さらにレバーを引くのに一苦労した。潤は軽々と引いて弾を先に詰め込んでいる。近くに居た子供はお父さんに引いてもらっていた。私ぐらいの女性はいなかったので、引けるのか引けないのか判断が難しい。


 とは言え、お嬢さんという柄でもないので頑張ってレバーを引いた。


 ギュッと弾を押し込んで狙いを定める。それから引き金を引く。パン!という音と共に身体に少しだけ衝撃が来る。あまりに一瞬で弾がどこへ飛んだのかもわからなかった。でも何も倒れていないので外れたのだろう。


 一方の潤はスーッと手を伸ばして片手で軽々と打っている。弾けるような音がした後、小さい的がコロンと倒れて落ちて来た。してやったりの表情がなんだか悔しい。


 私はすぐさまレバーを引いて弾を詰めた。ちゃんと狙っているのに当たらない。最初にもらったお皿の弾は一発も当たらずに終わった。


 潤が次のお皿を店の人に頼む。私の分も用意された。今度こそと遊んでいる割にはなぜか気合が入る。時々顔を見合わせたりしながら店内に音を響かせた。初めて小さい的を倒した時は喜びのあまり声が出てしまった。お店の人も手を叩いてくれる。潤も云々と頷いてくれた。


 パン!ゴトン‥‥ゴロゴロ。


 音が流れとなって店内に広がる。潤の腕前はなかなかのようで多くの的を倒している。私も夢中になって時間が経つのを忘れた。結局、二人合わせて十皿の弾をもらい、私が小さい的を七個で潤が二十個。その中には中くらいの的が三個ほどあった。

それぞれが得点になり、二人の得点で小さい猫のぬいぐるみをもらった。


 子供のようにそれを弄びながら次の遊技場に向かった。そこはスマートボールを専門でやっている店である。


 早々に中へと入り適当な場所を選んで潤と並んで腰を下ろす。この道何十年というキャリアを伺わせるお婆さんにお金を渡すとガラスの台の上に次々と球が転がって来る。それがとにかく騒がしい。


 球はガラス製で手に取るとザラザラしている。これも使い込んだ証なのだろう。


 コトンと穴に入れてレバーを引く。先ほどの銃とは違ってこちらは簡単に引ける。


 弾かれた球が台の中を散歩するようにあちこちに動く。私はそれを目で追い続ける。他愛もない動きなのだが見ているだけでも楽しい。


 潤は隣の台でポンと弾く。互いの台の様子を時々確認したりして笑みを交わす。

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