ゲシュタルトは反抗期

花野井あす

ゲシュタルトは反抗期

八郎太のモットーは、手元のことからコツコツと。


だから今日も、今目の前にある掃除から始めます。

部屋はぐちゃぐちゃのごみ屋敷。


洗濯ものは先週から溜めっぱなし。片方しかない靴下が旅に出ています。

生ごみの袋は庭に積み上げられていて、すごい臭い。最早芳香剤です。


さて、何処から手を付けましょうか。

八郎太は悩みます。

ふと八郎太の視界に、床の染みが映りました。

取敢えず、ここから始めましょう。


八郎太はごしごし、ごしごし床を擦ります。

中々汚れは落ちません。

八郎太はクレンザーとタワシを持ってきて、更に擦ります。

ごしごし、ごしごし。


さあ、やっと汚れが落ちました。

すると別の場所の汚れが目に入ります。

さあ、ここもピカピカにしよう。

ごしごし、ごしごし。

八郎太は汗を掻きながら、床の汚れを落としていきます。


掃除に邪魔な床の住人たちは、手で払い除けて。

ごしごし、ごしごし。

どんどん綺麗になって、気分爽快です。


ふう。気が付いたところの汚れは全て落としました。

これで少しは脱・ごみ屋敷です。

八郎太は立ち上がり、辺りを見渡しました。


すると、なんということでしょう。

部屋は更にひどくなっていました。


床はまだらで、固められていた洗濯物の島はさらに細かくなっています。

くさい臭いもそのままです。いいえ。もっとひどくなりました。

だって、花の香りのする洗剤の臭いと混ざってしまっているのだもの。


これは困りました。

手を付ける場所を間違えてしまったのでしょうか。

でも八郎太はくよくよしません。

だって、目の前のことからコツコツすれば良いのですから!


さあ、お次はどこに手をつけましょうか。

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