0
始まりの舞台はとある国の都市、いたるところに工場やビルが建ち、平和で笑顔が溢れていた昔の時代、現時点で解決できないと考えられていた課題を解決できるかもしれないと、数年前とある国の政府が画期的なプロジェクトの実行に当たることを発表した。
プロジェクトの名は「SCPM」。”機械化”を推し進めていくといった内容だった。
詳しい内容を説明すると、便利な世の中にするためにあらゆるものに対してAIをつけたり、アナログな作業を機械を使用することで人々の負担を減らすというものである。例を出すと、畑の一連の作業をAIの搭載された機械に任せれたり介護専用のロボを各施設に設置するなどetc...。
当時賛成する人はいたが、結局は反対する人がほとんどだった。なぜかって?もちろん当初はそれについて無知な人が多かったんだ。けれど...
___どうやら最近、何やら怪しい噂が飛び交っているらしい。
「俺、理解しちまったんだよ...もしかしたら今すぐにでもどこか別の国に逃げないと、この国のみんなやばいかもしれないんだぜ?」
いきなり呼ばれて来た後に伝えられた彼の言葉は、暫くの間沈黙を生んだ。
息巻く友人の声色がいつにもなく真剣で、ここに呼ばれたときはよっぽどのことがあったんだろうと踏んでいた。なぜなら彼はよっぽどのことでなければ弱音を吐かない。今の様子を見てなにか宥める必要もないかと考えた。そんな不確定な噂ぐらいでありえない程落ち込んでいる意味がわからない。いつも適当だしなこの人。不真面目だし。
...意味がわからん、と返しちょうど運ばれてきた紅茶に手を伸ばす。
ここの紅茶は美味しいと有名だったので、昔茶葉だけ買って自分で入れてみたときがあった。その時はあまり美味しく感じなかったが、今日店のものを飲んで、どうやら淹れ方の問題だったらしいことを知った。口に含んだ瞬間スッキリとした香りが鼻から抜けていく。付け合せのジャムも自分好みのものだったので、とりあえず今日ばかりは感謝しないとな、と友人の方を見る。
「すまん、今電話するから待っててくれ」
すると、彼は何やら慌てた様子で身振り手振りしながら通話をしているようだったので、感謝の言葉は言わないでおこうと決めた。彼のコロコロ変わる表情が少し可笑しくて、しばらく胸の内で笑いを隠しつつ落ち着こうと外へと視線を移す。
今いる場所は騒がしい街中の中央辺りにある人気のパン屋さん、の店内。
いつもなら店の中に空いている席はないのだが、今日は偶然にも窓側の二席分が空いていたのでとてもゆったりとした時間を過ごせている。向かい側にも店がずっと並んでいて...いわゆる商店街みたいな感じだ。にしては少しおしゃれすぎるが。
正面を見ると彼はいつの間にか通話を終えていて、今度は何を言うわけでもなくじっと僕の方を見つめていた。急に静かになったので大丈夫か、と聞くと
「なんでもないよ、そんなことより...」
と、普段道理の中身のない世間話を始めた。
屈託のない笑顔を ひじま @hijima316
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。屈託のない笑顔をの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます