第34話 第7魔法部隊隊長ソフィー・シュルツ2

 ニナの発作の正体がヴェルトバウムの紅茶による中毒症状が原因だとわかった。


 ソフィーも紅茶のことは知ってるらしく、俺がティーナさんに説明する前に代わり説明してくれた。



「つまりその紅茶を飲まなくなったから発作が起きたと……なるほど。じゃがそれだと1つ疑問がある」



 そういってティーナさんは俺の方へ顔を向けた。



「お前さんは発作は起きておらんのか? 見たところ平気そうじゃが」


「俺は今は何も症状はないです。でも国を出たときは3日ぐらいして紅茶を急激に飲みたくなりました。紅茶を飲もうにも手元に紅茶の茶葉はなく飲まずにいると頭痛や吐き気して、挙句の果てには幻覚が見え始め森に生えてる名もわからない草を口にして吐いてを繰り返しました。ただこの症状も数日経てばなくなりました」


「なるほど、お前さんも中毒症状が出ていたんじゃな。話を聞く限り症状は時期和らぐものと考えていいのだろうか」


「わかりません、ヴェルトバウム人は常日ごろ紅茶を飲みますから。紅茶を飲むのをやめた人なんて聞いたことないですし。それに俺はもともと紅茶からの洗脳に耐性がありましたから、だからすぐに中毒症状がなくなったのかしれませんし」


「紅茶からの洗脳? なんじゃそれは」


「えっと、どこから説明すれば……」


「ティーナおばあちゃん、その紅茶についてなんだけど、軍の最新の研究でその紅茶に使われる茶葉が強い洗脳効果があって凶暴性が上がるらしいわ。長年ヴェルトバウムはなぜ戦争するのか分からず強い宗教思想が原因じゃないかって言われてたけど、実際は紅茶が原因でそれを飲んでいるだけで狂ったように争いを求めるようになるとのことよ」



 ソフィーがまたティーナさんにわかりやすく説明してくれた。

 俺が説明していれば茶葉に神の意志が強く宿ってて、とか詳しく説明しすぎて伝わらなかっただろう。


 しかしヴァルブルクは紅茶のことをそこまで調べ上げていたのか。まあ敵国の戦争理由を調べ上げるのは当たり前だが、まさか紅茶が原因とは思わなかっただろうな。



「まあとりあえず一旦様子見じゃな。とりあえず解熱剤は飲ませたが、これで症状の根本がなくなるとは言えない。数日経てば中毒性はなくなるかもしれないが、こういう事例は前代未聞じゃからな」



 波は過ぎ去ったと考えていいのだろうか。


 いや、こっから悪くなるかもしれないんだ。安堵なんてしていられない。

 救いは薬に詳しいティーナさんが常にそばにいてくれることだ。


 もし、ティーナさんがいなかったら俺はニナになにもしてやれなかった。

 回復魔法なんて専門外だし、無理矢理魔力で自分の傷を歪に塞ぐ程度ならできるけどニナのような小さい身体にそんなことしたらニナの身体が持たない。


 俺だけではこの波を超えられなかっただろう。



「ティーナさん、ありがとうございます」


「別に構わないさね。それより近くで見守ってあげな」


「はい」



 俺は寝ているニナの手を取り、両手で優しく握った。



「クラウス、今回は特別に早退を許可します。壁修復の班長さんにはこちらで伝えておきますので後のことはお任せを」


「すみません、ありがとうございます隊長」



 そういってソフィーはもともとここに来た目的の買い物を済ませて店を出て行った。

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