第6話 博士の思惑

 財閥とも言えるほどの企業にのし上がったグループに、

「大神グループ」

 というのがある。

 ここは、元々は大神製薬という製薬会社から始まったもので、その実態は麻薬取引からだった。もちろん戦後の混乱期だったので、摘発さえ何とか逃れればうまくいけた。そういう意味で警察内部に侵入し、公安を買収するというやり方を行っていたので、摘発を受けるようなヘマはしたことがなかった。

 そうやって生き残った大神製薬は、それまで不治の病と言われていた病気の特効薬を開発し、すぐに特許申請を行ったことで、一気に薬問屋にちょっと毛が生えたほどだった会社を一気にトップ企業にのし上げた。

 その功績に天王寺博士の力があったことは、周知のとおりだった。

 天王寺博士というと、赤魔術十字軍を壊滅させることに成功した博士である。国家的な反逆集団を壊滅させることに大いなる功績のあった天王寺博士なので、大神製薬での功績はさらに博士の株を上げるに十分だった。

 その当時の時の人となった天王寺博士は、その後、政治にも参画していた。衆議院に立候補し、さすがにその知名度から、他の追随を許すことなくトップ当選であった。

 着々と政治の世界でもその立場を確立していき、本来の研究だけではなく、マスコミへの露出度も高くなっていった。

 週刊誌の表紙を飾ったり、民間にも普及し始めたテレビ出演など、引っ張りだこであった。

 これも博士の計算にあったことで、必要以上に思えるマスコミへの露出度も、いろいろな産業への進出も、博士の思い通りだった。

 博士に参謀がいたようには思えない。普通であれば、秘書のような人や、スポークスマンがいるのだろうが、博士はすべて一人でこなした。それも博士の計算で、本当なら限界がありそうなことも、うまくまわりを欺きながらこなしていた。博士であっても、神様ではないのだから人間としての限界はある。それも一般人と変わりはない。それを可能にするために、マスコミへの露出を大きくし、相手に自分のペースを覚えこませることに専念した。それ以降の行動パターンをやりやすくするために、同じ方法を使うという、いわゆる高等テクニックというやつだった。

 博士はそれだけのことができる人物で、そういう意味では役者だったと言ってもいいだろう。

 天王寺博士は、しばらく内閣の相談役のようなことをしていた。参議院議員というのは仮の姿で、裏で政府を動かしていた。実際にその時代にはそんな政治家は存在したようで、天王寺博士はそのパイオニアではないかと目されている。

 ただ、これも大っぴらに知られていたわけではない。一種の国家機密で、その裏にいたのは占領軍とも言われている。占領軍は日本国の民主化を進めていたが、これまでの軍国主義から民主主義への移行はそんなに簡単なものではない。右翼の存在や反政府勢力の存在が見え隠れしている中での民主化は難しかった。

 天王寺博士が政治を掌握してくる頃になると、徐々に主権は占領軍から日本国へと移行してくる。独立国家としての道を歩み始めたのだ。戦後復興もだいぶ進んでいて、

「もはや戦後ではない」

 などという言葉が巷に溢れた。

 もう、その頃になると、赤魔術十字軍の首領格の死刑囚たちの処刑は行われていて、残存する分子も、その活動をする者はいなかった。世間の方でも事件が陰惨だったわりには、忘れるのも早い。人間の心理とはかくいうそんなものなのかも知れない。

 天王寺博士は一人で何かを研究することが多かった。政治に参画するようになって、歴史の勉強も始めた。本格的に政治への関心を深めたのかも知れないというウワサも流れ、どこかの県の県知事を目指しているとか、新党の結成を目論んでいるのではないかとか、人によっては、将来の首相の椅子を狙っているのではないかというウワサまで聞こえてくるくらいだった。

