島の守り人
藤泉都理
島の守り人
授業中。
先生はいつもドアを背負っている。
幼馴染はいつもガムを噛んでいる。
隣りの席の同級生はいつもプリントを解いている。
力を溜めているそうだ。
異世界から押し寄せてくる魔物を退かせるための。
行ってくる。
先生も幼馴染も同級生もそう言って、先生が背負うドアの中に消えていく。
その間、私はひとりぼっち。
何の力もない私はひとりぼっちで、教室で三人の帰りを待つ。
力がほしいとも、一緒に行きたいとも思わない。
いつも疲れ切って帰ってくる三人のために、ここでしかできないことがあるから。
或るものを持った私は教室を飛び出して、校庭を通り過ぎて、小さな島を一周する。
人。
鶏。
草。
土。
梔子。
無花果のジャム。
磯。
漬物。
炊き込みご飯。
魚介類。
機械の整備油。
島の匂いをまとって、また教室に戻る。
「「「ただいま〜」」」
「お帰り!」
今日も三人が戻ってくる時間に間に合ったようだ。
私が持っていた或るものーもふもふの巨大ぬいぐるみを床に置くと、三人は最後の力を振り絞って近づき、ぬいぐるみの上に倒れ込んだ。
島の匂いを嗅ぐと、帰ってきたって安心したできるんだ。
三人が呟いた言葉を聞いた時に決めたんだ。
この島の匂いをまとわせたお気に入りのぬいぐるみと一緒に、三人を迎えるんだって。
「おつかれさま」
眠っている三人を見てから、私もぬいぐるみの上に倒れ込んだのであった。
(あ〜。今日も帰りが遅くなるな〜)
起きたら、授業再開だ。
(2023.7.1)
島の守り人 藤泉都理 @fujitori
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