第25話 ヴァルブルク軍と戦う理由2
「つまり私よりも年下ってこと……?」
「あなたが何歳か知りませんが俺の歳は12歳ですよ」
矛盾を生んでしまったと思ったらどうやらそうではないらしい。
まあこの国の人たちからしたら俺の身長は大きく見えるものなんだろうな。
でも身長は入学時に測った時には153㎝だったけど、ヴェルトバウムの中では小さい方なんだが。
「俺、12歳の子供に殺されかけたのか……」
なんかショック受けてる。えっと、おじさんの名前は……アンドレアスだっけ? なんかそんな名前だった気がする。
「すみません、話が逸れましたね。本題に戻りましょう。12歳になって実の叔母のいるこの国の軍に入隊しようとここに来たと……なるほどヴァレンティナさんとの証言と一致しますね。軍は12歳から入隊できますしそう考えると時期的にもおかしくはないですね」
一か八かのでたらめだったけどなぜか嚙み合ったな。ってかこの国って12歳から軍人になれるのかよ。そっちの方が驚きなんだが。
「ただ入国手続きの記録にあなたの名前が載っていないのですが、これはどういうことでしょうか?」
突かれては不味いところを突かれてしまった。門番の兵を気絶させて不法入国したとか言ったらどうなるのだろうか。
いや、考えるまでもないな。何か言い訳を思いつかないと……なにかないかなにかないかなにかないか……
ああ、先のヴェルトバウムの進軍にすべてなすりつければもしかしたらうまくいくかもしれない。
「どういうことって言われても、門番には誰もいなかったですよ。門ががら空きでこの国大丈夫かな?って思いましたけど」
「門番ががら空き? 人がいなかったっていうの?」
「ええ、見かけなかったですね。隣国のヴェルトバウムとは対立中だというのに今攻め込まれたらヤバいだろうなとか思ってたら、案の定攻められちゃって街はめちゃくちゃで」
「ソフィーお嬢様、そのことなのですが実は……」
どうにか頑張ってヴェルトバウム軍のせいにしようと誘導を試みてたがアンドレアスがソフィーに耳元で何かを告げ始めた。
「なるほど、気絶させられて隠されるように……はい……はい……ではヴェルトバウムのスパイかもしくは先行隊が門兵を無力化させて本隊を入れさせたという可能性も……」
なんか、誘導せずとも勝手にヴェルトバウム軍のせいにしちゃってる?
ってか、俺が門番を気絶させたせいで街が大変なことになってしまったんだよな……。
もしかしたら門番の兵が進軍を食い止めて街に被害が出ることはなかったかもしれない。
なにか間違えればニナに被害が及んだかもしれない。
「すみませんクラウスさん、入国手続きの件に関してはこちらにも問題があったみたいでこの話は一旦忘れてください」
「はぁ、わかりました」
あぶねー、なんかいろいろ勘違いしてくれたみたいで助かった。
「それで次の質問なのですが、なぜ我々に攻撃を行ったのですか? 街の被害の半分はあなたの魔法によるものだと我々は考えていますが、そこら辺を詳しく話していただけますか? あなたに正当性が見られない場合、極刑を辞さない所存です」
え? 俺別にこいつらに危害を加えようとは思ってなかったし、というかどっちかというと俺、進軍から街を守った側だよな? この人たちにも最初は温厚に接しようとしたのに先に攻撃してきたし……。
男が俺を見るその目がウザく感じた。派手に蹴り飛ばされたのがそんなに根に持ってるのかな。
「……はぁ」
溜息を1つ吐く。
殺されたくなければ真っ当な理由を述べろと、生死の決定権はこっちにあるぞと。魔力を活性化させない縄で拘束された状態で何ができると。
そんな目線を感じた。被害妄想が過ぎるかもしれないけど。
はぁ。俺を縛る何もかもを破壊してやりたい。
俺は縄に魔力を流し込んだ。
体内で魔力を活性化させて縄に魔力を流し込むがほとんどが抑制されてしまう。
活性化状態のままで縄に流し込まれた魔力は僅か。
ただこれを100倍の量の魔力を流し込めばこの縄はただで済むのか。
出力を上げる。
縄が紫色に光り出し爆発、粉々になって部屋中に飛び散った。
「なっ、こいつ!」
「そんな、魔力抑制帯が壊れた?」
「こっちは街を救おうと必死に戦ったというのに何だこの扱いは。ヴェルトバウム軍30人以上を相手にすれば街に被害が出るのは当然だろ、むしろ被害を抑えた方だってのに。さらにはそっちが先に攻撃してきたのに我々に攻撃を行った? 極刑? ふざけた話だ」
女は縄が粉々に飛び散ったことに茫然とし、男は腰に差した剣に手を添えて警戒態勢を取った。
俺もこれで魔法が自由に使える。自分の保有する魔力で充分に戦えるが念には念を、霊を呼び寄せる。
死霊使い対策か霊除けの結界が張られているが、俺の命令には霊は逆らえないようで結界を貫通して俺の手元に来た。
霊は苦しそうな顔をしているが、魔力源になるなら問題ない。
さて、どうしたものやら。
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