 実際に天王寺博士がどこまで考えていたのか分からないが、ある日、参議院議員を辞職するという爆弾発言を言い出した。理由としては、

「大神製薬の社長に就任する」

 ということだった。

 元々、大神製薬にはアドバイザーのような形でいろいろ助言したり、博士の発明品の特許を取り、博士に還元していたりした関係があったが(この頃は許されていた)、大っぴらに社長就任となれば、参議院議員の職を辞することも必要だったのかも知れない。

 このニュースはトップニュースとして取り上げられた。新聞記者から、

「政治の世界に未練はないのですか?」

 という、ベタな質問もあり、

「ないと言えばウソになりますが、今は製薬会社で自分の力を発揮することで、多くの命を救いたいと思っております」

 という話をした。

 天王寺博士くらいの人がいうのだから、皆その言葉に納得した。そして、

――製薬会社を大きくしたという実績を元に、また政界に戻ってくるんだろうな――

 と思っていた。

 ただ、一般市民は天王子博士が、裏で内閣の相談役のようなことをしていることを。それは今まで通りで、いわゆる表向きになっている議員という仕事を辞するだけのことだったのだ。

 製薬会社の社長に就任することで、民間企業の経済力と、内閣相談役という地位を用いて、さらに天王寺博士の存在は、裏の世界ではどんどん大きくなっていった。

 大神製薬は、天王寺博士が社長に就任してから、さらに業績を増やしていった。社長自ら考案したとされるクスリが発売されるようになると、またしても、社長は時の人となった。継続的に社会の注目を浴びることはなかったが、定期的に社会の注目を浴びる。この方がインパクトは強いのではないだろうか。そんなことが三年くらい続いただろうか。さすがにこのパターンもマンネリ化してくると、『オオカミ少年』の域を出なくなってしまうからだ。

 大神製薬は博士の力で日本で最大の製薬会社に上り詰めた。戦前からあった大手製薬会社を抜いたのだ。これも、博士の考案したクスリのおかげで、名実ともに博士は知名度をさらに上げた。

 この頃になると、今まで影で行っていた内閣の相談役という仕事を大っぴらに行うようになった。

 その記者会見で、

「今度は内閣の相談役ということでのお仕事ですが、抱負のほどはいかがでしょう?」

 と、ありきたりな質問に、誰もが当たり前のような答えしか想像していなかったが、

「抱負と言われてもねえ。実は今までも影でやっていたんだよ」

 と、ため口のように呟いた。

 これに対して、記者会見場でざわめきが起こった。そのざわめきは大きなものではなく、重低音で、地響きすら感じるほどだった。その雰囲気にどこか恐ろしさがあり、事の重大さが含まれていた。

 確かに内閣の相談を受けていたとして、それが別に罪になるわけではないのだが、博士の言い方があまりにも思わせぶりだったこともあって、そんな雰囲気になったのだ。

 それをまわりの人は、博士の失言だと思った。博士が口にしてはいけないことを口にしてしまった。しかも、それを曖昧な、そしてこぼすような口調で話したことは、今までの博士にはない特徴だったのが、皆を仰天させた。

 ただ、これも博士特有のやり方で、高等テクニックの一つであった。別に何でもないようなことを、さも大事件のように印象付けることで、博士が今度引き受ける相談役がどんなものなのかを、国民には理解できないだろうということが言いたかったのかも知れない。そこにどんな意味が含まれているのか、当の博士でなければ分からないのだろうが、博士にはそれなりの思惑があり、政治への参画を裏付ける何かがあるに違いない。

 そこまで考えていた人はいないと思うが、博士のその発想が国民のためであってほしいと、もし気付いていた人がいれば、そう感じたに違いない。

 大神製薬に、特赦で釈放された、元赤魔術十字軍の幹部たちが入社してきた。そのことを気にしている新聞記者も若干だがいたのだが、彼らが疑問に感じたのは、

「どうして社長に就任した天王寺博士はそれを許したのだろう?」

 というものだった。

 幹部の方も、組織を潰された恨みがあるはずだ。天王寺博士と釈放された幹部とはいわば犬猿の仲のはずだ。その人間関係がどう入り組んでいるのか、表からは見えない大神製薬という会社の闇に感じられた。

 だが、大神製薬の成長は止まらなかった。今まで社長が自ら新薬の開発に関わってきたが、元幹部が入社してきたことで、開発を彼らに任せ、自分は社長業に専念した。

 元々赤魔術十字軍は幹部といえども、科学者だったり医学者だったりしている。彼らは上から下まで天才肌のインテリ軍団だったのだ。

 博士のカリスマ性というのはかなりのものだった。

 元々大学をトップで卒業し、大学院に残り、研究者としての道を進み、若干三十歳で博士号を取るなどの天才的なところを見せつけた彼は、

「医学界の寵児」

 ともてはやされた。

 そのうちに天文学、心理学とその研究の幅を増やしていった。

 普通であれば、一つのことに突出している人が幅を広げても、あまり意味がないように思われたが、博士の場合はそうではなかった。

 手を広げたところでどんどんその才能を発揮し、素晴らしい業績を残すとともに、その学問の発展に対しても大いに貢献していたのだ。

 そういう意味で、博士が政治に参画した時は、世間ではビックリしていたが、彼のことをよく知る学者たちは、

「彼なら大丈夫」

 と皆が皆思っていたことだろう。

 そんな天王寺博士に対して、やっかみがなかったとは言えない。研究者や学者というのは、えてして自分が一番だという自分至上主義の人が多いのは分かっている。そんな連中に博士が目障りに感じたのも無理はないだろう。

 今では博士も心理学を勉強したおかげで、マインドコントロールを行うことができ、まわりの目をごまかすこともできるようになっていた。

 ちょうど心理学を勉強していた頃というのが、赤魔術十字軍の中で宗教団体としての降天女帝が活躍していた時代だったというのは、皮肉なことだろうか。

 赤魔術十字軍の幹部というのは、そのほとんどが反社会的勢力側の人だった。つまり宗教団体としての勢力は、教祖として降天女帝が一人で仕切っていたと言ってもいい。もちろん経理的なことや営業、宣伝的なことのスタッフはいたが、決定権などはなく、そのすべてを教祖が把握していたことになっていた。

 そういう意味でこの宗教団体は特殊だった。人の心を掌握し、マインドコントロールができるだけの人間なのだから、それくらいの力があっても不思議はないが、実は天王寺博士は彼女に大いなる興味を持っていた。

「あの教祖は私にはないものを持っているんだ」

 という意識があったのだ。

 その実、博士が赤魔術十字軍の中で一番怖がっていたのも彼女だった。

「この女がいるから、この団体は生き残ってこられたんだ」

 と思っていた。

 戦後の混乱を乗り切ることは、反社会的勢力の幹部の仕事であろうが、その間に軍団を大きくし、体制を確立し、彼らの目的を容易ならしめんようにするためには、この女性の力は不可欠だった。

 いろいろなことに視野を広げて、そのすべてに大きな功績を残すことのできる天王寺博士だが、そんな博士が最も恐れ、そして自分にはないものを持っている人がいるとすれば、それは彼女だけだと思っていた存在に敬意を表していたのは間違いない。

 しかし、博士はそれを承知のうえで、赤魔術十字軍の壊滅に動いた、ひょっとすると、彼らの膨張を最初は見て見ぬふりをしていたのかも知れない。どこかで彼らを自分で利用しようとしていたのかも知れないが、そのうちに自分だけの手には負えない組織になりそうだということで、いよいよ壊滅に動いたのではないかとも言える。それだけ赤魔術十字軍は大きくなりすぎたというか、博士の中で、目の前のタンコブになってしまっていたのだろう。

 赤魔術十字軍を滅ぼすための作戦は、最初から考えていたのかも知れない。そして、

「これくらいの勢力だったら、まだ何とかなる」

 という自分の中でボーダーラインを決めていて、彼らの動向を見守ることでそのボーダーラインを超えたかどうか、判断していたのだろう。

 そうやって考えると、いくつか辻褄の合ってくることもある。もちろん、そんなことは一般の国民に分かるはずもなく、政府であっても分からないだろう。

 もし分かっていたとすれば、学者仲間だっただろうが、彼らには自分至上主義なところがあるので、決して博士を批判するようなことはない。それも計算ずくだった。

 ただ、一つ気になっていたのは、教祖である降天女帝だった。この女は皆が思っているよりも恐ろしい存在で、その本当の恐ろしさを知っているのは天王寺博士その人一人だと自分で思っていたのだ。

 博士がどうしてそこまで知っているのかというと、これは誰も知らないことだろうが、博士は心理学を勉強する前からマインドコントロールについて興味を持っていた。いや、脅威を感じていたと言ってもいいかも知れない。ほとんどのことに恐怖を感じることのない博士にはない感情だっただけに、博士自身、本当に恐れていた。

 そのため、これこそ本当に極秘で一時期であるが、この宗教団体に所属していた。そこで実際に教祖の降天女性にも遭っているし、彼女の力を目の当たりにもしていた。だから、その力を知っていたことから、本当は躊躇もあった赤魔術十字軍の壊滅を推し進めたのだ。

 その壊滅は、完全なる破壊でなければいけない。少なくとも首脳陣はすべてこの世で生きながらえてはいけない人間だった。一部の幹部に対してはしょうがないとして、それを実行するために、壊滅計画を公開で行ったのだ。

 最初は極秘も考えたが、公開にしないと、完全なる壊滅はできないと博士は考えた。その考えは的中し、壊滅に成功したわけだが、そんな博士が大神製薬に、幹部であった、いわゆる組織の残党を迎えいるとというのは、合点がいかない人もいたことだろう。

 しかし、あれから何年が経ったというのか、事件自体もほぼ風化していて、

「残虐の事件がかつてあった」

 というだけで、完全に過去のことになってしまっていた。

 人間の本当の恐ろしさは、過去になるとすぐに忘却の彼方に記憶を封印するというところにあるのではないだろうか。

 天王寺博士は、マインドコントロールを供えていた。ただ、その威力はさすがに教祖には適わない。

――あれだけの力は、きっと女でないとできないことなんだろうな――

 と、感じていた。

 元々が医学博士の天王寺博士なので、医学的に最初考えるのは無理もないことだ。

 医学的に考えると、マインドコントロールに対しても理解できることが結構あった。特に女性ホルモンの力がマインドコントロールにおいて、男性では出せない力を増幅できる力があることを発見した。したがって、生物学的に男性である天王寺博士にはおのずと限界があるということだ。

 それで、天王寺博士が、この大神製薬の社長に就任した理由の一つに、

「男性ホルモンを女性ホルモン並みのマインドコントロールができるようなクスリの開発」

 というのが頭にあった。

 これは、他の誰にも知られてはいけない。自分一人で開発するものだった。

 幸いなことに天王寺博士は、今までも重要な開発に人を巻き込まないようなことが往々にしてあった。だからこの時も、

「いつもの天王寺博士」

 ということで、誰も疑問に思うこともなく、研究ができたのだ。

 果たしてその研究はある程度完成を見ていた。だが、それを実証することはできない。自分でやってみるしかなかったが、まだ時期尚早だと思っていた。

 この薬には限界があり、一度の効果には時間的な制限があったのだ。それもどれくらいの長さなのか、ある程度までは見当がついたが、それ以上のことは分からなかった。さらにマインドコントロールなので、誰に対して行うかというのも難しかった。これが公になれば、人道問題となりかねないからだった。決して表に漏らしてはいけない実験だったのだ。

 天王寺博士は、人工の女性ホルモン、ただし、マインドコントロールを強化する部分だけに特化した女性ホルモンの製造に成功した。これはあくまでも他の部分を無視した製造であり、その分、危険を孕んでいた。そのことを博士は失念していたのだが、そのことはあまり気にすることなく、進められた。

