第31話 ヴァルブルク軍と戦う理由8

 次の日、俺は防壁の補修工事を手伝っていた。


 またヴェルトバウム軍が攻めてきたら防衛に参加するようソフィーに言われたが、おそらく来ないだろう。

 もし第2陣が控えていたら夜中に襲ってきているはずだ。


 魔法を知らない一般人と共に修復作業を行う。


 こんな壁、俺の魔法なら数秒で直せるとソフィーに言ったが、それはできないらしい。一般人が魔法を見てしまうからだと。


 俺はなぜ一般人が魔法を見てはいけないのか疑問になり質問するも「あなたそんなことも知らないの?」と呆れられてしまった。


 説明してくれるのかなと思ったが、ソフィーは面倒くさいと言い捨て「ランバートさんにでも教えて貰いなさい」といってどこかに行ってしまった。


 そのランバートさんがどこにいるのやら。持ち場を離れるわけにもいかないし。

 今夜寮に帰ったときにでも聞いてみるか。



「おい坊主、これあっちに運んで行ってくれ!」


「はーい!」



 筋肉は鍛えているから重たい物もそれなりに持てる。だがこんな魔法であっという間にできる作業を筋肉と体力だけでやるのは、どうしてもやる気が出ない。


 まあ俺が壊したんだし、やらないとかサボるっていう選択はないんだけど。



 昨日エルマー閣下を監視するためにつかせた霊が今朝戻ってきて報告を聞いたが、やはり疑っていた。

 まあそりゃそうだろう。いくら田舎で暮らしていたとはいえ俺みたいな戦況を変えるレベルの魔法師が無名だった時点で相当に怪しい。


 ただ怪しいからといって無理やり問いただせたりしなかったのは、ティーナさんのおかげだろう。

 彼女はヴァルブルク軍にとってかなりの影響力があるみたいだ。


 ティーナさんは本当にできる限りのことを俺たちにしてくれた。

 この厚意をを無下にすることはできない。


 とりあえず俺を監視しているエルマー閣下とソフィーには注意しないと。



 ただ、監視されていてもニナとは会いたい。



 昨日の戦いあと、自由に霊を扱えるようになってからニナが無事か確認するために一応霊をティーナさんのお店に飛ばしたが、今朝霊の報告を聞いて安全だとわかった。


 ニナは安全。それがわかっていてもこの目で確認したい。

 霊の視界共有を使ってではなく、この目で。


 俺がティーナさんのお店に行くところを監視している者に見られれば疑いの目は増すだろうか。


 リスクはできるだけ減らした方がいいけど……。


 いや、ティーナさんのお店に行こう。孫が祖母のお店に行って何がおかしい。


 よし、昼休憩の時間になったらニナに会いに行く。

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