第28話 ヴァルブルク軍と戦う理由5

「本日付で配属になったクラウス・シューマッハだ。さあ、皆に挨拶したまえ」


「今日から入隊しました、クラウス・シューマッハです。よろしくお願いします」



 俺はアンドレアスの案内のもと地下を深く下った先にある10m×10m弱ほどのリビングにしては少し大きめの部屋に通された。


 そこには3人の魔法使いがいて部屋に入った瞬間いろんな視線を浴びせられた。

 1人は恐怖の目で、もう人は警戒の目。もう1人は……好奇心?


 部屋は若干薄暗く、光量の低いオイルランプが多々ある程度。魔力を込めた水晶を使った方が絶対明るくて快適なはずだが、この国では使わないのだろうか。


 ただこのぐらいの明るさが暗めの石壁をいい感じに照らしていて悪くない。


 壁のある一方の面には鉄格子のついた窓があって月光りが淡く差し込んでいる。


 中央には巨大な長テーブルと木の椅子が6個テーブルを囲んでいる。



「まさかヴァルブルク軍に入ってくるとはな、しかもうちの隊って」



 最初に警戒の視線を送ってきた女が呟いた。よく見ると昼間の俺の背後に忍び寄って攻撃してきたナイフ女だ。まあアンドレアスと一緒に戦ってた時点で同じ部隊か。


 それなら瀕死のアンドレアスを治療した回復魔法使いもいるはずだ。



「でも、ティーナおばあさんの孫だから大丈夫よね……?」



 次に恐怖の視線を送っていた柵の棒のように細い男がナイフ女へ不安げに問う。

 だがナイフ女は男の問いに答えようとはせず明後日の方向を向いたままだ。


 どうやら俺の情報は共有されているらしい。



「し、し、死霊魔法師……ど、どれだけすごい魔力を秘めてるのやら……エヘ、エヘへ」



 部屋に入った時、好奇心が見え見えの目で俺を見てきた女が俯いてボソボソと何かつぶやいている。


 なんか、独特な雰囲気の部隊だな。


 そういえばこの国に来てからみんな魔法使いのことを魔法師って呼んでるな。ヴァルブルクでは魔法師って言い方がデフォなのか。



「では皆にも軽く挨拶をしてもらう。俺の名はアンドレアス。アンドレアス・クラウゼだ。呼び方は何でもいい。アンディでもアンドレーでも好きに呼べ。じゃあ次、マルガレーテから左回りで順次に自己紹介を頼む」


「……はぁ。マルガレーテだ、マルガでいい。隠密行動が得意だ、前衛もいける」


「ランバート・ワグナーです。ティーナおばあさんに孫がいたとは驚きでした。あ、あの……お手柔らかに。私は後衛で火炎魔法による範囲攻撃が得意です。トラップとか結界とか設置系の魔法もある程度使えます」


「……私、エマ。エヘ……死霊魔法師って魔力、多いんですよね? 魔力がたくさんあると上半身吹き飛ばしても再生するのかなエヘへ……あ、趣味は実験です。休みの時は豚を損傷させて再生させて、それを何回やればダメになるのか、とか……まあ色々やってます」



 この部隊、大丈夫だろうか。途中悪寒がしたんだが。


 ランバートさんはアンドレアスと年齢は同じぐらいで他の女2人より年増で安心感がある。ちょっと痩せすぎな気もするけど。


 女2人は20を超えているだろうか、20後半かな。歳が離れすぎるとどれくらいか予想しづらい、特に女は努力次第でとことん化けるからな。でも失礼かもしれないがニナさんはそういうのに力注いでなさそう。



「ではクラウス、エマの隣に座ってくれ」



 よりにもよって悪寒の原因だろうエマさんの隣に座ることになった。そして警戒オーラ出っぱなしのマルガレーテさんの対面だ。



「ごめんなさい、遅くなりました」



 椅子に着くが否やドアが開きソフィーが部屋に入ってきた。手には片手で持ち運ぶには困難なほど大きな水晶玉を抱えている。



「お疲れ様です、今一通り自己紹介を終えたところです。おや、それは保有魔力量測定器? なるほど、ようやく死霊魔法師の底を見れるというのですね」


「オホォー! きましたよ。はてさてどれほどの魔力を持っているのやら……エヘへ」



 皆ソフィーが持って来た水晶玉を見た途端、目の色が変わった。特に隣のテンションがおかしい。



「すみません、その前に私も改めてご挨拶を」



 ソフィーがそういうとテーブルに水晶玉をおき、気をつけの姿勢をして右腕で拳を作り左胸にあて、大きく息を吸った。



「第7魔法師部隊隊長ソフィー・シュルツ。歓迎するわ、クラウス・シューマッハ」


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