第9話 双璧

 鎌倉探偵は、前述の通り、門倉刑事から捜査についてのある程度の情報を得ていた。それは俊六の知らない、いや、敢えて伏せておくべき捜査上の秘密というか、それは警察関係者以外の誰にも話してはいけないこともあれば、俊六だけには知られてはいけないこともあった。

 ただそれは、俊六を警戒させないためであり、ひょっとすると、鎌倉探偵を訪れる気持ちになっていることを知って、わざと伏せられたことだったのかも知れない。そのあたりは当事者である門倉刑事と、鎌倉探偵の棟三寸、お互いの了承のうちであった。

 この日、鎌倉探偵がわざと俊六を挑発するような言い方をし、小説談義に持ち込んだのにももちろん意味があった。俊六の方としても、小説談義に持ち込まれたという意識はあり、小説家としての意地も手伝ってか、ムキになってしまった部分があったのは、しょうがないことなのかも知れない。

 鎌倉探偵とすれば、真相を突き止めるために行ったことであり、それも俊六が捜査依頼にやってくることを見越してのことであった。

 ではなぜそんなに簡単に、門倉刑事や鎌倉探偵が俊六が依頼にくるのを分かっていたのかというと、自分たちが先手を打って、依頼に来るように仕向けたからであった。以前からよく知っている大久保を使い、どちらかというと気が小さい(表向きは)と思われている俊六にプレッシャーをかけ、鎌倉探偵と頼るようにリードしたのだった。

「大久保という人はどういう人なんですか?」

 という門倉刑事の質問に、

「彼はある意味、利口な人です。ただ、その利口さを表に出すことはほとんどない。だからちょっとした知り合いというだけの間柄では、彼はほとんど目立つことはないので、性格的には地味で大人しく見えるんですよ。だからこの事件においても、ほとんど誰も彼に注視していない。もし何かがあった時、最初に疑われるのが彼ではないかと思うとすれば、それは殺された高杉さんではないかと思うんです。高杉さんという人は多分、今回の事件関係者の中でも群を抜いて勘の鋭い人間ではないかと僕は思っています。そしてこの高杉さんという人は、ウソがつけない性格でもあるんです。評論家としては、それがプラスにもなれば、マイナスにもなる、でも、評論家として一人くらいはいないと評論家という業界が成り立たないと言ってもいいくらいの存在なんです。彼は評論家界の必要悪だと言ってもいいのではないだろうか」

 鎌倉探偵は大久保だけのことを聞かれたが、高杉のことも答えてくれた。

 この二人はきっと、

――切っても切り離せない関係にあるんだな――

 ということを、門倉刑事は考えさせられた。

 そして、この二人が評論家界において、双璧をなしているのではないかと思い、高杉氏も大久保氏も、二人ともこの業界にいるべくしている人間なのだということを、改めて思い知ったような気がした。

 そういう意味では、

「この事件には、双璧と呼ばれるような人で成り立っているのではないだろうか」

 と考えさせらるような気がした。

 俊六には佐久間先生がいて、大久保氏には高杉氏がいる。そして、今ではその双璧と呼ばれている相手の片方はすでにこの世にはいない。

 大久保氏は頭の良さにかけては彼を知っている人であっても、その上限まで見たことがある人など、そうはいないと思える。それほどいつも端の方にいて、目立つことをしない。ただ、それはビクビクしているからではなく、自分の居心地のいい場所を把握しているからに他ならない。

 俊六にしてもそうだ。佐久間先生が亡くなって、弁護士から先生の遺作の処分を遺言で頼まれるほど、信頼されている。しかも、今では自分も小説家として十分にやっていっている。

 もし、自分の作品が売れなければ、佐久間先生の残した小説の印税がなければ、きっと鳴かず飛ばずのまま、中途半端な存在として宙ぶらりんだったかも知れない。先生の印税という金銭的補償があることで、成り立っていける小説業界。実はこの彼が自分の作品を世に出すことを奨励してくれたのは、高杉氏であった。最初は高杉氏のいうことなどまともに聞く気はしていなかった。

「詐欺に引っかかるようなやつだからな」

 と思っていたが、実はその詐欺に俊六が関わっていたことを、騙された高杉は知らないと思っていたが、実際には知っていた。

 どうして知ることになったのかというのは、謎であったが、騙された高杉が知っていたというのは、紛れもない事実だった。高杉が今回の事件で死んだことで、

――何とも不運なやつなんだ――

 と、同情を感じ得なかったのも無理もないことだった。

 元々実業家としての才覚もあった高杉氏は、大学で教鞭が取れるほどの真面目な性格、さらに素直な性格だったということで、実業家としての成功は、そんな彼の一面がいい方に進んだからではないかと言われた。だが、逆に詐欺にしてやられるほどの気の弱さを持ていて、木の弱さが表に出てきてしまうとせっかくの素直な性格が却ってあだにもなりやすい。そんな彼を海千山千の詐欺連中が見逃すはずもない。ちょうどその頃に暗躍していた詐欺師にコロッと引っかかったというのも仕方のないことかも知れない。

 その詐欺師も結局捕まったわけではない。数件の小さな詐欺を働いていたが、唯一の大きな事件としてのものがこの高杉に対してのものだった。ちまたのウワサでは、

「元々、大した詐欺師でもないくせに、大きなところに手を出してしまったため、墓穴を掘った」

 というものや、原因は同じであるが、

「他のグループから出る杭を打たれてしまった」

 というウワサもあった。

 どちらも完全な説得力はなかったが、信憑性としてはそれなりにあった。犯人が捕まっていればまだそれなりに救いもあったのだろうが、結局破産損だったというだけである。相当な精神的ショックはあっただろうが、一から大学教授としてやり直せたことは、気が弱いとは言われながらも、その中に不屈な精神力が隠れていたのかも知れないと、彼を知っている人間で、彼を悪く言う人はいないというくらいになっていた。

 だか、今回彼が毒で死んだと聞いた時、ほとんどの人は、

「自殺ではないのか?」

 と思ったというが、それも無理もないことだっただろう。

 考えてみれば、高杉氏がまるで親の仇のように佐久間先生の作品を批判したのも、

「自分の仕事に忠実で、真面目な性格だったことが災いしている」

 と言えるのではないだろうか。

 そうやって考え直してみると、高杉氏という男性の性格がだんだんと見えてくる気がした。

 そう思うと、背筋にゾッとするものを感じた俊六は、それまで感じたことのなかった後ろめたさを急に感じるようになった。

「なんだ、この思いは」

 今まで、俊六は自分に後ろめたさのようなことを感じないことが、自分のいいところだと思っていた。

 後ろめたさというのにもいくつか種類があり、

「やってしまったことで、もうどうにもならないということをいまさら後悔などしても仕方がない」

 という感情である。

 それがひどいことであればあるほど、余計に過去を断ち切って前を見ること、それしかないと思わせた。

 もちろん、反省がなければ成り立たないことだが、この反省は後ろめたさとは別次元の問題として考えていた。

 したがって。俊六は、

「自分のしたことを棚に上げて」

 という言葉に対して、完全にマヒしていたのである。

 彼にはいくつかの

「取り返しのつかないこと」

 があった。

 一つの大きな取り返しのつかないことをしてしまうと、それ以降は感覚がマヒしてしまい、少々のことには何も感じなくなる、そんな性格だった。俊六の性格的なことまでは捜査で分かるわけもないが、何をやったのかということくらいは、日本の警察力では、それほど捜査に困難と要することはなかった。

 ただ、そのすべてがすでに過去になってしまって、立証ができないということであった。何かの犯罪を犯していたとしても、それはすでに時効になっていたり、責任を問うことができるほどの証拠は残っていないのだ。

 門倉刑事の捜査によって、すでに鎌倉探偵に話は伝わっているので、後はいかに彼の良心に訴えるかということだ。

 ただ一つ言えることは、今までの悪行が今回の殺人を引き起こしたということになるのであろうが、彼が犯人というわけではないようだった。

「坂上さん、そろそろあなたはご自分がなさったことを一度振り返って反省する時期がやってきたのではないでしょうか?」

「それはどういうことですか?」

「今度の殺人事件において、私はあなたが犯人だとは思っていませんが、その元々を築いたのはあなたのこれまでの所業だと思っています。一度後ろめたいことをして、それが表に出なかった人というのは、抑えが利かなくなってしまったりしますからね、感覚が鈍ってしまうというべきか、学者によっては、感情が死滅するとまで言っている人もいるくらいです」

 と鎌倉探偵に言われて、それでも微動だにしない様子は、

――本当に気が弱いのか?

 と思わせるが、こういう男こそ、ある程度のところに結界を置いていて、その結界を揺さぶられでもすれば、意外と脆いものではないだろうかと、鎌倉探偵は思っている。

 鎌倉探偵は小説家から探偵になってから、心理学的な勉強もかなりしてきているので、そのあたりの理屈は分かっているつもりだ。そして今までの事件解決において、心理学の証明していた内容が、ことごとく当たっていることを、犯人や事件関係者を見ながら、嫌というほど味わってきていたのだ。

 特に学者であったり、小説家という人種には、ただならぬ雰囲気が隠されているような感じがしていて、いつもながらに人間というものの、エゴや嫉妬、さらに恨みというものに対して大きな憤りを感じさせられるのだった。

 特に今回の事件は、小説のジャンルというか、作風に対しての見えているものと、隠れているものの間で錯綜しているのを感じるだけに、余計にやり切れない気持ちにもなっていた。

 予言小説と言われるもの。幻想文学であったり、耽美主義的な考え方であったり、見えている殺人事件の裏にどんなものが潜んでいるかということを考えただけで、恐ろしく感じるのであった。

「鎌倉さんはどうも最初から僕を試すような口調が多いと思っていましたが、あなたはどこまでご存じなのですか?」

 とさすが実直なだけに、ストレートに聞いた。

 だが、それは気の弱さを反映しているものであり、決して褒められたものではない。

「アロ程度のことは分かっているつもりだよ。でも確証があるわけではないので、あなたに自白を願いたいということですね。ただ、ご心配にはいりません。あなたが行ってきたことのほとんど、この事件に関して核心に近い部分に関しては皆時効が成立していますので、それだけは言っておきますね」

「一体今回の事件で私がどんな時効を必要とするものがあったというのですか?」

 というと、

「一つは詐欺事件です。これに関してはあなたが主犯ではなく、もう一人の人が主犯です。しかしあなたのその頭脳が詐欺として使われたことは事実ですし、あなたが故意に協力したということも分かっています。だから主犯ではないと言えども、許されることではありあせん。子供の苛めで、苛めを見てみぬふりをする人が一番悪いと言われることがありますが、似たようなものだと思います。つまり、被害者にとっては、犯人が主犯であろうが、共犯であろうが関係ないんです。あなたが関与さえしなければ、被害者が出ることもなければ、社会問題になることもなかった。あなたは自分の知らないところで、限りなくたくさんの人を恐怖に陥れたようなものです。これは決して許されることではありません。時効が成立していようがしていまいが関係のないことです」

 鎌倉探偵の言っていることは至極当然のことである。

 言われるべくして言われたことであり、どんなに反省しても十分ではない。そのことを今の俊六が分かっているかどうか、実に疑問だった。

「それにしても、よく高杉氏のような頭の回転が早い人を騙せたと思います。しかも、彼が頭がいいということを分かっていて、敢えて彼をターゲットにしたのですから、あなたは彼に対してはかなりの自信があったのでしょうね。きっと彼とはある意味で波長が合うようなところがあったのでしょう。だからこそ、彼なら大丈夫という自信があったのでしょうが、私は彼がまさか自分を騙して天国から地獄に叩き落した人が近くにいるなど、思ってもいなかったでしょう。さらにあなたが犯したもう一つの罪ですが、これは罪というよりも、詐称に近いものではないでしょうか。それは、佐久間先生との間の作家と弟子としての契約以外に交わされた作品に関しての密約です」

「どういうことでしょう?」

「私が先ほど指摘したように、あなたの作品と佐久間先生の生前の作品では酷似した部分がある。作風やトリック、物語の進め方などは敢えて変えているのでしょうが、専門家が見れば一目瞭然であるような書き方ですね。つまり予言的な小説を書かれていること。これはあなたが、詐欺を行うだけの頭脳を持っていることが起因しているのかも知れませんね。私も詐欺を行う人が実際に小説を書くとどのような作品が出来上がるのかなどということは考えたことがありませんからね。でも、あなたの手法と、先生の生前の作品には明らかな共通点があり、それを高杉氏が酷評している。しかしなぜかあなたの作品に関してはかなり寛容的な評価なんですよね。専門家でしか分からないことなのかも知れないですが、明らかに矛盾がある。そこを私は不思議に感じたんですよ。さらに、先生があなたに遺言を残したというのも、面白いと思いました。先生がどうしてあなたの作品を自分の名前で生前世に送り出していたのかということまでは分かりません。ただ、私などから見ると考えられないことです。小説家というプライドの高い連中ばかりがまわりにいると、プライドという感覚がマヒしてくるのか、それとも決定的に自分の作品い嫌悪があったのか、とにかく、先生はあなたの作品を世に送り出すことにしました。これは別に犯罪ではないです。先生が許可して、あなたが承知したのですからね。でも、出版業界、ひいては文芸社会においては、大いなる裏切り行為で、犯罪に値するものなのでしょう。さすがの先生も最後は自分の作品を世に出したいと思った。自分の死期が近づいているのが分かったからなんでしょうね。そこで、自分の今までの半生を思い起こすと、どれほどとんでもないことをしてきたのかを初めて後悔した。あなたに対して悪いと思っていたのかも知れない。だからこそ、今まで自分の名前で書いてきて、世に出すことのできなかった本当の自分の作品をあなたに委ねたのです。あなたが判断したことであれば、それに従うという気持ちだったのでしょうね。これで先生の作品と、あなたの作品が両輪として文壇に発表された。これが本当のあるべき姿だったわけです。先生はあなたに自分の作品を世に出すことを選択してもらえて、きっと草葉の陰で喜んでいることでしょう。これがあなたにとっての初めての師匠への報いにあたりますからね」

 そこまで言われて、俊六はさぞや震えが起こっているだろうと、読者諸君は感じていることだろう、

 しかし、俊六にはそんな感覚はなかった。自分のしたことを冷静に思い返しているのか、もう何も逆らう気持ちは失せてしまったのだろうか。何も言わなくなっていた。

 鎌倉探偵は続ける。

「先生は耽美主義的な作品、そしてげ寧文学との融合を夢見ていた。そして、君にはその素質があるんじゃないかと思っていたんだ。しかし君はどうしても理論的な発想に走ってしまい、予言小説などと言われて、少し図に乗っていたんじゃないかな? それを戒めたのが高杉氏であり、君は彼の攻撃を、彼が先生の作品を自分の作品だということを看破して、わざと自分に情劇をしているのではないかと思った。きっとそれを主犯にも話したんだろうね。そこで主犯は犯行がバレるのを恐れて、あんなことをした。君であれば、詐欺事件はすでに時効が成立しているのも分かっているし、先生への罪の呵責から、失うものは何もないと思っていただろうから、それほそ気にはならなかっただろう。なるようになれというくらいに思っていたんじゃないか? しかし主犯はそうはいかなかった。自分の将来や、捕まったことのことを恐れて、それで犯行に及んだんだ。もし、佐久間氏の作品を坂上君が書いていたことが分かっているのであれば、高杉を殺す時に、佐久間先生の遺作と似せることで、犯罪を君にかぶせようとでも思ったのかも知れない。佐久間先生の遺作について、あれが本当の佐久間先生の作品であるということを君は主犯に話をしていないだろうからね」

