第一章 第六話 スキルと魔元素と就職と
魔元素 この世におけるすべての物質を構成するもの
スキル 人間の技術的性質の進化系
奥の部屋から戻ってきて、急に紙に書き始めたと思ったらこんなことが書いてあった。
「ってことがこの本に載ってるんだけど、これじゃ正直説明不足なのよね」
「はい。私も最初聞いた時、よくわかりませんでした」
ひとまず初めて聞いて理解でき何のは僕だけじゃなかった。というかエルさんも説明できないって言っていたのが何かわかった気がするなぁ。
「そうね……まず魔元素から説明するとしようかしら。じゃあ問題。これは何かしら」
そう言ってマラハットさんが出してきたのは、銀色の四角い何か……鉄のようなものだった。いた、普通に見た目からして鉄なんだけど……
「鉄……ですかね」
「そう正解。で魔元素っていうのはこんな感じ」
マラハットさんが天井に向けた手から何か光が出始めた。光の粒のようなもの……これが魔元素?でもさっきの鉄の塊と何の関係があるんだ?
「んで、この魔元素ってのをこう……手の中心で固めるイメージね。そうすると」
さっきまで天井に向かっていた光の粒子のようなものが、一気にマラハットさんの手に集まりだし、徐々に塊のようなものが作られ始めた。それは少しずつ、本当に少しずつ形を作り始め……最初に見せてもらった四角い鉄の塊に変化していた。
「ってかんじね。今何が起きたかわかったかしら?」
「えっと……マラハットさんから出てた魔元素が凝縮されて、それが最初に見せてくださった鉄の塊に変化した」
「そう!今の説明で大体あってるわ。まあ、変化ってよりもともとこんな感じで小さい粒だったんだけど。さて、そんな飲み込みの良さを見込んで一つ質問。ずばり魔元素って何!?」
えーそんなこと言われたって……さっき言ってなかったっけ。確かすべての物質を構成する、ってのが魔元素。んーでも、それだったら鉄とかじゃなくてもよかったよね。例えばもっと身近な水とか……それをわざわざ鉄でやって見せたってことは……
「魔元素は、鉄を構成する魔元素、あるいは水を構成するものもある。性質が違う魔元素も存在する……つまるところたくさんの種類がある?」
「そ……んな感じね。この世におけるすべてのものが【魔元素】っていう存在でできている。それは言い換えるとたくさん魔元素には種類があるってこと……なんだけど、大体わかった?」
「うーん、正直まだ納得したというか、完全に理解できたわけではないですが」
「ぶっちゃけて言うと、しっかりとした説明で理解するよりか、実戦で何度も使ってるうちにどんなものかわかってくるのよね……だからエルちゃんもここに来たって感じでしょう?」
「はい、私も完璧に説明できるわけでもなければマラハットさんみたいに説明がうまくできるわけでもないですから……」
なるほど……っていうほど納得したわけではないけど。結構難しいことを聞いていたのはわかった。うんわかったけど、結構あいまいな感じなんだなー魔元素っていうのは。一応後でまとめておかないと。あと、エルさん別にこの人そこまで説明うまいわけじゃないと思いますよ。
「あの、それじゃあスキルっていったい何なんですか?技術的、性質の進化系っていうのは……」
「そうねえ……こっちは比較的わかりやすいと思うんでけど……じゃあフードちゃん【操作】って聞いてイメージするのはなにかしら?」
「操作……ものとかを動かす、ですかね」
「そう、動かす。フードちゃん、実はもうすでにスキルを使って見せたのよ」
「え……もう使った?僕がですか?」
「いや、あたしが使って見せたのよ」
どうしよう、そんなの見せられた覚えない……というかスキルって、なんか見える感じなの?なんか技術のとか性質の進化系って言ってたから目に見えるものじゃ……うん?もう使って見せた?
「もしかして、魔元素を手に集める……これがスキル?」
「正解。魔元素を操作した。こういった……そうね、正直これも感覚的なものだけど、言葉で説明するとしたら【人間の動作の進化】ってことかしらね。まあこの二つとも初めに説明したのとおんなじ感じでくそほど……すんごいわかりにくいけど」
うーん、正直まだわからない。大体どんなものか……すらもわかんない。結局なんなんだろう。魔元素が……構成する?んでそれを動かすのがスキル?うーん?
「えっと、フードさん。大丈夫でしょうか?なんかさっきよりも険しい顔をしてますが……」
「あ、はい。大丈夫です。はい」
正直全然よくないけど、わかんないけどマラハットさんの言うように実戦でつかむしか……あれ、実戦?
「さて、じゃあちょっとあたしの本題に入るとしようかしらね」
「あ、あの。その前にもう一つ聞きたいことがあるんですが、実戦って何のことでしょうか」
「何って、うちの任務……依頼を受けるってことよ。ちなみにそれが本題」
「え……」
さっきから実践がどうのこうのって言ってたけどこういうことだったのかぁ。ここに来るのもう嫌なんだけどなぁ……何よりすごい怖いし。
「あからさまな顔するわねあなた。めちゃくちゃ嫌だって顔してるわね」
「あ、いえそんなことは」
「平気よ、今日みたいな健康診断は毎日するわけでもないし、それにちゃんと働いたらその分お給料も出すわ。それに依頼だって自分で選べるわよ」
「そ、それはありがたいんですけど……なんで僕がその、ギルドに?自分で言うのもあれですけど特に役に立たないと思うんですけど」
「そうね、スキルとか、魔元素も知らない人を雇うほどうちもお人よしではないわ。でもね、あたしの長い長ーーーーい勘が言っているのよ……あなた、とんでもないくらい強くなるわ」
「いやいやいや、そんなことないですって」
「いや!断言するわ!あなたはきっとうちの稼ぎ頭、間違えた。うちのギルド最強になるわ!」
「今さらっと変なこと言いませんでした?!」
「いいからこの契約書にサインをしなさい!いますぐ!ライト!ナウ!」
急に態度変わったなこの人、なんかさっきよりも目が生き生きしてるし……でもほかにお金稼ぐあてもないし、エルさんの知り合いだし……多分エルさんもここで働いてるだろうしここでいいかな。それに依頼も自分で選べるみたいだし……
「はい、できました!」
「え、ちょエルさん、何してるんですか?」
「フードさんの代わりにサインしておきました」
「いや……勝手にサインされても困るんですが」
「でも、フードさんやる気でしたし……顔に出てましたし」
「それにこれ本人のサインじゃなくてもいいからね、エルちゃんもうちにこんな感じで入ったわけだし……」
もしかしたら僕はやばいところで働くことになったのかもしれない。そして、なんかエルさんの顔、笑ってはいたけどどことなく怖かった気が……うん考えないようにしよ。知らないほうが幸せってこともあるだろうし。でも明日から仕事……大丈夫かなぁ。
「あ、そうだ。フードちゃんまだ武器とかいろいろ揃ってないし、近くの武器屋で見繕っておいで。あたしは書類の手続きとかで忙しくなるから、ほらでってたでってった」
「え?!いやあの、まだ状況が飲み込めてないんですけど……」
「さあ、行きますよフードさん。大丈夫です何!があっても私が守りますから!」
「そ、そういうもんだいではなくて……」
『バタン』
静かになった部屋にマラハットが一枚の紙を見ながら、少し暗い顔をしながらたたずんでいた。
「まさか……あの子が頼んだ依頼がこんなことになるとは……一応、何かあった時の責任はあたしが取れるようになったからエルちゃんに任せられるけど、一応これは王宮あてに出しておくとするかね」
ライフペーパー。対象となる人物の体の一部を吸収させることで様々な情報が手に入り、リアルタイムで変化する不思議な紙。本人ですら知らない、ありとあらゆる情報がそこに記される。
【刻印 創造者】
「それにしたって、なんでエルちゃんはあの子をあんなに守ろうと……いやあれはもはや惚れ薬でも飲んだのかね。それくらいフードちゃんに対する執着が強いね……まぁなにかあったら、あたしが解決できるから良しとするかね」
そう言いながらマラハットはその紙を封に入れた。ちなみに、この刻印が何なのかこの人は身をもって知っているのだが、それはまた別のお話。
忘却者「フード」の魔元素世界生活 @kikyuuninngenn
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