第55話 決戦! デバライバ2

 至るところの骨が砕けているのを感じる。

 内臓は潰れて、筋肉も断裂している。


 咄嗟に掛けた身体強化の魔法も意味をなさない圧倒的な力と破壊。


 それでも俺は息があった。

 風前の灯火で俺の魂は消えかけているが。


 これが、俺の魂……。



 ――エント01! 応答してください! エント01!



 ソフィーの声がする。

 ああ、こたえないと……。



 ――エント02! エント03! エント04! エント05! 応答してください! 皆!



 俺はポルターガイストで俺の上に乗っている瓦礫を退かした。

 そして自身にポルターガイストを掛けてボロボロの身体を無理矢理立たせる。


 不思議だ。自分の身体にポルターガイストは掛かりにくいのにすんなり掛かる。活性化して乱れる魔力が思い通りに動く。


 そういえばみなは。


 周りは瓦礫だらけで声は1つもしなかった。そして俺は死んだ者の霊が見える。故にすぐ状況を理解した。



 ――こちらエント01、状況を報告したいと思います、オーバー。


 ――エント01、状況報告をお願いします! オーバー。


 ――俺は生きています。ですが他はもう亡くなりました、オーバー。


 ――そんな……!!



 勝手に身体が修復されていくのに気がついた。俺は回復魔法が得意ではないのにみるみるうちに砕けた骨がくっつき、筋肉が繋がる。細胞の1つ1つが再生し、内臓が元に戻りつつある。


 俺は死霊魔法の核心に至ったのか。魂とはなにかを……。


 肉体が先か、魂が先かはよく問われることであるが、いやまさか。


 周囲の霊を魔力に変換し取り込む。その変換して得られる魔力とその質が明らかに違う。


 俺の魂というものを知ったから、肉体がこうも簡単に再生できるのか。



 ――撤退してください! このままではあなたも危険です! 作戦は中止です!


 ――それはダメだ。俺は救わねばならない。この世界を正常にしなければならない。


 ――クルゥ、何を言っているのですか!? 早くそこから!


 ――悪い。俺はこの世界の役割を知った。俺は行かないと。



 近くで宙を飛ぶ蝶に刃を入れた。

 なにかをいおうとしたソフィーの声が途絶える。



 悪いソフィー、俺はこいつらの無念を晴らさないと。



 俺を浮かせるポルターガイストの出力を上げた。

 最上階までは樹木で天井が壊れたため目指すべき場所は目視で確認できる。


 一気に加速し空気を突き破る。俺は一呼吸のうちにデバライバのいる階層へ舞い戻った。



「よう、神様。すげー痛かったぞ」



 俺は1本の魔剣を射出した。


 俺を再び見た奴の顔は面白かった。なぜ生きているとでもいいたげな顔のアホ面だ。


 デバライバは花を咲かせて花弁で再び防ごうとするがたった1本の魔剣で花が砕け散る。そのまま魔剣はデバライバの頬を掠めた。



「貴様、なんだその」



 一瞬で後ろに回り込む。瞬間移動にしか見えない神速で移動した俺にデバライバは気づくも俺の振るう魔剣は確実にデバライバを捉える。逃げられはしない。


 だが振り払った魔剣はデバライバの持っていた杖に阻まれた。


 杖ごと奴を斬ろうと思ったが神の魔力で強化されたそれは歪むこともなく魔剣をしっかり受け止めた。


 魔剣によって傷は負わせることはできなかったがデバライバは吹き飛び地に叩きつけられて転がる。



「その力、その魔力の色、貴様……死の神か何かか? いや、神はもう我以外いない。そんなのあり得ない。まさか、生まれ変わりなのか?」



 どうやらデバライバは混乱しているらしい。



「そんなものだと思ったことは1度もねぇぞ。ただ、それに近いものに足を踏み入れたのかもしれないな」



 俺は30本ほどデバライバの周囲に魔剣を配置し射出態勢に入った。


 掃射。


 逃げることも防ぐこともできない魔剣の雨を食らい、デバライバは大量の魔剣で串刺しになる。

 これで、



「そうか、人の身でそこまで至ったか」



 これで殺したはずと思った束の間、天井からデバライバの声が聞こえた。



「なっ、一体どういうことだ」



 天井を見上げると樹木からデバライバが生えてきていた・・・・・・・

 それも何十、何百体と植物でも生えるかのように身体が出来上がっていく。


 天井だけでなく地面から、壁から。



「「「「「お前は、我の敵だ」」」」」


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