第8話:運命の決戦と逃避行
戦闘侍女に羽交い絞めにされ、兵士や王家奉公人に護られながら、わたくしはフェリックスの前から逃がされました。
それを見たフェリックスは悠々と逃げてしまいまい、無念でした!
戦闘侍女や兵士がわたくしを逃がした本心は分かっています。
わたくしに、いえ、コーンウォリス公爵家に王位をとらせたいのです。
戦闘侍女や兵士だけでなく、勇士として立ってくれた王家の奉公人達も、わたくしに期待の眼を向けてくれています。
哀しい事ですが、国王陛下が弑逆された事も、王族達が皆殺しにされた事も、もちろん王太子が殺された事も、王家の奉公人には大切な事ではなかったのです。
いえ、勇士としてフェリックスを斃そうと立ってくれたのですから、王家王国に対する忠誠心はあるのです。
それは彼らの名誉のために声を強くして言わせていただきます。
ですがその忠誠心は、国王陛下個人や殺された王族個々にあるのではありません。
国を護り繁栄させてくれる王や王族に対して捧げられているのです。
既に殺された愚かで残虐な王や王族よりは、これから国を護り繁栄させてくれるであろう私に、彼らの期待が向けられるのです。
わたくしも一旦フェリックスの前から逃がされたしまった以上、公爵令嬢として冷徹な計算をします。
父上や兄上、有為の貴族達を助ける為なら、この国の実権を握るのを躊躇いはしません。
フェリックスが下劣な有力貴族達を皆殺しにするまでは、戦力を整えるのに徹しました。
★★★★★
「フェリックス、もう逃げられませんよ、大人しく縛につきなさい!」
茶番です、敵対する有力貴族を皆殺しにさせてから、やっと本気でフェリックスを捕縛しようとしたのですから、わたくし自身の正義は地に落ちています。
ですが本当に不思議です。
悪辣非道で狡猾な有力貴族の裏を書き続け、彼らを悉く殺したフェリックスが、我が家の兵に簡単に追いつめられたのです。
フェリックスならば、私達の手から簡単に逃げられたはずです。
逃げていてくれたら、わたくしもこれほど苦しまずに済んだのに。
彼がコーンウォリス公爵家やわたくしにこの国の未来を託し、期待してくれているのだと、痛いほど分かっています。
ここまで状況が整えば、態とわたくしに剣にかかり死のうとしているのも分かっています。
わたくしを神聖化するために、殺される覚悟をしているのでしょう。
正直腹立たしいです、分かる人には分かるこの茶番劇です!
わたくしの命の恩人、いえ、この国を救った本当の英雄を、叛逆者として殺さねばなりません!
申し訳ありません、そして、ありがとうございます!
★★★★★★
私の想いをフェリックスが汲み取ってくれました。
刃と潰した剣で手加減して斬りましたから、死ぬことはありません。
しつこく立ったらどうしようかと思っていましたが、素直に気絶した振りをしてくれました。
それだけでなく、フェリックスに似た腐れ貴族の遺体を牢に放り込んでもらったら、鍵を閉め忘れた牢から逃げてくれました。
これで本当に忠臣を殺した罪の意識に苛まれずにすみます。
運命の舞台・公爵令嬢の葛藤と勇気。王太子に婚約破棄言い渡された公爵令嬢は、その場で処刑されそうです。 克全 @dokatu
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