オマケ話:何で好きになったかなんて言われたら……(早紀視点)

 とある日の放課後。


 今日は山田……じゃなくて、和樹と一緒に図書室で勉強会を開いていた。でも和樹とこうやって一緒に勉強会をするのも何だか久々な気がするわね。


「……ふぅ、結構長い時間勉強してたし、ちょっとだけ休憩にしない?」

「うん、そうね。それじゃあ外の自販機で飲み物でも買って休憩しましょうか」

「わかった。それじゃあ早速外に出ようか」

「うん」


 という事で私達は図書室から出て、外の自販機で飲み物を買ってから近くのベンチに座って一休みを始めていった。


 そして私達は一緒に飲み物を飲みながら他愛無い話をしてノンビリと過ごしていった。それはとても穏やかで楽しいひと時だった。


(……ふふ、でもこんなにも穏やかな感じで毎日過せるなんて思わなかったな)


 だって私はこうやって誰かとお付き合いするのは生まれて初めての事だったんだ。


 だから和樹とお付き合いを始めた時はもっと緊張しちゃう日々が続くのかなって思ったんだけど……でも以外とそこまで緊張する事もなく、私と和樹はいつも通りな感じでお付き合いをしていく事が出来ていた。


「あ、そういえばさ……」

「うん? そういえばって……どうかしたの?」


 そんな感じで和樹とノンビリ話していると、ふと和樹が私に向かって何かを聞きたそうにしてきた。


「いや、これを聞くのはかなり今更な気がするんだけど……そういえば早紀さんってさ、どんなきっかけで俺の事を好きになってくれたの?」

「え……って、はぁっ!? か、和樹の事を好きになったきっかけなんて……そ、それはその……!」


 和樹にそんな事を聞かれてしまって私の顔は一気に真っ赤になっていってしまった。和樹にそんな事を尋ねられるなんて思ってもいなかったからだ。でも……。


(でも……和樹の事を好きになったかきっかけなんて言われても……それは……)


 私は和樹の事を好きだと完全に意識したのは、私が部活中に怪我をしてしまって和樹にお姫様抱っこをされた時だ。あの時に私は完全に和樹の事が好きなんだと自覚していったんだ。


 でもそれは好きだと自覚したというだけの話であって、多分私はそれよりも前から和樹の事を無意識の内に意識していたような気がする。そしてそれは具体的にいつ頃からなのかって言われても私にはわからない……。


 だって和樹とは今まで他愛無い話をしたり、勉強したり、一緒にボーリングで遊んだりと……色々な事を和樹と一緒にしてきたんだ。


 だから私が和樹の事が好きになったきっかけなんて言われても……そんなの私にはわからないんだ……。


(あれ? でも……そういえば……)


 でもその時、ふと私はとある事を思い出していった。それは和樹と屋上で出会って始めてお弁当をあげた日の事だ。


―― 佐々木さんの作るお弁当……すごく美味しいよ!!


(あぁ、そういえば和樹って……最初の日からそう言ってくれてたんだっけ)


 でも私はその言葉を最初はただのお世辞だと思っていた。私は和樹が本気で褒めてくれてるとは最初は思ってなかったんだ。


 だって私はいつも男子とは冗談とか軽口を叩き合ったりする事が凄く多かった。私がサバサバとしているから男子っぽい軽いノリで話しかけてくる男子が非常に多かったんだ。


 だから和樹のその言葉もいつもの男子的な軽いノリで「凄く美味しいよ(笑)」って言ってるんだろうなって、私はちょっとだけ穿った目で見てしまっていたんだ。


 でもその私の考えは全然違っていた。和樹と少しずつ交流をしていく内にわかったんだけど、和樹ってそういう軽いノリとか軽口とか冗談は全然言わない男の子なんだ。


 だから和樹はいつも……私の作ってきたお弁当を心の底から「美味しい」と褒めてきてくれてたんだ。和樹は冗談や軽口とかを一切言わずに……私のお弁当を見ていつも満面の笑みを浮かべながら全力で褒めてきてくれたんだ。


 だからこそ私はそんな和樹にはもっと美味しいお弁当を作ってあげたいと思って、オカズの構成とか彩りとかもしっかりと考えていくようになったんだ。だってその……和樹が美味しいって満面の笑みを浮かべてそう言ってくれるのが本当に嬉しかったから……。


(あぁ、そっか。つまりそういう事だったんだなぁ……)


 私はそんな昔の事を思い出していって、ようやく自分の本当の気持ちに至る事が出来た。


 和樹は他の軽いノリの男子達とは違って……和樹だけは私の事を最初から最後までずっと一人の女の子として優しく接してきてくれてたんだね。


 うん、だからこそ……そしてそんな優しい心の持ち主だったからこそ、私は和樹に惚れていったんだろうな……。


「どうしたの? 何かぼーっとしちゃってるけど?」

「え? あ、あぁ、いや何でもないわよ。ちょっとだけ昔の事を思い出していただけだから全然気にしないで良いわよ」


 私がぼーっとしてたのを若干心配そうにしながら和樹はそう尋ねてきたので、私は慌てて何でもないと言って誤魔化していった。


「そうなの? まぁ早紀さんがそう言うなら気にしないけど……って、あ、そうだ。それでさ、結局どういうきっかけで俺の事を好きになってくれたの?」

「うーん、そうねぇ……ふふ。それはちょっと秘密かなー?」

「えっ? 秘密なの? うーん、秘密にされちゃうと何だか物凄く気になっちゃうなぁ……」

「あはは、秘密くらい別に良いじゃない。まぁでもちょっと和樹に言いたい言葉が一つだけ出来たから……だからそれだけは和樹に伝えるわね」


 私はそこまで言ってもう一度呼吸を整えて……最後にこう言っていった。


「私も大好きだよ。和樹」


 私は顔をちょっとだけ赤くしながらも……柔和な笑みを浮かべながら和樹にそう言っていった。


【オマケ編 完】

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クラスの女子にお弁当を分けてもらい「旨い!旨すぎる!!」とべた褒めしていたらいつの間にか彼女が出来た話 tama @siratamak

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