令和の大合併と令和の公務員
時は二○四X年、
令和の大合併によって、このあたりの自治体の合併は進んでいった。
俺が今現在住んでいるのは、その島の東南地域のあたり。右下と呼ぶ人もいる。
その地域でもその大合併の影響をもろに受けた。合併してできた南徳市の人口は最盛期の半分以下に減少し、戦国時代でいうところの滅亡寸前の状況である。
別に兵糧攻めの被害を受けている訳でもないし、(むしろ食べ物は捨てるぐらいあるのだが……)、水攻めを受けて住めない訳でもない。もちろん多くの災害はあったがヨソの地域よりは災害は少なかった。当然、今は強襲されている訳でもない。今は平和な時代を謳歌している。
生物が増えるには、面積と環境と食物の三つがあれば増えるらしい。
面積は環境収容力という言い方もされる。
その生き物が安心して生きていける面積が暮らすには必要だそうだ。
環境というのは清潔であること。
糞尿やゴミが散らかっていると生物は増えないらしい。
最後の食物は言わずもがななので言うのは省略しよう。
なぜ、人間は生物であるのに増えないのだろうか?
食べ物も家もあるし、
昔のフランスのパリみたいに道路に糞尿を撒き散らしている訳でもない。
生物には環境抵抗力というのもある。
生物群の密度が増えると生物を減らそうとする力が働くそうだ。
過疎と過密。
これは全世界における主要な議題になって久しい。
もう農村部で暮らしている人より都市部で暮らしている人が多い。
そうして田舎から動員された人も含めて、都市で最後を迎えるのだ。
昭和の時代は、農村部から集団就職で、トロッコ列車のように労働力として多くの人々が農村部から出荷された。
中学卒業してすぐ就職したらしい。
中卒の人も結局はいい仕事にありつけず、そこまでいい暮らしはしていないものの、かといって田舎に帰るほどプライドは低くない。
都会に居るほうがかっこいいという価値観を植え付けられているからだ。
結局、人間は労働者としてスクラップ・ビルドされている。
農村部から都市部へ労働者を集めて、結婚もせず、都市部で一人寂しく死んでいく。
そういう価値観が全世界的に起こっている様子だ。
俺には何が良いのかまるでわからないが。
田舎で俺は物価が低くて、
人間もあまりいない田舎が好きだ。
都会は俺の描写能力が限界になる。
だいたい動いているものが都市部は多すぎて生きるのが辛い。
都市部に行ったとき思った。あぁ、ここでは住めないなと。
話は戻して、農村部は労働者も居ないので、消費者も居なくなった。
残ったのは爺と婆と都会に行かなくても済む資産家だけ。
農村部の低所得者層は仕事が無いから、
都市部で出て低所得労働を行い、
物価も高いので、
田舎よりも苦しんでいるが
本人たちは都市部に住むのが良いことだと、
都会教という宗教のようなものを信仰しているので言っても無駄である。
さらに、低所得者層ほど情報を知らない。
農村部に移住すれば、
申請すれば五百万円以上貰える自治体も存在しているのになぁ。
もちろん低所得者層は知らない。
こうした農村部の労働者年齢層の減少、
さらには地方財政の無駄遣いがかさみ、
令和の大合併が起こった。
日本の自治体は統廃合されていった。
平成の大合併後は千七百前後あった自治体は三百程度まで削減された。
今までは財政黒字で、
合併の必要のない自治体も数多くあったが、
それらも合併した。
合併したほうが、より財政が合理化できて、
ますます黒字化できるからである。
公務員になる人材が不足しているのもある。
少子化に歯止めがかからず、
公務員になりたい人までいないのだ。
公務員は所詮、喋ってパソコンいじるだけの仕事。
魅力を何も感じない人も多いのも俺が公務員だかわかる。
上から言われたことと、客の言うことをある程度いい感じに丸く収めればいいだけで、何の面白みもない仕事。だが安定して収入は入る。
何か人口増加政策をするにしても、楽観的な将来予測図に、楽観的な計画を作り、市民のことなどお構いなしの計画を市民の声なんて聞かずただただ言われたまま仕事していればいい。
大学の講義でも人材には人財・人材・人在・人罪の四つがあると、おじいさん教授が言っていた。大半の人は居るだけで意味がない人在。
地域振興の動画やPVも言われたまますればいい。観光客が増えようと、増えまいと俺らの給料は何も変わらない。適当に作って、適当に流せば良い。責任を取るのはどうせ市長だ。俺たち公務員はクビになることは懲戒を受けない限りない。適当に仕事をやっておけば良いのだ。
市民の生活が良くなろうが、悪くなろうが関係ない。俺たちは言われたことを言われたまますればいいのだ。適当に前例踏襲主義で何も変わらない日々を過ごしていけば良い。
ロボット契約する代わりに、収入が保証されるのが公務員だ。上から言われたことと市民が言ってくることに答えればいい。自分から仕事を取りに行く必要もないし。困っている市民がいてもむこうが言ってくるまでほっておけばいい。それは俺たちの仕事ではないからだ。
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