第48話 地を染める流血と舞う剣2
ヴェルトバウムの上空には無数の霊と人造魔剣が浮いていた。深夜のため、その異変に気づく者はおらず、衛兵もわざわざ空を見上げることはしなかった。
第2フェイズ。それは武器庫を急襲し、備蓄されている人造魔剣を奪取すること。
急襲方法は各地方にある武器庫の上空に高濃度の魔力を分け与えた霊をそれぞれ配置。視覚共有を使って状況を把握し、ボヘミツェで入手した人造魔剣をポルターガイストで遠隔操作して各地方の武器庫を強襲。武器庫に備蓄された人造魔剣を奪取して、それもポルターガイストで俺の遠隔操作下に置く。
20以上はある武器庫を同時に視認しながら複数の魔剣を操作しなければならない。操作には霊のアシストがあるため多少楽だが、それでも頭が痛くなる。
目を瞑り魔法に集中する。
――攻撃開始。
命令を下した直後、ヴェルトバウムの各地で爆発が起こった。1番遠い目標地点はポイングから約600キロ離れている。
国の全域で混乱が起き始める。
上空で待機していた人造魔剣は雷の如く素早く地上に落下し、その落下の衝撃は武器庫の建物を全壊させる。
武器庫周辺を警備していた衛兵はパニックに陥り、腰を抜かす。
衛兵は見つけ次第殺せと命令を下しており、腰を抜かした衛兵は魔剣で胴を穿たれた。その殺しに殺意はなく、予め命令されていたことを実行しただけの作業。
武器庫にあった魔剣も回収し、戦力を増強。作戦は第3フェイズに移行する。
「第2フェイズ完了しました。ランバートさん、オペレーターに第3フェイズに移行すると伝えてください」
「りょ、了解です」
「こいつはすげぇな。こんなの、そこらの国の1つや2つ国家転覆もできるんじゃねぇか」
アンドレアスは周囲を見て度肝を抜かれていた。ほか3人もアンドレアスと同様の顔をしている。
だが、これはまだ序の口だ。殺した衛兵の数も50に満たない。
再び目を瞑る。
第3フェイズ、開始。
武器庫から奪取した魔剣を含めて俺の遠隔操作下に置かれた魔剣は1000を超えた。その魔剣を今度は防壁付近の町にそれぞれ均等に配置させ、武器庫を急襲したときと同じように人を穿ち始める。
できるだけ衛兵を襲わせる。ただ誤差は生まれる。
ヴェルトバウムは各地で火災が発生し、悲鳴で満ちていく。
混乱は混乱を呼び、宙を舞う剣がどこからともなく飛んできてどうやって逃げればわからず、どうやって戦えばいいかわからず、人々は絶命する。
血で染まった大地は戦火で焦がされていく。
ある程度の衛兵を殺したところで目を開けて集中を解いた。あとはそれぞれ配置した霊たちがおおよその判断で人を選び魔剣を操作してくれる。
俺は罪のない人々が死ぬのを嫌う。
ただこの国に生きる者は男は戦士として女は戦争の援助のため生を全うする。この国に生きる者全員だ。その時点で罪人なのだ。全員罪人にされた。
すべてはあの世界樹の葉っぱの所為だ。ヴェルトバウム人は葉っぱを摂取するのを止められない。罪人であり続ける。
仮に世界樹をこの世からなくして葉っぱを摂取しないようにしても彼らは狂い死ぬのだ。
俺が手を下す必要もないし、俺が虐殺を躊躇する必要もない。
ここに地獄が誕生した。
その光景をただ黙って見ている戦士はこのヴェルトバウムにはいない。防壁周辺にヴェルトバウムの主戦力部隊が次々に転移門を使って移動していく。
中心街が手薄になった。
第3フェイズは防壁周辺で騒ぎを起こし、世界樹のある中心街の防衛網を手薄にすること。
そして第4フェイズはこの混乱に乗じて世界樹内に侵入する。
――こちらエント
――こちらソフィー。聞こえますよ、オーバー。
――第3フェイズ完了。これより第4フェイズに移行します、オーバー。
――了解、無理しないでくださいね、オーバー。
――了解。
「準備は整いました。みなさん行きましょう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます