第52話 先に行く者とその背中を追う者2
階層を上がっていく最中、階段を駆け上がっていくのは時間が掛かると感じ跳躍したあと、空中で足裏に魔力を活性化させて不安定な状態で爆発させ下半身を強化魔法で丈夫にすれば空中でジャンプできることに気づき、まだ爆発の加減や飛ぶ方向性など慣れなければいけないことは多いが宙を飛べるようになった。
自身にポルターガイストを掛けて飛ぶこともできなくもないが、それは魔力を大量に使う。
ポルターガイスト自体はそんなに魔力を使う魔法ではないが人には生まれ持って抵抗力があるためそもそも効きづらく、特に俺は抵抗せずに魔法に掛かろうとしても霊に関わり過ぎたせいなのか理論はわからないが、ポルターガイストで飛ぼうとすると膨大な魔力で身体を浮かせないといけない。
かなり上っただろうか、もう60階ぐらいは過ぎていると思う。
もうすぐヴェルトバウム人が行き来できる70階まであと少しのところで上層に魔力反応が3つ確認できた。
間違いない、敵だ。
しかしなんでこんなところにヴェルトバウムの戦士がいる。ほかは全員10階でアンドレアスたちと戦っているのに。臆病な奴が残っているのか?
いや違う。ヴェルトバウムの戦士に臆病な奴はいない。葉がそれを許さない。
じゃあなんだ? 俺が単身で上がってくることを読んでここに配置されているのか?
臨戦態勢に入る。
霊を魔力に変えて活性化し剣の形に変形。それを3本生成する。
もう敵には俺の放つ魔力の波長でバレているだろう。
勝負は敵のいる階層に入った瞬間。
階段を上るスピードを若干落とし、移動の最高速度を悟られないようにする。
こちらの位置は魔力の波長で大体わかってしまう。なら……。
階段から敵のいる階層に頭を出そうとするその手前で一気に加速して上空に飛び出す。
そして敵3人目掛けて……、
俺は生成した剣を射出しようとしていた。
だが敵を目視して寸前のところで射出を止める。
敵の1人から矢が飛んできたが浮かせた剣で振り払い矢を弾く。
俺は敵の真ん中の奴に目が奪われていた。
「やめろ! 撃つな!」
その真ん中の奴が隣で矢を撃つ奴に静止を促す。
「まさか、こんなとこで再開するとはな。アレックス」
「クルゥ、なぜ君が! それにその格好……」
なぜアレックスがここにいる。軍に入隊したのか? いや、中等部を卒業した直後なのに世界樹警備に配属されるなんて、相当優秀じゃないと配属されないはず。
いや、アレックスならあり得るか。優秀なアレックスなら。
他の2人を見ても同い年ぐらいに見える。つまりアレックスたちは入隊し立てだから下の階層にいる人たちと戦うことを禁じられていたとか、そういうことか?
「なぜ君がここにいる」
「それはこっちの台詞だ! 死んだのかと思ってて、でもここでこうして再び会えたのに!」
「うぉぉおおおおお!!」
魔剣を持った男がこっちに向かって突進し、剣を振りかざす。
久々の会話だというのに。堪え性のない奴め、葉の意志に狂わされたか。
「やめろー!!」
手前にあった2本の剣を射出し心臓を穿つ。
突進してきた男の進行方向はズレて壁に激突する。
「そんな……」
「こいつは敵だ!」
矢を撃とうと矢をつがえた男の首が飛んだ。
矢は放たれることなく身体と共に床に落ちる。
これで生成した剣はすべて消費した。再び剣を生成しようとしたが、敵が誰なのか冷静に考えて生成を踏みとどまった。
手を突き出し、その手に握られるように次元から杖を取り出す。親父から入学祝いにもらった銀色の杖だ。
こいつは杖なしで相手できるほどの弱くない。
「構えろアレックス、親友が無抵抗で殺されるところは見たくない」
杖を使って50体ほどの霊を10本の剣に変形する。杖を使って魔力返還して作った剣は先ほど射出した剣とは比べ物にならない性能になる。
そんな構えでは耐え凌いで4本が限界だぞ。
しかし霊が多い。上層に行けば行くほど……いや、あの神に近いほど恨みを持つ霊が多くいる。
霊の魔力返還もいつもより効率がいい。もし神を殺せるのなら己が魂を犠牲にしても力になろうとしているのだろうか。
無駄にはできんな。
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