第一章 第五話 ライフペーパーと怖いギルド
そんなこんなで、僕はエルさんと一緒にギルドに来ていた。昨日読んだ本にはギルドについての記載があったため来る前からどんなところなのかはわかっていた……のだが、
「あ、あのフードさん?なんで私の後ろに隠れているんですか……」
「べ、別にいいじゃないですか……その、なんか怖くて」
実際に来てみるとかなり怖かった。街中で打っていた剣とか、鎧をかぶっている人がいたり……空気、雰囲気はすごい明るいし、殺気立ってはいないけど怖い怖い怖い!あんなのに当たったら首切れそうだし、てかなんであんなに頑丈そうな服?を着る必要があるの。
「と、というかなんでギルドに来たんでしたっけ」
「フードさんがまだわかってない、理解しきれていない【魔元素】と【スキル】について説明をしてもらうのと、あとはフードさんの健康状態チェックを済ませるため」
「いや!いいです!もう僕健康だし!知らないことはエルさんに教えてもらえばいいですから!」
「ですから、私はそこまでちゃんとした説明できませんし。何よりちゃんと治ったかどうか、それに記憶喪失の原因がもしかしたらわかるかもしれない。だからこのギルドに来たんですって」
「そ、それはそうですが……」
「ほら、ギルドマスターと役員の方々も待たせていますし行きますよー」
「い、いやあああああああああああああ!」
そんな断末魔はむなしく、なんか見るからに怪しい部屋に連れていかれた……ちゃんと生きて帰ってこれますように。
[数十分後]
ボーーーーーーーー
「だ、大丈夫ですか?」
「ち、血を抜かれた。すごい目がちかちかするし、頭殴られた……」
「確かに血は抜かれますけど……誰も頭を打ってませんし、目がちかちかするのは一時的な症状です」
「そ、そうなんですか……」
昨日買い物に来ていた街のギルドに来てもう何時間たっただろうか。僕は一刻も早くこの場所から逃げ出したかった。もう疲れたし、何よりここに来てから怖かったり痛い思いしかしてない……ま、まさかエルさんは僕を痛めつけるためにここまで優しくしてくれたんじゃ……
い、今までやけに優しかったのは単純に、いうことを聞かせるため……なわけない。そんなわけない。駄目だ、優しくしてくれた人に疑いの目を向けるなんて……
「えっと……エルさん、フードさん。検査の結果が出たのでこちらにいらしてください」
「あ、はい。わかりました。フードさん、これが終わったらすぐ帰れますから、ね?行きましょう?」
「終わり次第すぐ帰る!」
(はい、行きます)
あまりにも混乱していたのか、心の声と実際に出たことが真逆になっていた。いやそんなことはさておき、さっさと帰る。
【ギルドにあるどっかの部屋】
かなり緊張しながら入った部屋には体が大きいおじいさん?のような人が座っていた。目は優しそうで、机の近くにはその人が使っていそうな木の棒が置いてあった。
「あら、エルちゃんいらっしゃい。それと……あなたがフードちゃんね。初めましてね」
「は、はい。初めまして」
「お久しぶりです、マラハットさん」
「医療班からいろいろ聞いたわ……めちゃめちゃビビってたそうじゃないあなた」
そういって、杖で僕のほうをさすおば……さん?それともおじさん?口調でよくわからないけど、この人もエルさんみたいでなんだか優しそうな人だなぁ。
「まったく……いい年したイイ男がいつまでもビビってんじゃないわよ。これでビビってるようじゃゴブリンにすら勝てないわよ」
訂正、そうでもないような気がしてきた。
「大丈夫です、私がしっかりと守りますから!」
「そういう問題じゃないのよ……ま、一回その話は置いといてあたしが誰か言っておこうかしらね。
あたしは【マラハット・ヴィーダー】このギルドのマスター兼管理者をしているわ」
「えっと、僕は……【フード】といいます。よろしくお願いします、マラハットさん」
「ええ、よろしく。さて、長話はここまでにしておこうかしらね。というわけで、はいこれ。あんたの【ライフペーパー】よ。一応エルちゃんにも渡しておくわ」
「ありがとうございます、マラハットさん」
そう言って渡されたのは一枚の紙だった。たしか、本に書いてあった……けどなんだっけこれ。
「そいつはね、フードちゃん。あなたの精神状態、肉体年齢、スキル、魔元素……いわば、あんたのステータス、能力を表した紙よ」
「ご説明ありがとうございます」
「いいのよ、それより早く見なさい。わかんないとこがあったら言いなさいね」
ライフペーパー 以下の者は【ギルドマスター マラハット・ヴィーダー】の名において、ギルドメンバーとしての身を保証する
氏名 フード
性別 男
種族 不明※1
身体年齢 20
魔元素適正 風
スキル 忘却者※2
紋章 なし
※1 現段階では解析不能、新種または誤作動の可能性あり
※2 どこの文献にも記述にないスキル。新種の可能性あり
ギルドランク G
「……」
「全部見終わったようね。じゃあ何か質問とかはあるかしら」
「えっと……じゃあ、そのフードさん、何かありますか?」
全部。と言いたいところだった。むしろ何を質問したらいいんだろう……とりあえず前々から気になってた、っていうかこれを聞くために来たんだしこれについて聞いておかないと。
「えっと、ここに書いてある【スキル】と【魔元素】って何ですか?」
「……あらやだ、そこからなのね」
そう言ってマラハットさんは奥の部屋に行っってしまった。な、なんか変なこと言っちゃったかな?
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