第6話

恐縮する彼を半ば強引に家に連れて帰る。

母親の立場的に大きな邸宅をあてがわれているが、あまりに広い家がしっくり来ないと、

別でそれなりのマンションの一室を借りている。

ドアを開けると、エプロンをした父親が出迎えてくれた。

「あらあら、友達を連れてきたのか?

言っといてくれれば、おもてなし用意したのに」

と言いながら、テーブルの上にぱっぱと、

ジュースとお菓子を並べ始める。

「特に食べれないものないかい?」

整えられていくテーブルと、エプロンをしてる父親ははたから見たらミスマッチなのだろう。

連れてきた友人は目を白黒させている。

「母さんは?」

「あ、今、これ並べたら呼ぶよ」

父親はにこりと微笑みかける。年齢の割には爽やかな印象は前世のことを抜きにしてもかなりモテる部類の人である。

母親のカリスマ性の影に隠れてはいるが、

あのわがまま思いつきの人間を制御し、導いているのはこの父親なのである。

お菓子の匂いに吸い寄せられるように

トレーナーにジャージというかなりラフな出で立ちで母親はリビングに入ってきた。

「なんだ、友達呼んだのか?」

お菓子を手にとりながら、こちらに質問してくる。

「前世関連で記憶の混濁がある場合、どうすればいいか教えてほしいんだ」

こちらは用件のみ伝える。友人はびっくりしている。

「普通そういうのは各ご家庭で話し合うやつなんじゃないの?」

口に含んだお菓子をかみながら、こちらをにらんでくる。すごく行儀が悪い。

友人は萎縮している。国家のトップがこちらをにらんでいるのだ、当然だろう。

「彼の母上は、彼に相当な期待をしている。彼自身もたくさん努力しているが、特になんの変化もなく、

息苦しい思いをしている。友人として何かしてあげたくてうちに連れてきたんだ。相談に乗ってもらいたい」

先ほどの行儀の悪さとは売ってかわって、ニコニコしている。

「そうか!母さんを頼ってくれたのか!それはきちんと対応してやらないと」

国のトップでありながら、カリスマ性があるとはいえ、うちの母親はかなり息子に甘いのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ふつうって 波流 @satomango

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る