第40話 戦争の終わり、そして始まり4
マルクス・ボックという男、こいつに出会ったときから感じたことのあるオーラを感じていた。
なんか、狂気的というかなんというか……そう、エマの纏う雰囲気に似ている。
「こちらこそよろしくお願いします。齢25でキッツブルック戦争を勝利に導き、最年少で国王直属の軍師に任命されたマルクス殿があなただったとは。お会い出来て光栄です」
知らない戦争の名が出てきたりとこの男については無知なのだが、ソフィーの言葉を聞く限り有名人ってのはわかる。
「私をご存知とは嬉しいですね」
マルクスがチラッとこちらに目線を向けてすぐソフィーに目線を戻した。
な、なんだ?
「この出会いに乾杯した気で山々なのですが、今はそれどころではないですからね」
「状況はある程度知ってますが、改めて現状の説明をお願いできますか?」
「もちろん。ではあちらに例の魔剣がありますので、一度見て貰いますか」
そういってマルクスは馬車の荷台の方へ歩み、俺達もあとに続く。
馬車に近づくにつれて呪いを強く感じ取れた。そこにはパッと見100本は超える魔剣の山ができていた。
「これら全てが魔剣です。どれも形が一緒で、人の手で量産された物だと推測できます」
「まさかとは思っていましたが、魔剣を人の手で作れる技術がヴェルトバウムにあるとは。しかも量産できるなんて」
「ほどんどがレベル5だと言われるヴェルトバウム人が皆魔剣を装備して何百という軍勢で襲ってくる。恐ろしい光景でしたよ。明日は我が身かもしれません。この人造魔剣の量産技術は今までの戦争を変えます。その変化に対応できなければ、我々の生きる地はないでしょう。今回のヴェルトバウムの侵攻は始まりに過ぎないのかもしれない。一刻も早くこの魔剣を解析してこちらも生産できるようにならなければなりません。ただ、量産できたところで扱える魔法師がどれだけいるか……。おっと失礼、話が逸れました。お2人にはこの魔剣を回収していただきます。大事な研究材料ですからね。ただ扱いが大変で、長時間手に持っていると魔剣が纏う呪いに魂が汚染され死に至ります。よって10分間魔剣を運んだら1時間安静にするという手法を取っています」
「なるほど、それは回収するのに時間が掛かりそうですね」
「ええ、時間が掛かりますとも。ただそんなチマチマ運ぶ必要がない画期的方法があります! そうあなた! クラウス・シューマッハ殿! あなたの扱う魔法は死霊魔法!」
げっ、なんだコイツ。
「前々から英雄の卵として目をつけていたのですが、やれ年齢が幼いなど、やれ権力争いがどうの! あなたを戦場に出せばできた戦術が沢山あったというのに! ……失礼、取り乱しました。つまり何が言いたいのか申しますと、私はあなたのファンです。近い未来、あなたを導く軍師になれるようこれまで死霊魔法の文献は読みに読み漁りました。故に死霊魔法の性質は熟知しているつもりです。死霊魔法とは死霊に生贄、命令を強要する魔法です。その性質を使えば自分の魂を汚すことなく死霊の魂に魔剣の呪いを肩代わりして運ぶことも可能と、私は見てます! どうですか?」
「どうですかって……まあ、できますけど」
「やはり! 私の計算は間違っていなかった」
マルクスは興奮冷めやらぬ状態で突然俺の手を両手で握ってきた。
「ご協力ありがとうございます。これからよろしくお願いします。では早速ですが魔剣を回収しに回りましょう。話しながら話しましょうか。あなたとは色々話してみたいと思っていたのです。あなたを活躍させる戦術やら、特殊部隊の編成やら、もうそれはそれは」
たすけて、ソフィー。
なんで君はさっきから黙って可哀想な目で俺を見てるの? コイツを止めてよ。
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