第36話 グシオンと上位悪魔

 上位悪魔の拳が、オルロスの胴にクリーンヒット。

 衝撃が大きかったため、オルロスは壁を突き破って廊下まで飛ばされた。

 それでも何とか意識は保っている。


「ほう・・・これだけではやられないか」


 オルロスに油断は無かった。

 それでも反応することが出来なかったのだ。


「くそ・・・」

「オルロス!」


 メティは下位悪魔と戦いながらオルロスの心配をしている。

 何年の一緒に行動を共にしてきたが、ここまでオルロスが飛ばされたことは無かったからだ。

 それほどオルロスが強かったということでもある。

 しかし、今戦っている上位悪魔はあっさりと攻撃をヒットさせた。

 中位悪魔のように簡単には決着しない。


「俺は大丈夫だ・・・」


 オルロスは何とか立ち上がり、守るようにメティの前に立った。


「メティのことは俺が守る・・・」

「それは本当にできるかのぉ?今の攻撃も防ぎきれなかったのに」

「舐めるなよ・・・光魔法・第三階位『ライトムーブ』」


 オルロスの身体が光に変わり、光速で移動することが可能になった。

 さきほどは上位悪魔の動きに対応できなかったが、この状態であれば問題はない。


「光に変わったところで無意味。やってみるがいい」

「すぐに仕留めてやる」


 オルロスは光速で移動し、大剣を上位悪魔に叩きつける。

 この速度には上位悪魔も反応できない。


「さすがに速いな」

「このまま終わらせる」


 何度も何度も攻撃を繰り返し、上位悪魔の身体にはいくつも傷が出来ていた。

 上位悪魔は何とか捕まえようと手を伸ばすがそれは叶わない。


 これを見ていたグシオンは上位悪魔の手助けをする。


「生まれたばかりの上位悪魔では荷が重そうじゃな。・・・回復魔法・第二階位『エリアヒール』」


 グシオンは回復魔法によって上位悪魔だけでなく、メティに傷つけられていた下位悪魔まで回復させた。


「助かる」

「傷はすぐに癒せる。はやく倒すんじゃ」

「ああ」


 傷が癒えたとしても『ライトムーブ』を使っているオルロスの速さには対応できない。

 だから上位悪魔は戦い方を変えた。


「しまった!?」

「回復してもらえるなら、捨て身覚悟で捕まえられるよな?」


 上位悪魔はあえて隙を作り、攻撃させる場所を誘導。

 そこに攻撃を受けた瞬間にオルロスを捕えたのだ。


「くそ・・・光魔法・・・」

「させない」


 オルロスは抜け出すために魔法を使おうとした。

 しかしそれを上位悪魔は見逃さず、魔法に集中させないために頭を強く殴った。


「ガハッ!!」


 メティも疲労が溜まっており、回復した下位悪魔に対応しきれなくなっていた。

 そこでオルロスが捕らわれた瞬間を目の当たりにしたことで集中が途切れる。

 そしてついに下位悪魔に捕えられてしまった。


「メティ!!」

「・・・すみません」

「謝ることは無い!・・・これは俺の責任だ」


 グシオンはオルロスに近づき、頭を箸掴みにした。

 そして顔を覗き込み、杖を心臓に当てる。


「ワシと一対一の戦いであれば、どうなっていたかわからんな。君はそれほどの力を持っていた」

「悪魔に褒められても悔しいだけだ・・・」

「そうか。ではその悔しさを無くすためにも、早く命を刈ってやろう。・・・ワシら悪魔を恨むのではなく、君をヒトにした神を恨むんじゃな」

「・・・シンとの約束は果たせなさそうだ。『悪魔のいない平和な世界にしよう』って誓ったのにな」


 今にも殺されそうなオルロス見ていたメティは何とか下位悪魔の拘束を抜け出そうと、必死にもがいている。


「やめなさい!オルロスを放して!」

「うるさい女じゃな。まあ、すぐにこの男と同じところに連れて行ってやるがな」


 グシオンはオルロスを殺すために、力を溜め始めた。

 徐々に杖の先が光りだす。


「・・・」

「水魔法・第二階位『ウォーターランス・・・」


 オルロスは後悔がありながらも、死ぬ覚悟はできている。

 グシオンの魔法によって槍状の水が生まれ、オルロスの心臓目掛けて発射されそうになった。


 しかし、オルロスが命を落とすことは無かった。


 そのとき、窓から稲妻の速さで部屋に入ってきた者たちがいた。

 そのうちの一人がグシオンに突撃したことで、魔法はオルロスから外れたのだ。


「なんじゃ・・・?」

「魔物?」


 グシオンも上位悪魔も、突然の出来事で驚いている。

 オルロスはその隙に上位悪魔から抜け出し、メティを救い出していた。



「人づかいというか、魔物づかいが荒いよ・・・」

「一番早く移動できるんですから、仕方がありません」

「まあお陰ですぐにお目当ての奴を見つけられたぜ。・・・なあ、グー爺!」


 窓から突撃してきたのは3体の魔物。

 リュウトともにこの世界に生まれたアクモ、タナ、アレスだ。

 3体ともゴブリン達と戦ったときよりも成長していた。


 アレスは2メートルほどの身長になり、筋肉も肥大。

 タナは1.5メートルほどの少女の姿に変化。

 アクモも、その二人を背中に載せることが出来るほど大きくなっている。


「・・・大きく姿が変わっているようじゃが、あの時の魔物か」


「本当に僕たちで勝てるのかな・・・」

「勝ちますよ。・・・そのために来ましたから」

「さあ、はじめようぜ!」

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気まぐれで転生。魔物達と共に安住の地を @0000t

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