第四首『とらつぐみ啼く里の叙景歌集』

 公正と信義に信頼する世界諸国民の皆々様、サワディー・カップ。お待ちかねしました「ニッポンの朝ぼらけ」の爽やかタイムです。


 メインキャスターでMCの、ネッコだよーん、猫田猫です。この「ネッコだよーん」は、実在する猫田猫さんの挨拶の言葉だそうで、本人が聴いていないことを祈るばかりです。


 もう一人の猫田猫さんは、革命家を自称する伝説のバックパッカーで、三十年近く海外放浪を続けているとか。あれ、逆にこの短波放送を聴いちゃってる可能性も高いかな? まあ、同姓同名なので、仕方ありません。


 えーと、今日のピロートーク…じゃなくて枕の話はなんだけっか。あ、そうそう、渋谷区の公衆トイレで漏らしそうになったお話です。この何々という放送上のトークは、実際にって意味なんですが、漏れたのは大きいほうだったので、特に問題はありませんでした。


 いや、そんな尾篭な話題じゃなくって、トイレの話です。当局にも割と近い公衆トイレに、男性用がなかったんですよ。そのせいで間に合わなかったんですが、何ですか、男女共用トイレとか言って、新しいシステムらしいんですよね。


 良く貧乏そうな学生カップルが入っていく、バリアフリーの多目的トイレとは違います。あちらは別の意味での男女共用ですものね。正に多目的です。


 なんで性別表示がないのかと言うと、これ性差別云々とか、新しい性別の概念みたいな、横文字のアレと密接に関係しているそうです。横文字って言うか、アルファベットですらない…SODsでしたか、違うな。BLGTだった。


 今日はトレンドに乗って、そっち方面を特集しようかと。「けふの短歌」です。昨日も一昨日もコーナー名を叫んでなかったな。忘れてただけです。じゃあ、最初の一首。



「あら嫌ね 脱毛クリーム 塗ったのに

  剛毛すぎて 困っちゃうのよ」



 詠み人は、五十代男性で、団体職員だそうです。脱毛クリームって、私と逆じゃないですか。こっちは育毛クリームと育毛スプレー、それと民放さんのCMや新聞広告で買ったサプリメント各種です。ちっとも効果が見られません。個人差というレベルではなく、どれも絶望的な感じです。


 それで、この方はどこの毛なんだろう。髪の毛じゃないですよね。すね毛とかかな。まあ、おっさんの毛なんか、どうでも良いです。焦点は私の生え際と頭頂部です。毛根を鍛えるマジック・ブラシも深夜のテレショップで買ったんですが、流血して終わりでした。無念です。


 民放さんは最近、深夜はテレビショッピングだらけで、開き直ってますよね。CM枠は総放送時間の十八パーセント以内って基準があるんですが、テレショップは生活情報番組の位置付けで、CMではないという設定です。


 一方的に商品を絶賛して「今すぐお電話を」とか言いつつ、情報番組。公平性も中立性も、潔くかなぐり捨てています。詭弁で方便なんですが、民放連の基準なので我々NHKがとやかく言えることでもありません。


 しかも今やBSどころか、最新の4Kチャンネルでもテレショップ。豪華です。電波の無駄遣いです。そこへ行くと我が公共放送は、未明は4K放送してません。フィラーです。有料チャンネルだけ放送してないって本末転倒な状況ですけど、まあ、視聴者も少ないんで苦情が来たなら、逆にラッキーって雰囲気です。


 やっぱり時代は短波ラヂオ。そんな思いも込めて、じゃ、第二首。



ふんどしを 締めたる兄の 漢気おとこぎ

  菊の花びら ひらひらと散る」



 ご兄弟のようです。ブラザーって言ったほうが良いのか。仲睦まじそうで、羨ましい。お祭りで神輿を担いだりするのかな。状況は分かりませんが、菊は晩秋の季語です。前も話したけれど、短歌は無理に季語を挟み込む必要はありません。 


 私は菊人形が大好きです。これも秋の季語ですね。お菊人形じゃなくて、植物の造形のほう。麻布の狸穴まみあなにあった植木屋さんが始めたんですよね。最初は鶴と帆掛船だったかな。文化元年頃だから、十九世紀の初頭。そんな昔でもありません。


 あれ、何でこんな高尚な話を挟む気になったんだっけかな。少し後ろめたい気持ちがあるんでしょうか。連作っぽく、三首目、紹介しましょう。



「万力の 辰と呼ばれて サウナ風呂

  夜の神室かむろの 風林の音よ」



 詠み人は建築関係か、町工場にお勤めの方でしょうか。でも、勤め先は百人町って書いてあるな。新大久保の辺りですね。


 で、神室って…ああ、分かりました。神室町か。歌舞伎町の別名というか、そんなのゲームやってないと思い当たりません。歌舞伎町でやたらと喧嘩しまくるゲームです。『龍が如く』とか、放送で言っちゃって良いのかな。まあ、大丈夫でしょう。私は真島兄さんのファンです。


 すると風林も風鈴の誤字ではないかな。はやきこと風の如し、しずかなること林の如く…ではなく、風林会館じゃないですか。マニアック過ぎます。危ない歌舞伎町の代名詞。実際はそんなことなくて、一階の喫茶店は深夜もオープンしていて、放送業界では重宝されています。じゃ、関連で四首目。



胸筋きょうきんを 開きて語る 紳士ども  

  御苑の北に 乱れ咲く薔薇」 



 御苑は新宿御苑のことですね。その北側は新宿二丁目です。妙なグッズが陳列されている専門書店もあったりします。一首目のソフトな雰囲気から脱線して、ガチ系です。朝の番組らしく、ガチ系で攻めてみます。

  

 何でしたっけ、最近のSODs…じゃなくて、BLGT問題か。うちの局でも盛んに取り扱ってますけど、あれ、ガチ系を排除してますよね。ほんわかした感じの人ばかり紹介して、ゴリゴリのお兄さんとか全然画面に出てこない。どうも、根本的な部分で思いきっり差別しているような気がします。


 まあ、私が愚痴ったことろでNHKの報道スタイルが変わることはないんですけど。あれ、SODじゃなかった。SDGか。SODは私が良く観るメロドラマの制作会社だった。


 BLGTは合ってますよね? BL小説とか、BL漫画とか。うちの長男坊が良く読んでます。父子で貸し借りしたり。万力という隠語も小説で知りました。そんなアットホームな話題はさておき、最後の歌です。



「八卦よい わんぱく坊主の 腕自慢

  臀部眩でんぶまぶしき 少年相撲」



 結局、爽やかな歌で締めくくってみたり。お子さんの運動会を詠んだものでしょうか。ファミリーの和やかな雰囲気が出ています。あれ、でも詠み人は学生さんみたいですね。男性ですが、お父さんじゃないはず…まあ、スポーツ系の健全な感じが醸し出されているので、拘るところでもありません。


 それでは、ここらで一曲。紳士向けのロックでも行きましょう。VERSAILLES…ではなく、これボーカルKAMIJOさんのソロプロジェクトですね。『カストラート』。お聴き下さい。

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