第16話 後日談
[⇒後日談]
案の定、昨日の慣れない仕事量に体中が悲鳴を上げ今朝はとても大変だった。
朝のマネージャー業もきつかったが階段が多い校舎がこんなにも憎く感じたのはこの日が初めてだった。
直ぐに辞めるなどと言う気はないが早くも心が折れそうだ。
「静音!あんたテニス部入ったんだって!?」
「うん、入ったの。」
新海の友人の立花が聞いていないと声を荒げた。
「うん、じゃないよ。弓道はどうしたの?」
「やめた。」
「はぁ、何言ってるの?あんた今年の国体の優勝候補じゃん!てか来月から国体の合宿だったじゃん。」
「なに?本当に静音弓道やめたの?」
新海の髪を編んでいた甘粕が作業の手を止めて驚いた。
先日友人である2人にはやめるという話をしていたはずだ。
だが新海に悩んでいる様子もなく唐突に告げられ2人は冗談だと完全に思っていた。
「そうなんだよ!あり得なくない?」
国体だよ!国体!!とそれをフイにするなんて信じられないという立花。
だが甘粕は立花とは異なりやっぱりと静かにため息をついた。
「良いんじゃない?静音がきめたことだし、もう辞めちゃったんならうちらが言うことないでしょ。」
「でも、もったいないじゃん」
納得できないと両手を握りしめる立花の肩を甘粕は叩きスマホを開いた。
「こんなこと書かれたら辞めたくなるよ。」
さっきまで辞めたことに文句を言ってた立花が画面をみて甘粕のスマホをひったくった。
オーバーリアクション付きで。
「なにこれ!!ひどすぎる!あんた何で言わないの?!」
「見せたくなかったから…」
「もー、なんで何にも言わないの!!うちら友達でしょ!!」
先程まで国体を蹴って部活を辞めたことに驚いていた立花は画面を見て激怒し、そして新海に抱きついて目を潤ませた。
一喜一憂を顔に出すタイプではない新海だが、代わりに一喜一憂し自分の事のように思ってくれる友達がいて本当に自分は幸せだと新海は思った。
その2人を見て甘粕は軽く笑いまた新海の髪を編み出した。
「でも何でよりによってテニス部なの?」
「確かにあそこは大変だよね…」
「そうなの?」
「うん、テニス部ってかっこいい人が多くてほとんどマネージャーになった人はファンみたいだよ。静音誰かのファンだっけ?」
「うぅん。」
「じゃぁ、あそこだけはやめといたほうがいいよ。特に今年の一年生はイケメンが多くてファンがマネージャーに殺到したけど仕事量が半端なくて結局ほとんど辞めたんだって。今じゃマネージャーも紹介制になったって話だよ?」
「そうだったんだ。でも、もう入っちゃったし…」
いつのまにか弓道部を辞め、いつのまにか新しい部活を選んでいた新海。
2人の友人は驚き呆れ、次からは新海の言葉はどんなに突拍子なくとも冗談として聞くのはやめようと心に誓った。
そして、ファンには気を付けなと新海の身を案じるしか2人には出来なかった。
春夏秋冬きみが好き 【毎週金曜日完結まで更新中】 万珠沙華 @manjyusyage_
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。春夏秋冬きみが好き 【毎週金曜日完結まで更新中】の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます