失ったもの、得られた真実

第7話 入学式と世界樹警備1

 俺はアレックスと共に入学式に出ていた。


 入学式は世界樹の中の9階。世界樹の中は空洞になっていて9階までは学校になっている。

 壁や天井、柱など見えるもののほとんどが木製で、天井には魔力を込めて光る水晶が灯りとなってはめ込まれている。

 新入生の席は舞台を中心として放射状に階段が伸びるように用意されていた。



「であるからして、新入生には存分に勉学と武芸に励んでいただき」



 今は校長が新入生に対して挨拶をしている。

 この挨拶に何の意味があるのか全くもって分からない。というか話が入ってこない。


 校長の話が退屈ってのもあるが、舞台袖の方から今まで感じたことのない魔力を感じる。

 不気味な魔力とかめずらしい魔力とかそういうものではない。


 でかいのだ。


 ただただでかい。凄まじい魔力量を舞台袖の奥から感じる。

 それは皆も感じ取っていたようで生徒の騒めきが至る所から耳に入る。


 隣を見るとアレックスの手は震えていた。


 無理もない。本能が危険を示しているのだ。あの奥から感じる魔力は何なのか、あの魔力が爆発でもしたらここら一帯は吹き飛んでしまうのではなかろうか。

 もし根本で爆発したら世界樹が折れて倒れてしまう。そんなの想像したくもない。



「これで校長先生の話を閉めさせていただきます。そして新入生の皆さん、静粛に」



 先ほどまでかなりざわついていたが、ようやく校長が私語を慎むように促した。



「今回は我らが神、デバライバ様にお越しいただいている。新入生、起立」



 デバライバだと!?


 その名はこの国の人なら誰もが知る唯一生存する神。世界樹の生みの親であり管理者。



「顔を下に向かせ、手を合わせろ」



 ざわつきも一瞬。校長の声と共に立ち上がり手を合わせて指同士を交互に絡ませる。それはまるで訓練された軍隊のようだった。


 あんな膨大な魔力を前に言いなりになるのも当然だ。俺も少し遅れて皆の真似をする。



 カコン、カコン、カコン。



 よく響く高い足音。

 校長の話はあまり聞こえなかったのに、今はただの足音が鮮明に聞こえる。



「皆の者、おもてを上げよ」



 神なんて見たことない。俺はすぐさま顔を上げてそのご尊顔を見た。

 だが周りはまだすぐに顔を上げておらず1人だけ早く顔を上げる形となり、少し目立った。


 というか、一瞬だけ神と目が合った気がする。


 神、デバライバは思ってたより若かった。

 若いといっても30代後半といったところか。

 そして男だ。190いってるかいってないかの細身の男。身長は俺たちヴェルトバウム国民と同じぐらいで、体型は俺たちからすれば痩せている。

 異国の聖職者という人が着る白いコートを纏い、そこからはあふれんばかりの魔力が溢れ出ていた。


 世界樹と同じ黄金の魔力。人々の見るその光はまさに神の輝き。


 だが、神の魔力とは別の魔力も俺には見えた。



 神というのは、あんなにも呪われるものなのか。



 神の周りを蠢く黒い魔力。その無数の魔力で神の威光なぞ霞んで見えた。



「あまり人前には出ないんだがな」



 デバライバはこの国の王でもある。この国の代表だ。

 ヴェルトバウム国はただ領土拡大のために戦争をする国。そんな国の王様は敗戦国からしたら憎しみの対象だ。


 それはもう、大量の霊に憑りつかれるのは自然の摂理か。



「久々に出来のいい子がいると聞いてな。まあ、気まぐれではあるが」



 刹那、強大な魔力が上から猛スピードで近づいてくるのが分かった。


 感じたのもつかの間、気がつけばそれはデバライバの後ろの壁から感じた。

 一瞬の移動。そしてデバライバと同等、いやそれ以上はあるかもしれない計り知れない魔力の波動を感じる。


 壁を突き破りそれは姿を現した。


 剣だ。

 1m程の片手で振れそうな、剣身が分厚くも薄くもないもの。

 全体的に銀色で、握りが黒色のシンプルな剣。



 見た目はシンプルだが別格の魔力を放つその剣に、俺はを見た。



 突き破った木の壁が木が成長するように塞がれていく。



「まあ一応初の顔合わせだし、自己紹介とちょっとした昔話を一摘みほど」


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