 博士にとって、女性ホルモンがどのようなものであるか、ハッキリと分かっていない。もちろん、それは自分が男であるからで、本質の女性ホルモンを分からずに開発したことが間違いの元だったのかも知れない。

 それでも研究は成功し、その女性ホルモンが効いている時間は、マインドコントロールの威力はすごかった。さらにこのホルモンには、一度マインドコントロールを掛ければ、意識して解かない限り、コントロールが消えることはない。つまり、逆にいうと、コントロールを掛けた博士が何らかの理由でいなくなったりすれば、コントロールする人を失い、制御不能になってしまう。コントロールされる側は何も考えられなくなって、放心状態に陥るか、それとも、何をするか分からない状態になるか、それは誰にも分からないことだった。

 そういう意味ではこの研究は、恐ろしい可能性を秘めていた。

「諸刃の剣」

 とでもいうべきか、何が起こるか分からないという危険性を秘めている時点で、すでに計画は失敗だったと言ってもいいだろう。

 ただ、博士は万が一の時に、その呪縛をすべて解く方法を隠し持っていた。だがそれを誰も知らないところがまた恐ろしい。その時点で、博士はすでに気が狂っていたのかも知れない。

 新規開発の女性ホルモンには、恐ろしい副作用があった。次第に脳細胞が侵されていくというもので、死に至る場合もあれば、死なないまでも、意識は完全に封印され、一度掛けたコントロールは、本当に制御不能になるだろう。

 ただ、制御不能になった時、コントロールを掛けた時の掛けた人間の感情が乗り移っていて、燻っているのだ。そういう意味で、本当に何が飛び出すか分からない。特に博士のように上ばかりしか見ていない人間が、一体何を普段考えているのか、想像もつかないところが恐ろしいと言えるのではないだろうか。

 博士が開発に気を付けたのは、何しろ女性ホルモンなので、見た目の肉体的に、そして精神的にも女性化してしまわないように気を付ければいけない。そのあたりは抜かりなくやったつもりであったが、実際にはそうではなかった。

 女性の中には、女性を好きになる人もいる。いわゆる「レズビアン」であるが、彼女たちの特殊な嗅覚や感性は、男性が女性を好きになるよりも、鋭いのかも知れない。

 博士が女性ホルモンを注入し始めてから、そんなレズビアンの女性の中に、別に見た目も雰囲気も女性らしさを感じない博士に対して、身体や気持ちが反応していることに気付くのだった。

「そんなバカな」

 と、彼女たちは感じるのだろうが、実はそんな女性たちは、大神製薬には多かった。

 そもそもレズビアンではなかったはずなのだが、これも何か開発するためにモルモット代わりにされた、いわゆる生体実験の女性たちは、女性に対しての感情が突出していた。そのため、博士が作った女性ホルモンに反応してしまったのだ。

 彼女たちを作り出したのは、博士自身なので、自業自得というべきなのだろうが、博士はまさかそんな状況になっているなど思いもしなかったので、ずっと最後の方までその変化に気付いていなかった。

 しかも、博士のような天才肌は、自分が失敗しているなどということを絶対に認めようとしない。したがって、自分が失敗しているということに気付くまでに、相当の時間が掛かる。

「誰が見ても明らかだ」

 という時点になって、やっと気づくくらいのものだ。

 しかもさらに悪いことに、そんな状態になっても、自分が間違っていたということを認めたくないという思いが働くことで、すべてが後手後手に回ってしまう。

 そうなってしまってはもう後のまつりで、そんな薬を開発した時点から、狂い始めた歯車はもう元に戻すことのできないところに行ってしまったのだ。

 ただ、これは最後の方のお話。その頃はまったく異変に気付いていなかった博士は、自分の開発した女性ホルモンを使って、どんどんマインドコントロールを推し進めていったのだ。

「これで完璧だ」

 と思い、やっと自分の野望が果たせると思った博士は、ニンマリとほくそ笑んだのであった。

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