第15話 ヴァルブルクと出会い1

 森を抜けてヴァルブルク国が見えた。


 周囲は10メートル以上はあろう防壁に囲まれて、目を凝らすと城壁の上からは魔力の壁が見える。

 おそらく上空からも侵入させない防護結界だ。


 中に入りたいが壁を壊すわけにもいかない。かといって検問所から入れば身元確認がある。


 素直にヴェルトバウム国民と言ってしまったら追い出されるだろう。

 敵対している国の民を通すわけがない。


 かといって嘘をついて別の国から来たといっても、すぐ噓がバレるだろう。

 俺はヴェルトバウム以外の国のことに関しては無知だ。

 どんな喋り方をするかもわからないし、どういう地域なのかもわからない。


 とりあえず俺がヴェルトバウム国民ということは隠そうと思うが、身元不明の俺がどうやって中に入るか、これが現状の課題だ。



 うーむ、どうしたものやら



 門番を殺して入れば簡単だが、それは盗賊とやっていることは同じ。第2の俺のような奴を生んではならない。


 なら殺さずに気絶させれば大丈夫か?


 安易な発想だが、何事もなくやろうとすると簡単ではない。

 門番の兵に気づかれて警報でもならされたら絶対めんどくさいことになる。


 でもそれ以外の方法が思い浮かばない。



 よし、やろう。



 門は二重扉になっており、扉と扉の間の右側の壁は奥行き2mほどり貫かれていて、検査所の部屋になっている。


 門番の兵は3人。

 壁の外側に1人、壁の内側に1人、検査所の部屋に1人いる。


 扉は全開の状態で、門番の兵を気絶させればすんなり入れそうだ。


 門番の兵を気絶させたら、その兵を検査所の部屋に隠せば発見は遅れるはず。


 

 それで肝心の兵を気絶させる方法だが、試合中に腹を思いっきり殴って気絶させたことは何回かある。

 毎回毎回腹殴れば気絶するわけではないし、コツとかも知らないのでうまくいかない可能性もあるが、数撃てば当たりは引くはず。


 俺は飲み水として大量の水をポルターガイストで宙に浮かせて持ち歩いていた。


 その水を3等分して、人の頭より少しでかい水の玉を作る。


 あとは魔力を細く捩じって糸の形にする。

 この魔力の糸は強度だけはいいが、この形を維持するのは難しく、俺の魔力操作技術ではこれが限界。1分も形を維持するのは難しい。



 さあ、ぶっつけ本番だな。



 森から糸を蛇のように地面を這い、兵の足元へ伸ばしていく。


 兵の位置は兵自身が放つ魔力だけが頼りで、目視で位置を確認できるものではない。


 水の玉も気づかれないようにできるだけ高い所を移動して、兵の頭上に持ってくる。


 どれもバレずに準備ができた。あとは実行するのみ。


 兵の頭上に浮遊していた水の玉を兵の顔を包み込むように降下させた。

 兵から感じる魔力の波長が乱れている。突然のことに驚いているのだろう。


 俺はかさず足元に忍ばせた魔力の糸を兵の足首に絡ませて、その糸を思いっきり引っ張った。


 うまくいったようで、顔が水の中に入って大声を出すことができない兵が引きずり出てきた。


 手綱を手繰り寄せ森の中に連れ込み、俺の足元には混乱して口から息をブクブク漏らす兵が転がっている。



 悪いな、できればすぐ終わらすから。



 抵抗しようとする兵の四肢を糸で地面に縫い付けてひたすら腹を殴った。


 なかなか気絶しなくて最後だけはうまくいかなかった。



 3人とも無事気絶できたのでポルターガイストで浮遊させて門の所にある部屋に置いておく。

 手早く兵を移動したので恐らく街の人には見られてないはず。


 もし見られていて通報されていたらここを全速力で離れるしかない。


 まあ難なく入国完了した、でいいかな。

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