「どうして分かるんですか?」

「それは君がすでに罪の呵責に苛まれていたことが分かるからだよ。そんな君が詐欺での主犯の男に、わざわざ報告をしたりすることはないだろうからね」

「なるほど」

 と言って、俊六はかしこまった。

「スズランの毒を使うというのは、確かに誰にでも手に入れられるという意味では理由としては成り立つかも知れないが、主犯が考えていることとすれば、少しそれだけでは薄い気がする。やはり、先生の作品に似せることで君に罪を着せようという気持ちがあったのも事実だろう。主犯が本当に頭がよかったのかどうか疑わしいところであるが、少なくともあなたよりは、犯罪に対して悪知恵という意味で頭がよかったと言えるのではないだろうか」

「なろほど、恐れ入りますね」

 と俊六はまたしてもかしこまった。

「そんなにかしこまることはありません。あなたは主犯ではないんですから。今回の事件はきっと何かのはずみに高杉氏があの時の詐欺の相手を主犯のその人だと知ったことからなんでしょうね。主犯からしてみれば、少しでも疑われれば自分の身が危なくなることはわかっていましたからね。だからあなたという共犯を作ったんです。主犯からしてみれば、あなたを利用することは一石二鳥だったんです。一つはあなたの頭脳を利用すること、そしてもう一つはあなたを隠れ蓑にして、自分の存在を相手に知らせないようにするためですね」

「じゃあ、犯人は彼に近しい人物だと?」

「その通りです、いつも目の前にいて、その存在はいつも認識されえているが、それを相手に意識させることがないようにすること。まるで保護色のように一つの媒体を介してでしか自分の悪の部分は見えないようにしておくこと、その媒体があなたという存在だったわけです」

「何もかもご存じなわけですね」

「この事件を複雑にしかかったのは、やはり佐久間先生の作品をあなたが代筆していたということでしょう。ゴーストライターと言っていいのかどうか分かりませんが、そんな存在自体が私は罪の権化だと思っています」

 それから少しして、その日のうちではあったが、主犯が逮捕された。

 主犯は大久保氏だったのだ。

 彼は高杉氏の財産と名誉に嫉妬していた。そしてちょうど知り合った俊六を利用しようと思い立った、

 俊六の目論見として甘く見ていたのは、大久保という男が思い込んだら信じられないようなしh殻を発揮するということであった。だが、彼は逮捕されてからというもの、それまでの紳士的な態度はまったく消えてしまっていて、取り調べでもまるで子供のように泣きわめいたり、いきなり笑い出したりしているという。犯罪者としての頭脳はどこに行ってしまったのかと思うほどだが、それこそが彼の正体であり、そんな彼だけらこそ起こした犯罪だったのかも知れない。

「要するにどんなに頭が良くても、最後の詰めが甘ければ、どうにもならないということだよ」

 と鎌倉探偵は言った。

「だがね、君が今までにしてきたことが確かに罪に問われることはない。大久保氏が捕まって、まるで子供のような往生際の悪さは、目を見張るものだろう。だからと言って、君が擁護されることは決してない。それは君も自分の中で分かっているはずだよな」

 と言って、鎌倉探偵は最後の語気を強め、俊六を睨みつけた。

 そして、机の上におもむろに一冊の本を提示したのであるが。その本は、俊六の三作品めの本だった。

「ここに書かれていること、私は最初にこの本を読んでいたから、君が最初から大いにこの事件に絡んでいることが分かっていたんだ。だけど、日本の捜査陣はそんなに甘くない。きっと近いうちにこの秘密に気付いたことだろう。予言小説、なるほど、君がそう言われる理由が分かってきたような気がするよ。でも、それは悪の生み出したものとして、もう書くのはやめておいた方がいいかも知れないな」

 と言って、机の上の本を見た。

 そこには、

「詐称の結末」

 というタイトルの本が置かれていた……。


                   (  完  )

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詐称の結末 森本 晃次 @kakku

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