5月28日
最近は3人のグループLINEでのしょうもない会話以外に、個人LINEで「おはよう」と「おやすみ」を言い合うようになっていた。
特に理由もないし、無理にLINEを続けようとしているわけでもなく、自然なやり取りとしてだ。今はそれがとても心地よい。
そしてまた朝から忙しなく稼働するグループLINE。
たまたま全員のオフが被ったこの日は、幼なじみのあいつの一言でカラオケに行くことになった。
そして今に至る。
私はコの字型の真ん中に座り、横棒部分に2人がそれぞれ座る。
なんだか距離はあるけど、1番顔が見えて動きやすいので自然とこうなった。
守備範囲がバラバラな私たちのセットリストは、ハードロックとボカロとJPOPが入り乱れて混沌と化す。
あいつの歌う紅を聴きながらデンモクと睨み合っていると、右の方に人の気配を感じた。
その方向を向けば暗闇の中でもよく分かる綺麗な鼻筋が目の前にあった。
「何入れんの。」
「んー悩んでる。」
「んじゃ、これ一緒に歌おうぜ。歌える?」
そう言って示されたのは「小さな恋のうた」。
もちろん歌える。何回自分を重ねながら聴いただろうか。
ほとんどゼロ距離にまでなった2人の距離。
そんな状況で曲が始まった。
ワンオクターブだけハモるAメロとBメロ。
そして同じキーで歌うサビ。
いつも重ねていた存在が真横にいる中歌うのだから、心臓が異常なほどに脈打つ。
歌詞なんて全部覚えているのに目線は画面から離すことができない。
そうでもしないと本音が漏れてしまいそうだった。
ときどきちらりと目線を送るが、スクリーンに照らされた綺麗な横顔が見えるだけで目は合わない。でもそれでいい。
夢ならば覚めないで
夢ならば覚めないで
そんなフレーズが繰り返されて大サビが近づいてくる。
あぁ終わってしまう。
このまま夢を見ていたいと思ってしまう。
ふと視線を感じた。
右を向けば今度こそしっかりと交わる視線。
彼が柔らかく微笑むからこっちも微笑み返す。
あなたにとって大事な人ほどすぐそばにいるの。
あなたにだけ届いてほしい。
そのまま目が離せないまま曲は終わった。
エンドロールにはまだ遠くて 湖都 @1203tomato-an
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