「ギ・タ・イ」
低迷アクション
第1話
「ですから、我々の立場としては、今日は不燃ごみの日ではないので、違反シールを貼るだけなんですけど…何分、危ないので…いや、何処の誰が出したモノか、わからないので…だから、あまり…お子さんに触らせては…」
「アナ、アナ」
「そうだね~みらいちゃん。アナだね~?わかりました~。気を付けます~」
全く、話を聞かない、若い母親に、ごみ収集作業員の“L”は心の中で舌打ちする。
サブリミナル効果のように
「ありのままで~」
の歌が世を席巻していた頃の話である。L達の収集ステーション、公園前のスペース、可燃ごみに混じり、前項の歌を歌うキャラを模した“児童用の鏡台”が不法投棄された。
いつの世でも、出したモン勝ちの世の中…捨てた者が回収になど来ない。わかってはいたが、公園前と言う場所が悪かった。
遊ぶ子供達が鏡台に注目し、ベタベタと触るようになった。もし、何かあったら、責任はこっち持ちになる。それを踏まえた上での注意だったが、良い年こいた大人も、アニメ作品にハマる時代…Lの注意は全く耳に入らないのは当然…
仕方なく、詰め所に戻り、対応を仰いだ。
「玩具の鏡台…?あれ、確か〇〇(他の地域名)でも同じようなのあったな。あれだろ?ありのまま~の奴」
「それです。えっ?ブームなのに、そんな何個も捨てられるモンすか?」
「いや、よくわからねぇけど…何か、違反貼ったら、消えてたって…」
「出した奴が回収?したって事ですか?」
「それか、他の奴が持ってったか…?人気だし?とにかく、貼ったんだったら、消えるんじゃないか?」
釈然としないまま、次の収集日を迎えた。L達のコースには、公園のごみステーションが2つある。
先に回る方が鏡台にあった場所…違反シールの影響か件のモノはない。しかし…
「気味ワリいな」
2か所目の公園に鏡台はあった。違反シールは貼っていないが、多分同じモノ、既に何人かの子供達が触りたそうに、Lと鏡台を交互に見つめている。
「詰め所で言ってたの、これ?」
この収集の時に乗っていた、同僚は、いつもの人ではなかった。所内で再任用かつ最年長の大先輩…
頷くLの横で、おもむろに咥えた煙草の煙を鏡台に吹きかけ、そのまま、収集車の吸い込み口に放り込む。
「連中もさ、色々調べてんだよ?」
そう言って、破砕機の駆動ボタンを押す。プラスチックが潰れる音はすぐに止み、動物の咆哮と肉の潰れる音が、呆然とするLの耳に響いたのは、ほぼ同時だった…(終)
「ギ・タ・イ」 低迷アクション @0516001a
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