「どれ…?」
低迷アクション
第1話
「おかーさん、おかーさん、あれっ、あれぇっ!!」
「どーしたの?うーちゃん…病院内は静かにね。えっ?ああーっ」
知人の“N”の体験である。花粉の季節、彼の病院通いは必須となる。そんな待合室での出来事である。
昨今は、車内もカフェでも、何処でも、皆が長方形の箱を熱心に眺め、弄り倒している。老いも若きもだ。
Nも使う事は使う。だが、天邪鬼の性格から、皆が示し合わせたように箱に魅入る中では、敢えて、雑誌や漫画、小説と言った読書を楽しむようにしている。
今日も待機時間をページ捲りで潰していた頃、向かいに座っていた親子の娘が自分の方を指さし、注意しようとした母親も、こちらを見つめ、同じような声を上げた次第…
(何だろう?本の表紙に気になるもんでもあったか?)
彼は生粋のホラーマニア、読む本もそう言ったモノになる。幼稚園くらいの子供がはしゃぐような内容は無いと思うが…
そう考えるNの前で、子供が会話を再開する。
「そっくりだね~おんなじだね~?やっぱり有名なんだね~」
「そうね~」
「えっ?」
思わず顔を上げてしまう自身の前で親子は中に呼ばれ、笑顔のまま、席を立って、行ってしまう。去っていく背中に思わず呟いた。
「どれ?」
彼が呼んでいた本は“晋遊社ムック 水木しげる著「水木しげるの妖怪まちがいさがし」”
その表紙には、複数の“妖”の姿が描かれている…(終)
「どれ…?」 低迷アクション @0516001a
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます