第一章 第四話 お話とおはなし
『むかし とても優しいオオサマがいました
彼の住んでいた森は とても美しい木々であふれ 彼に会う人のだれもがが笑っていました
彼は みんな、誰もが仲良くなれる街を作りました
みんなみんな幸せでした でもそれをよく思わないのもいました
彼らは協力してオオサマをころしました
大切なものもすべて奪いました 奪った人たちはとても幸せになりました
でもオオサマはそれでも優しくて 彼らを許そうとしました
でも恐ろしい悪魔ににこころを奪われてしまいました オオサマはオオサマではなくなりました
オオサマは全部なくしてしまいました なんにもなくなってしまいました
オオサマはいなくなってしまいました オオサマはいなくなってしまいました
でもオオサマはたくさん残していました みんな残ったものを大切にしました
みんなみんな幸せになりました いなくなったオオサマもシアワセになりました』
「……なにこれ」
思わず手を止めた。すごい読みにくいし……何より内容がなんかすごい暗い感じだ。一応挿絵もついてはいるけど……なんだかすごいぐちゃぐちゃで、どれがオオサマなのかもわからない。それくらいに怖くて、心が痛む。何より……
「すごい、なんだろう。本当に……腹が立つ」
目が覚めたから感じたことがないくらいに、腹が立つ。ただただ、頭にくる……本当に頭が痛くなってくる。それくらいに……ってあれ、なんか本当に頭が痛い。全然治る気配がない……よし、一回落ち着こう。落ち着こう。落ち着いてからまた読めばいいんだ。
「ふー……っとよし。落ち着いた。はいいけど」
正直な話、この本は読みたくない。本当に嫌な気持ちになるし、頭がずきずきしてくる。うん、とりあえずこいつは飛ばして次の本を読み進めたほうがよさそうだな……
【数十分後】
「うーん、よし。これで汁物は完成!パンも焼けたし、そろそろフードさんを呼びにいかないと……」
(そういえば料理に集中してたからかわからないけど、さっきから全然物音がしないなぁ……寝ちゃったとかですかね。私もあれだけの本を読むとなると、眠くもなりますね)
【こんこん】
「フードさん、お食事ができましたー」
「…………」
「フードさん?」
「…………」
「あ、あけますよー?」
【ガチャ】
「フードさ……ってフードさん!?大丈夫ですか!?」
「あ、あーエルさん。ちょっと集中しすぎて気持ち悪くなっちゃって……あ、ご飯できました?」
「は、はい。できたので呼びに来たのですが……それより平気なんですか?ちゃんとご飯食べれそうですか?」
「はい、平気です……」
そう言いながら僕はエルさんに支えられながら下の階に降りた。
「……え、それ本当ですか」
「はい、何とか全部読み終わりました。それでもちょっとわからなかったところはありますけど……」
「確か、十冊くらいあったと思うんですが……。そこそこ分厚いものもいくつか……」
「はい、でも問題なく読めました」
エルさんが作ってくれたごはんを食べながら、先ほどまで読んでいた本がどれくらい終わったかをエルさんに伝えていた。というか読みすぎて気絶しかけていたようだ。何でもあと少しで白目をむきそうになっていたとか……僕って結構体弱いのかもしれないな。
「えっと、ちなみになんですけど何か思い出したこととかありませんでした?」
「いや、とくには……というよりも何にも思い出せませんでした。書いている内容のほとんどが初めて聞く……というか見る?内容だったので」
「そうでしたか……お役に立てず申し訳ありません」
「いやいやいや、そんな。ここがどんなところかはなんとなくはわかったので」
実際、本に書いてある内容は初めて見るものが多かった。記憶喪失の僕にとっては貴重な情報源だったからお礼を言いたいくらいだし……というか。
「あ、あと料理。すごくおいしいです。このふわふわしたのもおいしいですしお野菜のまとまりも……」
「お口にあって何よりです……ちなみにふわふわしたのはパン、お野菜のほうはサラダです」
「そ、そうなんですか」
やっぱり、知らないことのほうが多いな。てかパンっていうんだこれ。あったかくて、なんか赤いのがかかってるお肉にも合うし、すごいなこれ。こんな食べ物もあるんだ……。
「あの、フードさん。一つ提案なのですが」
「は、はい。なんでしょうか」
「明日、ギルドに行ってみませんか?」
「……ぎるど?」
そんなこんなで、なぜか僕は明日ギルドというところに向かうこととなった。ていうか、本当に急だけどどうしてかな……明日行く前に聞いてみよう。
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