世界樹伐採特殊部隊エントファーナー始動!
第37話 戦争の終わり、そして始まり1
ヴァルブルクに来てから約2週間でニナは元気になった。ティーナさんとエマのおかげだ。2人には感謝しかない。もちろん協力してくれたソフィーも。
みんなを警戒していた頃が懐かしい。
半年ぐらい経ってようやく警戒が弱まりだして、1年経てばさすがに信用してくれたと思って完全に警戒を解いた。
ここに来て3年、俺は15歳になった。
時は早いものだと思う。
3年なんてまだ俺の人生の20%だが、それでも短いと思う。
この短い年を何年も重ねておじいちゃんになって、死んだら霊となってまた数十、数百年留まるのかと思うと、この激動の3年間はちっぽけに見えてくる。
激動の3年間といってもなにかあったわけではない。
仲間ができて、一緒に飯食べて、模擬戦して、魔法の基本的なことを教えてもらって。よくある青春を謳歌していたと思う。
だがこの3年間で俺が前線に出ることはなかった。
ヴァルブルクは隣国ボヘミツェと未だ戦争状態にあるが、ヴァルブルクでおそらく最大戦力であろう俺が戦地へ投入されることはなかった。
一時期ヴェルトバウムが俺たちの街に攻めてきたことがあったが、その時に少し戦闘に参加したぐらい。
しかしエルマー閣下が俺を目立たせたくないとはな。てっきりいい戦力としてこき使われるのかと思った。
まあ上層部にも権力争いや各々の領の戦力バランスがどうのこうのと色々あるらしく、俺に活躍の機会を与えることはなかった。
それにソフィーはめちゃくちゃ怒ってたが、俺も別に英雄になるつもりなんてなく、なにごともなく金を稼いでニナと自立する目途がくればいいと思っていたためソフィーの怒りを落ち着かせた。
あの時はいろいろ大変だったな。
まあ悪目立ちして変に身元を調べられたり、肩身の狭い思いをするより全然マシだからこれでよかったと思う。
「何ぼーっとしているのですか?」
「別に。そういうソフィーこそ何考えてんだよ」
「別に。クルゥの顔ぼーっと見てただけですよ」
そういって互いに紅茶を口にする。
第7部隊の領部屋は俺とソフィー以外いなかった。ほか4人は遠征でボヘミツェに行ってしまった。
エルマー閣下は大事な娘と目立たせたくない俺はここで待機だと。まあ最前線に行ってもキツいだけだし、この状況が1番理想だ。
「こうやって紅茶飲んでるときが1番だな」
「そうね」
ボヘミツェはかなりひどい有様だという。もともと食料不足で起こった戦争だが、ヴァルブルクの同盟国がヴェルトバウムに攻撃されて助けにいかないといけないが何度か続いて、ボヘミツェを落とす戦力を疎かにして戦争が長引いて3年が経過して、今は戦争で命を落とす者より餓死で命を絶つ者が多いと聞く。
あまりにも視線を対面から感じるのでソフィーの方を見た。
目と目があった瞬間、ソフィーはすぐさま目線を逸らす。なんだこれ。
しかし思えばソフィーは18か。ちょっとは大人っぽくなったか? いやあんま変わらんな。背は俺の方が20㎝は高い。
つい1ヶ月前の春先の測定で174といわれた。ヴェルトバウム人としては小さい方だがこの国では十分な体格だ。逆に大きくなりすぎてヴェルトバウム人と疑われると困る。
まどろみそうなゆったりとした時間を過ごしていると窓から1匹の蝶が部屋に入ってきた。
青く光る魔力を纏ったソフィーの蝶だ。
その蝶がソフィーの指に止まり、ソフィーは目を閉じて蝶が見てきた直近の記憶を読み取る。
情報伝達としては便利な魔法だ。
魔法の内容を聞いたとき、そこら辺にいる蝶の記憶を見て情報を集めることができるなんてすごい魔法だなと思ったが、思えば俺も同じようなことができた。
死霊使いができることが虫使いにできてもおかしくない。
記憶を読み解いている最中、急にソフィーの顔色が変わった。
目を開くとすぐさま魔法を解いて勢いよくイスから立ち上がった。
「クルゥ、病棟に行くわよ! 皆が帰ってきてるみたい!」
ソフィーは飲んでいた紅茶をテーブルにそのままにして部屋を出ようとしている。
「ほら、早く」
なんか、急いだほうがよさそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます