第31話 料理
チュンチュン…
「……ん…ふわぁ…」ムク…
「……すぴぃー、すぴぃー…」
「………………っ…!?」
「……うへへへへ…」
「…あ、
「…………すぅ…」
(帰ってきてたんですね…ビックリしたぁ…)
「…にしてもどうやって…」
「んが!?」パチッ
ガラ…
「ん、んぅぅう…!」
「…おはようございます」
「……ん、おはよー」
「…いつ、お帰りに?」
「………えーっと…恥ずかしくなって海まで行っちゃって…そのまま泳いでて…」
「…………」
「気が付いたらここにいた…のかな?」
「それ大丈夫なんですか!?どこか不調は!?」
「いやー、知らない人に助けて貰ったのは覚えてるけど…でもどうやって戻って来たか覚えてない…てか口が塩辛い」
「お水飲みましょう」
コォンコォン!
「うわ!?何!?鐘!?」
「呼び鐘です、誰か来たみたいですね」
「おー、そんなのあるんだ」
「少し出て来ます、畳んでおいて下さい」
「えー!?私分からない!」
「……戻ってきたら教えます…」
「…はーい」
スタスタ…
コォンコォン!
「はいはーい、お待たせしましたー…!」
ガラガラ…
少し眠いままの目を擦りながら扉を開ける。
家の前に立っているのは美しい銀色の髪の毛を後ろへ一つ結びにして、明るめな翡翠色を基調とした色の服を身に纏い、凛とした顔付きに青い瞳を宿した少女であった。
「…あ、おはようございます、
少女が玄関から現れた千彩を見るや否や、子犬のように近づき明るい表情と声で挨拶を交わす。
「おはよう…
碧良と呼ばれた少女は千彩の疑問の言葉と共に心配した表情へと変わり、申し訳なさそうな声で話し始めた。
「昨日倒れたと聞いて…お見舞いに行けなくてすみません…」
「…え、あぁ!それならもう大丈夫!悪いのは私だし、全然気にしなくていいから…!」
「……分かりました、でも今度何かお詫びさせてください!」
「本当に良いから…!にしても珍しいね…こんな朝早くに来るなんて…」
「あ!そうでした!昨日溺れてた人がここに来てる筈ですが…」
「昨日…溺れてた?」
「はい!」
「……あーうん、なるほどね…大体分かった…」
「?何がですか?」
ガラガラ!
「千彩さーん!!終わったよー! 頑張ったぁ!」
「………あ、麗ちゃん!昨日もしかして…」
「あー!!昨日助けた人!!」
「うげ!!昨日助けてくれた人!!」
(……やっぱり…)
「うげとは何ですか!?恩人に向かって!!」
「ごめんって言ったじゃーん!!」
「ごめんで済んだらこんなに怒ってませんよ!夜中に起こされて秋夜のちょっと寒い海の中に入って助けた私の気持ちを考えなさーい!その後適当に謝ってどっか行っちゃうし!!」
「眠かったんだもん!!」
「言い訳無用!!」
「ひぎっ!!」
「あ、碧良ちゃん…その辺で…」
「千彩さんは約束破って倒れてたんですから黙ってて下さい!!」
「ぐっはぁ!」
「さぁ、貴方の味方も倒れた所で…!」
「私達も味方なんだよ…碧良ちゃん…がくっ…」
「…
「嫌だぁぁ!!」
ガラガラ…
「おい、朝っぱらから何してんだ?」
「あ、
「うるさ過ぎて目が覚めちまった」
「あ、貴方ですね、長陽 辰之助さんとやらは…」
「そうだが…お前は…?」
「私は四番隊の隊員、
「ふわっふわじゃねぇか、さては何も聞いてねぇな」
「き、聞いてますよ!ほら…あの…えーっと…何か…えっと…あ!でっかい蜂をぶち殺した!」
「五割正解だ、丸にしといてやる」
「やったぁ!」
「た、辰之助…助けて…!」
「…お前はお前で何したんだよ」
「…夜中の海で…助けてもらった」
「ちゃんとお礼言ったか?」
「言った」
「迷惑かけてごめんなさいは?」
「言った」
「なぁ、こいつちゃんと言ってたか?」
「ありがとー、ごっめーんテヘ、て感じで」
「よし、土下座しろ」
「ぼべんばばびぃぃ!!」
(何でか溺れたみたいになってる…)
――――――香色家 居間
コト
「はいどうぞ、粗茶ですが」
「ありがとうございます」
「良ければお菓子もどうぞ」
「あ、そういえばご飯食べてなかったんですよ、これで午前中は動けそうです!助かります!」
「…ご飯食べてく?」
「良いんですか!?やったぁ!久しぶりです!討魔隊の料理四天王と呼ばれる千彩さんの手料理!!」
「…もー、その呼び方恥ずかしいから止めてって言ってるのに…それじゃあ用意するから待っててね」
スタスタ…
「そんな風に呼ばれてたんだ…確かに今まで食べた料理も凄く美味しかったかも…」
「……四天王って事はあと三人いるんだよな、誰だ?」
「私です」
「お前かよ、四天王が四天王の料理楽しみにしてんのかよ」
「え?駄洒落…?四天王が
「違うのに腹立つな…あと二人は?」
「
「何か知ってる奴ばっか…ってあいつ料理すんのか!?猫だろ!?」
「毛とか入っちゃうよ!?肉球の跡ついちゃうよ!!」
「後者は別に良いだろ、可愛いし」
「……あ、そうか!お二人は知らないんですね」
「「?」」
「あの姿、彼女の「変化」している姿で、本来は人の姿なんですよ」
「………変化って?」
「…妖魔と鬼が持つ力だ、その二種族だと意味が異なるが妖魔の場合は異形と人の姿を切り替えることが出来る、お前の知るものだと能蜂のが一番分かりやすいだろうな」
「あの気持ち悪いやつね……え、つまり虚さんって…妖魔なの?」
「はい、厳密には半妖らしいですが…元は人だったけど色々あって今に至るらしいでです」
「……いやまぁ冷静に考えたら…あんな喋れる(?)猫は妖魔しか居ないか…」
「本人は猫形態が好きらしいので偶にしか戻りませんが…」
「えー、見てみたーい」
「信頼した相手にしか見せないそうです、いざとなる時に逃げられるからとか何とか…」
「じゃあ見せてくれる様になるまで頑張る!」
「因みに私は見た事あります!」
「えぇー!良いなぁ…!」
「むっふふー!そうでしょうそうでしょう、精々頭を垂れて敬いなさい!」
「ははぁー、神様仏様碧良様ぁー!」
「んー! 自己肯定感の高まる音がします…!」
「それで良いのか…お前は…」
「こうでもしないと挫けそうなんですもーん!ただでさえ弱いのにまーたまた強い新人さんが来たらいよいよ私の立場がー!」
「…確かにな、麗も強いし…」
「貴方もでしょうがー!!ウガー!!」
「俺は大した事無い、多分実力もお前と同じくらいだ」
「え、
「腹立つが俺は良い、お前はそれでいいのか」
「…弱者同士、泥水啜りながら傷を舐めあって這いつくばりながら精々生き残る為に頑張りましょうねぇ…」
「嫌な同情の仕方だな!」
「この後どうします?街を案内しましょうか?私、こう見えて街の困り事を山程解決してますので、それなりに顔が広いんですよ、ふふふ…」
「……何で…少しづつそんな暗い感じに…?」
「いや、それしか取り柄無いなー、って言葉にした瞬間実感しちゃって…私の人生って一体…」
「千彩ぁ!!急げ!!飯を食わせて気分を上げろ!!」
バァン!!
「はい只今お待ち致しましたァ!!」
―――数分後
「はふぅん…やっぱり千彩さんの料理は最高でしゅぅ…モグモグ…」
「元気になって良かったね!モグモグ」
「…あぁ、本当にな」
「…はい、安心しました」
「いやぁ、やっぱり気分が落ち込んだ時は美味しいものを食べりゅに限りましゅねぇ…ハムハム…」
「千彩さん!!おかわり!!」
(…さてはそこそこちょろいな…)
(相変わらず切り替えが早いなぁ…)
「……何ですか?お二人共…その目は…」
「イヤー?」
「ナンデモナイヨー」
「??」
「ねぇ!千彩さんってばー!!おーかーわーりー!」
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