第56話 決戦! デバライバ3
樹木が至るところから伸びてきて俺の身体を貫こうとする。
敵の数は見えているだけでも500はいるように見える。
次々に繰り出される樹木を魔剣を射出して迎撃しては敵を魔剣で串刺しにしてを繰り返しているが一向に減らない。寧ろ増えているような気がする。
ただ救いなのは手数が増えただけということ。
手数が増えて四方八方から攻撃されても俺は霊との視覚共有により死角は存在しない。どちらかというと攻撃を1点に集中して高火力の攻撃が飛んでくる方がまずかったかもしれない。
デバライバの攻撃手段が樹木を突き刺すだけでほかの攻撃はして来ないし、瞬間火力も直径50mほどの巨木を突き落とすぐらいだ。
魔力を分散して攻撃してくれるおかげでなんとか戦えている。
もしかしたら攻撃方法がそれしかないのか?
そもそもこいつはなんの神なのか。昔はたくさんの神が生きていたというが、戦いの神だったり水の神だったり死の神だったり。
でも戦い方を見るに戦いの神などではない。戦いの神ならもっと攻撃手段があるはずだ。
予想ではあるが豊穣の神とかそういう戦闘向きの神ではないのか。
まあほかに争う神がいなくなったこの神は戦うことがあっても戦う相手は人間。人間を粛清するにはこの程度の攻撃で充分だったのだろう。磨きが掛かっていない技だ。戦士の戦いではなく力の押し付けだ。
しかしキリがない。
どれだけ倒しても湧いてきて攻撃が止まらない。
こいつらをどれだけ倒せば終わるのだ。
このままでは俺の魔力が尽きるかもしれない。
「「「「「無駄だと分らぬか。お前がどれ程我を倒そうとこの世界樹がある限り、世界樹に貯めた魔力で我が生まれる。このヴェルトバウムの端まで根を張り巡らせた世界樹を一片も残らずに破壊しなければ、我は、世界樹は、小さな木の欠片1つで復活する! お前がどう足掻こうとお前に何も出来はしない! お前はただ我の農場を荒らすだけだ!」」」」」
木の欠片1つで復活するだと!? そんなことありえるのか!?
いや、はったりではないのかもしれない。そういう芸当ができる生命力のある神ならば可能かもしれない。
ならどうする。
ヴェルトバウム中に根を張った世界樹を木端微塵にする方法。そんなことできるはずない。
仮に方法があったとしても地下にある根をピンポイントに攻撃することなんて無理だろう。あるとしてもヴェルトバウムの人々と攻め入っている連合軍を巻き込む災害ともいうべきレベルの破壊。
「「「「「考えても無駄だぞ!」」」」」
突然、デバライバの1人が接近して宙で待機していた魔剣を手に取った。それと同時にポルターガイストで操っていた魔剣の感覚が消える。
無理矢理魔力を流し込んで操作権限を奪われた!? そんな力技で!
魔剣を手にしたデバライバが接近、大振りに魔剣を斬りつけてきた。
剣を使い慣れてない動きだ。余裕をもってかわし、魔剣を射出させて撃退する。
ただその攻撃方法がデバライバは有効だと認識したようで、樹木の攻撃だけでなく魔剣の操作権限を乗っ取ろうとし始めた。
魔剣の射出にはそれなりの溜めの時間がいるし、射出して着弾したあとは魔剣はすぐに動かせない。
タイミングを計れば魔剣を奪うことも難しくない。
くっ! 操作できる魔剣が減っていってる!
敵の数が多くても対応できてたのは死角がないことと大量の魔剣で迎撃できてたからだ。
手数が少なくなれば戦況は苦しくなる。
また魔剣を持ったデバライバが接近してきた。
迎撃できる射出の準備が終わった魔剣が手元にない。
俺は杖を地面に突き立て、魔力で剣を10本作った。
そのうち5本をすぐさま射出。
射出した5本のうち2本は魔剣の振り払いで弾いたデバライバだが残り3本が身体に突き刺さる。
動きが鈍りながらも奴は動けるようでこちらに向かってくる。俺は残り5本の中の2本を射出してデバライバの頭部を貫く。
そうこうしているうちに魔剣を持ったもう1人のデバライバがすぐ近くまで接近していた。
俺は残った3本の剣を射出するがかわされてしまう。
デバライバの振るう魔剣を強化魔法を掛けた杖で受け止める。だが魔剣の威力に力負けして吹き飛ぶ。
どうにかポルターガイストで自身の態勢を起こし、追撃に備える。
剣が足りない。
こいつらを一掃するような力が足りない。
ふと視界の端にこちらを見る霊の姿があった。
それは人間の霊ではなく神の霊。
デバライバの主神であり、強敵と戦いに敗れて、それでもあきらめきれなくて自身の肉体を剣に変えた者。
主神クオン。いや、今は神剣クオンと呼ぶべきか。
俺はその神剣に手を伸ばした。
「「「「「馬鹿な。そいつは誰よりも力を欲し、死しても剣となって力を吸い続ける神剣。触れれば体内の魔力を全部吸い取られるぞ」」」」」
そんなこといわれようと俺はその剣を握った。
こいつが、そうしてくれといってるようだったからだ。
握ると体内にある魔力がごっそり持っていかれるのを感じた。魔力だけでなく生命力やらなにかいろんなものが奪われていくのを感じる。
「「「「「まあそれでくたばってくれればそれで良い」」」」」
俺は自分の魔力がすべて持っていかれないように周囲にいる霊を取り込み魔力に変換する。
魔力を補充しては吸われ、補充しては吸われを繰り返す。
そして、その剣身は俺の魔力と同じ色の紫色に輝き始めた。
「「「「「何!?」」」」」
異変を察知したデバライバたちが一斉に樹木を伸ばして攻撃するが俺の近くで攻撃が弾かれる。まるで見えない壁でもあるかのような感じだ。
「「「「「バリアだと!? その力は神しか使えない魔法。人間の知らない魔法技術のはず! まさか」」」」」
この神剣は俺を守ろうとしている?
なら……。
俺はこの神剣を信じようと思った。お前が欲するものを俺はくれてやる。
魔力を込めれば込めるほど剣身に宿る魔力が増幅しているのを実感する。
凄まじい魔力だ。これならなんだって壊せる気がする。
「「「「「なぜだ! 我は父のやり方を継承して今までやってきた! なぜそんな人間に手を貸す!!」」」」」
「フフ、フフフ、フーハハハハハハハ!! デバライバ、お前は霊の声が聞こえないんだな。それは残念だな」
「「「「「急に何だ? 霊の声だと?」」」」」
「ああ。俺は聞こえるんだよ。この世界樹を、この国を、滅ぼしてくれと願う者の声が。お前は自分が起こした戦争で死んだ者たちの憎悪で死ぬんだ」
「「「「「……!」」」」」
上に向けた剣先から光が放たれ天を衝く。天井に風穴が空き、空が見えた。
その風穴を通り抜けて上空に出る。
雲の上の凍てつく空気を吸いながら、斬るべき対象を見下ろす。
この国で、この国の周りで、戦いで死にゆく魂をこの神剣に集めていく。
そして、神剣は完全に光で満ちた。
この国全体を覆うドーム状の魔力の膜みたいなものが薄っすら見える。あれがバリアなのか。
この神剣も準備はいいみたいだ。
あとは俺の決意だけ。
この神剣を振るえばどれほどの破壊が起きるか想像がつかない。
戸惑うな。この戦いで迷いは捨てたんだ!
「霊障せよ、ヴェルトバウム!!」
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