故ノ屍・死神

 死神は、私に寿命がない理由は直接は教えてくれなかった。けど、


「教える事はできませんが、思い出させることならできますよ」

「え ? それってどう言う……」

「ちょっと失礼」


 前髪をかきあげられ死神のオデコが私のオデコに触れた瞬間。私は、忘れてた記憶が戻る感覚がした。


 それは生まれる前の記憶。私は、本来今世に生まれる筈ではなかったんだ。

 でも、どうしても会いたい人がいてやりたい事があった私に1人の少女が


「私の体においでよ」


 そう言って手を掴み一緒に地上へと落ちてくれた。その少女は母のお腹にいた時、前世で私と出会い一目ぼれしたのだと教えてくれたよ。

 でも、恋愛的な意味じゃないとも言っていた。私に出会って、価値観が大きく変わったお礼がずっとしたかったのだと……彼女は、私に肉体の主導権をくれたが消えた訳ではない。

 ずっと奥で見守ってくれている。だから、私には寿命がないのだ。

 本来の肉体の持ち主ではないから。死神は、最後にこう言った。


「あなたは、生きてる亡者です。

 いつ死んでもおかしくないですし、逆にいつまでも生きるかもしれない」


 考えてみれば、私は九死に一生を得る様な体験を何度かしていた。一番幼い記憶が、水の中から外にいる祖母を見上げる記憶なんだけど……母に聞いたら、体を湯につけてる途中で祖母が手を滑らせ溺れ死にさせかけた事があるそう。

 木から落ちて岩に頭を打ち付けたのに、無傷だった時もあった。近所の犬に追われて、脹脛をかまれるだけで済んだり。

 母の車で移動中、後ろからぶつかられ後部座席にいたが無事だった。他にも、色々あったと思う。


 

 関係ないけど、くじ運いいから宝くじを買わせようと親に連れていかれた3才児の私は売り場の前にあった駐輪場の自転車全て倒してしまい以来当たらなくなったと聞いた事もある。知りたくなかった。

 一度でいいから、一等を当てたい人生だったよ。……まだまだ生きるし、いつか絶対に当てて築80年の実家を立て直す。

 で、農家を再開させるんだ。庭にキャットランとドックランも作りたいし……ひぃじぃちゃんの頑張りのおかげで、土地だけは余るほどあるからね。


 蛇神の夫婦が守ってくれてる土地だし、手放したくはないので頑張るさ。思い出も沢山あるしね。

 じゃあ、これにて愛縁奇縁は終了……って言いながら、またなんかあったら書くかもだけど。ここまで、ご一読下さりありがとうございました。

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真実無妄 里 惠 @kuroneko12

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