第1回カクヨム短歌・俳句コンテスト俳句の部

佐久凡太郎

京都洛北洛西の夏

結界の竹の置かれし寺若葉

禅寺の広き庫裏辺の武者人形

住職の講話立ち聞く牡丹かな

小仏に蛍袋の献ぜられ

禅寺に鳴る鐘数へ梅雨夕焼


神官の杜に摘みゐる賀茂葵

石楠花や斎王代の禊ぐ川

観客に「欲し」と言はれし挿頭草かざしぐさ

実桜や稚児ややこ泣き出す宮参り

清らかな禽声耳に茅の輪かな


空映す深泥池の燕子花

狛犬の瞼に重く苔茂る

香ばしきあぶり餅屋の釣忍

御旅所の舞台に若き能演者

夏蝶の語りゐるかに留まる塚


玄関の鐘を三打し沙羅の花

新装の賑ふ古社や目白飛ぶ

風鈴の足湯に浸かる渡月橋

化野に道を訊かれし五月闇

美女柳逝きし庵主を偲びけり


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第1回カクヨム短歌・俳句コンテスト俳句の部 佐久凡太郎 @DZAsaku

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