ショートヘア E.P

新田漣

ショートヘア E.P

黒髪を短く切っただけ軽くシュワルツシルト 夏と私と


すれ違う人々にみなこの次があって愉快な犬とか飼える


星座にはなれない街の片隅で願いも呪いもおんなじポーズ


歯が折れたとマスクを外す中村が死相のお手本みたいな顔で


くたばったロックンロールが引きずられ小娘彩るパセリにされて


日本国憲法は通用しない『マイクを投げたら殺す』の張り紙


この日々を思い出す日を遠ざける口ずさむ春が嘘だったこと


女性だと思い込んでたボーカルの素顔を見ても二択が残り


過ちの責任を負わされがちな夏の気持ちも考えてみる


農村が抵抗の末敗北しダムに沈んだみたいな恋だ


嘘は月きたないところを隠すからピアスもタトゥーもちゃんと痛くて


コンビニの灯りを結ぶ私たち今だけ夏が吹く、夏が吹く


見上げれば落下しそうな夜の底このまま沈めきみの家とか


手首から滴り落ちた感傷が金魚になって意外と生きる


浴槽に浸かった脳で繰り返す あびばのんのん それじゃ海まで


夢の中きみはとってもいい人でMVみたいに笑うね逆光


ベランダの空き缶に告ぐ戦力外 正しい香りが消えますように


青のエンドロール呆気なく終わる私の名前を必死に探す


あっそうだ返し忘れた鍵がまだ だからを拾って春へと戻る


ひといきに漂白された空の波 私のからだが塗りかわる朝

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