第54話 決戦! デバライバ1
70階から上は階層1つ1つが広いフロアだった。
10階から70階までは直径60m高さ90mほどの空間だったが、70階からは直径何キロあるかわからない程の広さに高さも100mほど。
1つ疑問だったのは階層自体は8つほどしか通って来ていないのにもう人が立ち入りできる限界の70階に達したということだ。もう3年前の記憶だし1回ここに体験で入っただけで記憶違いなのかもと思ったが、この広い階層に来て70階の意味を理解した。
最初に来た時からおかしいと思っていたのだ。直径5㎞もある世界樹の中に空洞が直径60mしかないのは。
70階を超えて広いフロアに出ると、そこには俺が出てきた階段の出口と同じものが無数にあった。
俺が通ってきた階層はこの世界樹の中にある無数の階層のうちの1つに過ぎず、細い通りの1つだったということだ。
俺が通ってきた階層の隣には分厚い壁の先に更に通り道があったということ。
たぶん、俺の通ってきた階層は1つの階層で10階分の部屋の高さがあるのだろう。
広いフロアを見た時まるで植物の茎の断面のようだと思った。
本当に、俺が通ってきたのは植物の中なんだと思い知った。
70階から先は階段などなく、上に行く出口も見当たらなかった。
仕方ないので慣れない飛行方法で宙を飛び、天井を無理矢理魔剣で何回も射出して突き破って、上層へと上って行った。
そしてついに。
――こちらエント01、これよりデバライバと対峙します。
念話からは皆が俺のことを応援する声がたくさん聞こえてきた。これより最終フェイズだ。
デバライバの魔力を感知し、天井を突き破ってその部屋に入った。
刹那、樹木が高速に成長するが如く伸びてきて俺を確実に射線に捕らえていた。
俺は咄嗟に魔剣を柵のように並びて壁を作り防御態勢に入る。
だが威力を殺しきれず魔剣と共に押し飛ばされ壁に叩きつけられた。
魔剣の壁を突き破られなかったのが幸いか、致命傷には至らない。
すぐさま立ち上がる。とどまってはダメだ。敵を常に視界に捉えなくては。
こいつは俺より魔力が高い。
人と戦ってきた時は魔力でのゴリ押しが効いたが、相手が神の場合は力比べでは負ける。
部屋は今までで1番でかかった。
内装も床ではなく大小様々な樹木の根が入り組んだ地面になっていて、つる草が根を巻いている。壁も木が隙間なく生えているような壁で、今まで見てきた削られて磨かれたような木の壁ではない。そこは自然で満ちていた。
そんな部屋にある1つの王座に座るのは木を捩じった杖を持つ神デバライバ。その横には神剣クオンが宙に浮いている。
「いきなり攻撃とか、なんちゅう挨拶してきやがる」
「ほう、話をしに来たのか。そうは見えんがな。我の農場を荒らして
「別に話をしに来たんじゃねぇよ。ただ、文句が山ほどあるだけだ」
1000本を超える魔剣のうち半分をデバライバを中心としてドーム状に展開し射出態勢を取る。
今までの比ではない威力が見込める。今ここにいる霊たちの憎悪は俺が生きてきた中で1番強く、魔力返還で得られる魔力は通常の5倍以上ある。
一斉掃射!
音より早く届くスピードで魔剣を全方位から射出する。
バァァァアアアアン!!!!!
俺の攻撃とほぼ同時に、俺の周囲から高い魔力の反応を感知した。
四方から樹木が伸びてきて俺を突き刺さんとするのは俺を先ほど突き飛ばしたのと同じもの。あれを完全に受け止めるのは難しい。
俺は待機させていた魔剣の3割を伸びてくる1本の樹木に集中放射させて迎撃させる。
伸びてくる樹木はほか3本。
俺は魔剣を1つ手にし、樹木に向けて宙を駆けた。
1本目は身体を捻って当たる直前でかわし、1本目の樹木を足場にして加速し2本目の樹木も回避し宙を舞う。
ただ宙に出た俺を待ち受けてたかのように3本目の樹木が突撃してきてかわせないと判断した俺は魔剣の持つ魔力をすべて解き放った。
俺を突き刺そうとしてきた樹木が先から真っ2つに両断される。
魔力を一気に消耗した魔剣は耐え切れずに剣身がボロボロと崩れ落ちる。
かわした樹木が再び俺を射線に捕らえる。
それを見て俺は代わりとなる魔剣を引き寄せ握り、また魔剣に無茶な使用を強要させた。
最初に伸びてくる樹木を同じように両断し、その後ろから伸びてくる樹木は待機させていた魔剣を全部使い迎撃し射線をずらした。射線をずらして勢いがなくなった樹木からは魔力の反応が薄れて動かなくなった。
視界をデバライバに向ける。
俺が樹木を捌ききったと同時にデバライバを攻撃したときに生まれた粉塵が晴れた。
デバライバの周りには赤い花が複数咲いていた。人1人を隠せるくらい巨大な花弁の花だ。
まさかあれで防いだのか。
全方位攻撃でもあの花の盾に防がれるとなると1点集中で射出して貫いた方がいいか。それとも射出の出力を上げるか。
花が
「我は見誤っていたようだ」
俺の頭上から高濃度の魔力の反応を感知した。
視界を上げると樹木が既に迫っていた。直径50mはあろう巨大な樹木だ。
俺は回避行動が取れずに伸びてくる樹木にぶつかり地面に叩きつけられる。
その樹木は止まる勢いを知らず、地面を突き破り下の階層に俺を押し出す。
そのまま何層も何層も床を突き破り伸び続ける樹木に俺は叩きつけながら世界樹内を落下していく。
ついに10階まで落ちて皆の戦っている声が聞こえたが、樹木の押し潰す衝撃で掻き消えた。
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