第32話 紹介
「さて、腹ごしらえも済んだので町の案内を…」
コォン!コォン!
「また呼び鐘!」
「今日は朝から来客が多いですね」
「私が出るー!!」
「じゃあ俺達が片付けとくか」
「手伝いますよー!!」
タタタタ…
ガラッ!
「はーい、おはようこんにちこんばんはー!!…ん?」
「ふふ、おはようございます」
扉を開けた麗の前に一人の女性の姿が映る。
妖しい雰囲気と暖かい笑みを浮かべた美女が優し気な声色と共に彼女の意識を釘付けにしていた。
少し微笑んだたれ目と口角、瞳は吸い込まれる様に黒く光をほんのりと宿している。
黒く艶やかな黒髪は腰辺りまで伸び、垂髪にして綺麗に束ねられていた。
腰から上には巫女服の様な清廉な白衣と赤い掛襟を纏っているが、腿の根元から下には一糸も纏わずに二本下駄のみを履いて足の大部分を露出させている。
そんな女性の口角が更に上がり、意味深な舌なめずりの後、楽しそうに口を開いた。
「……誰?」
「……ふふ…さて誰でしょう?」
「………あ」
「?」
「
「……………」
「虚さんでしょ?」
「……………………」
「ねぇ何で黙って」
ガシ!!
女性の手が
「え、あの…「必殺…」
「?」
「忘れろ光線!!!!!!!」カッ!!
ズビビビビビビビビビビー
「ぎょぁぁぁぁぁっぁっぁ!!直接記憶いじらないでぇ!!ぁっぁっぁ、ネコチャカワイ…」
プシュウ…
「……さぁもう一度、私は誰でしょう?」
「ネコチャ、ネコチャ…」ビクン、ビクン…
「ふふ、よろしい」
ドタドタドタ!!
「麗!!大丈夫か!!」
「あら、おはようございます、
「誰だ!!なんで俺の名前を知ってる!?麗に何をした!?」
「少しばかり、記憶をいじらせてもらいました」
「記憶?」
「私の「忘れろ光線」は対象の頭に可愛らしい猫の姿を無数に送り込み、脳内を破壊し尽くす事で直前の記憶を消し飛ばす必殺にして唯一の奥義、彼女はたった今、その情報を処理しきれずに止まってしまっています、さぁ次は貴方にお聞きします、私は誰で…!」
「あ、お前虚か、何だよ、ビックリした」
「…………………」
スタスタ…
「どうした、こっち来て?」
ピト
「?」
「空気読め忘れろ光線!!!!!!!!!」カッ!!
ホビビビビビビ!!
「うごぁぁぁぁあああっ!?」
―――――――香色家 居間
「ネコチャ、イトシイ」ポケー
「………」シーン
「もー!虚さんったらまーた無闇に忘れろ光線打ちましたね!?」
「…まぁまぁ、
「約束破った人は黙って!!」
「おぐぅ!! さっきから酷いぃ…! シクシク…」
「虚さんも、今日という今日は許しません!!」
「あぅ…すみません」
「その技本当に危険なんですよ!?前に
「だってぇ…折角良い感じにカッコつけてこの姿で登場して驚かせようとしてたのに…あんなすぐに当てられちゃって…恥ずかしいですし、ムカつきましたし…辰之助様には昨日乱暴されましたし…」
「らんぼ…!? ゴ、ゴホン!確かに気持ちは何となく分かります、事前に"変化"の事を教えていたのも私達のせいかもしれないですが、流石にやり過ぎです!辰之助さんがもう二十分くらい喋らなくなってるんですからね」
「すみません、でもやる事はやりましたよ?」
「…やること?そもそも虚さんは何の用事でここに?」
「予知が出たので伝えに来ました、今回は辰之助様と麗様の二人が対象だったので口で説明しようと人の姿で来たんですが…魔が差しちゃって、テヘ」
「本当に何やってんの!? 伝えなくて大丈夫なんですか、それ!?」
「大丈夫ですよ、流した情報の中に混ぜておきましたから」
「ちゃんと伝わってるんですか…?」
「お二人なら大丈夫ですよ、それと実は碧良様にもその事で用事があったんです」
「?」
「
「え!?」
「あの二人を…!?」
「どうやら…そのようです」
―――――――数分後
「………ハッ!!ここは!?私は何を…?」
「…うぉぉ…頭痛ぇ…」
「おはようございます、お水をどうぞ」
「「ゴクゴク…ぷはぁー」」
「ありがとー、
「…あぁそういえば、先ほど虚さんが来てましたよ」
「あぁ、何故か覚えてるし予知の事も何故か知ってる」
「うん…何か猫と一緒に知らない人たちと大きい桜の木みたいなのが頭の中に…ついでに足が丸出しの巫女服の女性も……うっ、頭が…」
「…実はその事で虚さんから頼まれた事がありまして…」
「暖かい足袋を探してほしいとかかな?」
「それは晃次郎さんの役目ですね」
「そんな事してんのか、あいつ」
「予知の方です、とある二人を紹介するように頼まれました」
「誰だ?」
「
「…知らない人だね」
「弥宵さんは討魔隊の隊長や一部の隊員の武器の鍛造を行う鍛冶の仕事を担っている人です、私の刀も彼女に作っていただきました」
「迅って人の方は?」
「…現在の討魔隊において比類なき強さを持ち、その圧倒的な実力をもって我々の道を切り開く、この国で
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