第15話 祠

 さらに『赤い封筒』についての細かい情報を調べてもらい、封筒の投函先が、校舎から少し離れたところにあると知りました。

 僕はそこへ行ってみることにしました。


 中富も誘いましたが、生徒会の仕事があるとのこと。

 彼女もあれで忙しい人です。


「調べても無駄だと思うけどなぁ。そもそもまじないのくせして手順が面倒だよね。赤の封筒をわざわざ用意してさ。学校の怪談とか七不思議みたいに怖くもないし、変なものだよね」

 それだけ言い残していきました。


 自転車通学用の裏門から出てしばらく砂利道を進みます。

 駐車場らしき広場を過ぎた先、右手に山から続く斜面の下に祠がありました。


 簡単に見つかりました。

 見るからに普通で、拍子抜けです。

 これに封筒を入れると願いが受理される、ということらしいです。



 雨風にさらされてきたのでしょう、使われた木材はグレーに変色しくたびれて見えます。

 しかし屋根だけが真っ赤。

 小さな観音開きの扉が備えてあります。


 近づくと、重く湿った空気が肌にまとまりつきます。

 何だか気持ち悪いです。

 水捌けが悪く湿度が高いのでしょうか。


 扉を開こうとしますが、変形してしまったのか開きません。

 よく見ると上の方に僅かな隙間があり、ここからなら封筒ぐらい滑り込ませられそうです。

 近くで見ても赤い封筒らしきものは確認できません。

 そんなに大きくない祠です。封筒を入れられ続けたら、いずれあふれるでしょう。

 扉を開ける方法があって、定期的に掃除されているのかもしれません。

 そういう存在がいるなら、封筒の中身を確認していてもおかしくない。


『赤い封筒』は誰かの管理のもとにある、その可能性を考えないではいられませんでした。


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