夜久の話② /ふたりの話①
「『京家全集』?」
古めかしい本だった。古い家なので、本くらいあるのが普通だろうと思ったが、気になったので開いた。
初めのページには祖父の言葉だろうか、京グループを経営するにあたってのいろいろなことが書かれていた。正直、会社の経営にあまり興味のない僕には、どうでもよかった。
ぱらぱらとめくっていく。あるページに差し掛かったところで、はらり、と何かが落ちた。
『京家長男長女殺人事件』と書かれた冊子のようなものだった。兄と姉は事故で死んだと聞かされていた。意図的に殺された訳ではないと聞かされていた。僕はぐるぐるした謎の感覚に襲われた。
僕のショックを和らげるために嘘を話していたのか、それとも隠さなければいけない事情があったのか。
僕は怖くなって、冊子を持って部屋に戻った。朝音と話したかった。
(朝音視点)
大学が終わり、特に用事もなかったためすぐ家に帰った。
玄関のドアを開けると、いつもは明るい笑顔の弟が、悲壮感満載の顔で待っていた。
「朝音兄さん、ちょっと来て」
弟・夜久の部屋に連れて行かれた。入って早々、謎の冊子を渡された。
『京家長男長女殺人事件』
「何これ」
「書斎に京家全集っていう本があったんだ。お祖父さんの言葉とかがまとめられた本だったんだけど、その間にこれが...」
夜久は、冊子を指さした。
「中は読んだのか?」
と聞くと、夜久は首を振った。
冊子の表紙を開いた。事件概要、と書かれていた。
被害者の欄には、
「加害者、豊川優」
夜久の口からそんな言葉が零れた。
「兄さん知ってる?」
俺は
「うちの元家政婦だよ」
君を見つけた午前二時 渡良瀬かなめ @kaname_watarase
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