128話 後処理


 翌日……。


 体の調子が戻ってきた俺はアリア達と天堂城跡地に向かった。俺を見て頭を下げる兵達に楽にする様に伝えて跡地に入ると敷地内は残骸や瓦礫だらけでその撤去作業が行われていた。


「これは……撤去だけでもかなりの時間が掛かるな」


「術とか使える人は別の必要なとこに割り振ってるのもそうだけど……この城大きすぎるのよね」


 ラクルとアリアがその様子を見ながら口にする。事が落ち着いたらもう少し人員を割り振るべきかと考えながら足を止める。


「此処だな」


 目の前には元は塔だった黒い残骸の前に辿り着く。空を突く威容を誇っていたのだろうそれは今は見る影もない。


「ラクル、やるぞ」


「ああ」


 ラクルが魔術で生み出した土の腕を操作する。俺も一緒に瓦礫を次々とどかしていくと瓦礫の中から原型を保った部屋が姿を現した。


「これは……結界か?」


「ムドウは相当警戒心が高い奴だった。そんな奴が資料を放ったらかしにする筈がないと思ったが当たりだったな」


 常に自分の安全圏を確保しようとした奴が自分の生命線と言える黄泉呪法を分散して隠すよりも目の届く範囲に保管する……そう思ったが当たりの様だった。


 カオスクルセイダーを手にして部屋に貼られた結界を斬り裂く。ガラスが砕ける様な音が響いて部屋に入ると中は資料や本で埋め尽くされていた。


「これ全部が……呪法の資料?」


「……正直全部燃やすのが早いが、中には貴重な歴史資料もあると考えると内容の精査もしてからにした方が良いかもな」


「いや、それは大丈夫だ」


 部屋に入ると本や資料を見渡す。大量の本の中から特有の魔力を感じる本を手に取り中を確認していく。


 手にした本の中身はドウゲンが行っていた黄泉呪法の研究や術に必要な道具や手順等が記されていた。


 中には黄泉の魔物や骸の種類が記されていたいるのもあり、そうした対処方法の確立に役立つのを分けてまとめた本と資料をアリアに任せる。


 アリアは剣を抜いて宙に放られた本や資料を斬り裂く、斬り裂かれた資料は一瞬で燃え上がって灰になっていった。


「他のは急がなくて良いと思うが……まぁバックに入るだけ回収はしていくか」


「ああ……それにしてもどうして分かったんだ?」


「なんとなくなんだが……黄泉兵達が纏っていたのと似た魔力? 気配を感じ取れる」


「……それって大丈夫なの?」


「嫌な感じはしないんだが……戻ったらアマネ殿に見てもらうか」


 ひとまず用件を終えて拠点に戻る。明日の為にもとアマネに頼んで見てもらうと驚愕の表情を浮かべた。


「ベルク殿、落ち着いて聞いてください……貴方に黄泉の力が宿っています」

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侯爵次男は家出する~才能がないので全部捨てて冒険者になります~ 犬鷲 @ekureil

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