ヘイパス王冠(ボツ案の供養)

鳩鳥九

第1話

本編



王「……というわけで、この冠を与えられた者を次の王とする」

王「てなわけでヨロシク」


右隣のその場にいた文官に冠を手渡す


文官①「えぇええ!? 」


タイトル 汗だくで走るオジマンと飛ぶ王冠


文官①②③「ですが国王! 」(このトリオはなんか個性的)


王「ワシもー隠居する、ワシは好きにした」

王「政治は疲れた、しんどい、も~~いや~~」

王「あの手この手は尽くした、何時間も民の要望を聞くのはうんざりじゃ!」


おデブな腹に化粧水を塗る王(ペったんペったん)


王「今は戦争も疫病も無いが、それでも国の活気はなくなるばかりだ」

王「ワシ、一番エライ人なのに、ワシが一番しんどいのはおかしい」


メイドの服を無表情で摘まむ王


王「ワシはもう隠居する。次の王はキミだ」

メイド「王をおやめにられたのでしたらお触りはおやめになってくださいまし」

王「あっごめん」


意外と図太いメイド


王「じゃ、頑張って」


窓の外で鳥が鳴いている


3p


※場面転換


ボロい家と小麦畑が広がっている。


(オレの名前はオジマン・オットー、しがない平民だ)


妻、オクタヴィアが駆け寄る。


(ここを耕すことしか能が無いがこれでも伴侶がいる。貧乏だが今は幸せだ)


オクタヴィア「はい、あなた今日のお弁当よ」

オジ「こんなにか?お前の分はどうした?」(蓄えが少ない様子の倉?)

オク「大丈夫よ、畑仕事のあなたの方がお腹が減るでしょう?」

オジ「すまんな、俺の稼ぎが悪くて、でもお前がいてくれて俺は幸せだよ」

抱擁

オジ「では行ってくるよ」

オク「はい。行ってらっしゃい」


(彼女は仕事前にこのように必ずハグをしてくれる。)



ドアをあけたら目の前にダビデルがいる


ダビ「オジマン!!!来い!!!」


ダビデにつかまるオジマン


オジ「なんだよダビデル、一体どうしたってんだよ」


深刻な顔をしたダビデル


ダビ「国の一大事だ……王が引退したんだ!」



1~2P


中央広場、数百人単位の群衆


文官①「この度、皆に集まってもらったのは他でもない。

    次期国王の話についてだ。王には子供がいらっしゃらない。

    よって、この冠を被った物に全ての権力を譲渡すると仰られた」


動揺する群衆


ダビ「全て!? ってことは金も権力も武器も全部ってことか」

オジ「……すごいことだな……そしたら嫁さんに楽させてやれるかなぁ」

ダビ「インスタ映えするかな」

オジ「紀元前やぞ」

ダビ「B.Cかぁ……」


文官①「というわけで、今から貴様らに冠をくれてやろう。

    勿論、王の後継としてやるべきことはやってもらうがな! 」

文官②(コイツ民に任せたいだけだな)

文官③(でも今はコイツ自身が王だからな。命令なら逆らえん)


文官①「では行くぞ……投げるぞ……」


文官①「あ、せーの、むふぅん!! 」(女の子投げ・内股・ハートマーク)


2p


ダビ「えッ!!?? オレ!!?? 」

オジ「おぉ! 良かったじゃないかダビデル!! 」

ダビ「よっしゃ!オレの優勝だな!! 」

オジ「いや、意味わかんないんだけどまぁ……おめでとう」


1p


数日後、贅沢の限りを尽くし、堕落しまくったダビデルがそこにいた。


ダビ「おぉ我が側近のオジマンか、近こう寄れ、メロンもあるぞ」

オジ「落ちぶれるスピードの速さよ……!」

ダビ「借金を全て返し、労働から解放され、旨い飯を食いつくした。

   浮気もした。不倫もした。W不倫もしたぞ」

オジ「なんか聞いたことあるぞソレ」

ダビ「山も買った。宮殿も作った。私用プールも作った」

オジ「満喫してんな」

ダビ「インスタのフォロワーも100万人を超えたぞ」


古代ローマっぽいスマホカバーに包まれたパチモンっぽいスマホを取り出す


オジ「まさか本当にあったとは、インスタ……」


ダビ「はぁ~強いて言えば国から動けないってのがな~旅行とか行きたいぜ~」

(インスタはえスポットで写真とるのにぃ~とかぶつくさいってる)


オジ「たしかにお前が俺を側近にしてくれたおかげで俺も嫁さんも生活が楽になった。

でもオレ達の立ち位置が変わっただけで前の俺らと変わらん暮らしをしているものはまだいるんだぞ?」

ダビ「そうなんだけどさぁ~

   めんどくさいしどうしたらいいかわかんないじゃん~~

   守りたいものとかオレないもんな~~独り身だし~~」

オジ「独り身関係ないだろ……ないのか? 」


背後から忍び寄る謎の影


???「……やはり素人には任せておけんな……」


2p


ばこーん


ダビ「ぐぎゃあ!」


その時、ダビデルは背後の近衛兵に槍で叩かれて気絶してしまう。


オジ「ダビデルゥウ! おい! しっかりするんだ!

     なんだこの槍は……護衛はどうした?」


そして奪われる王冠、その近衛兵は王冠を頭にかぶり、王を名乗る。


コーダ「オレの名前はコーダ! ダビデル王は死んだ。

    この王冠さえあれば王なのだろう? ならばオレが王政を引くのだ」


ダビ「うぅ……頭痛が痛い……俺はもう……」

オジ「おい! 気を強く持て! 旅行に行きたいんじゃないのか!?

   そこでインスタ映えする写真とるんだろ!?」

コーダ「こんな自堕落な王だと国がダメになる。オレが支配する。そして……」

ダビ「うぅ……ウユニ湖的なとこで…俺…」


「インフルエンサーに……なりたい……がくっ」


オジ「紀元前んん!! 」

コーダ「無視してんじゃねーぞおお!! 」


ダビデルは全治二週間の傷を負った。意外と助かった。良かった。


2p


後日



オジマンの家



オジ「じゃあ今日も行ってくるよ」

オク「ダビデルさんのケガ……大丈夫だったのかしら」

オジ「そこまで深い傷じゃないかったからな。来月になればひょっこり顔を出すさ」

オク「ならいいんだけど……」


今日のお弁当も穀物が沢山入っていた。

元ダビデル王の命令で、王宮の側近になったオジマン……

コーダ王はオジマンの役職をそのままにして民の意見を求めることにした。

おかげで暮らしは豊かにはなったが家に帰るのが遅くなった。


オジ「すまないな。……苦労をかける」

オク「気にしないで、前より少しだけ楽になったんだもの

   あなたが頑張ってる証じゃない」

オジ「オクタヴィア……」


オクタヴィアの真っすぐな瞳がオジマンを見ていた。


オジ「じゃあ、行ってくるよ、何か欲しいものがあったら言ってくれ」


いつもの抱擁


オク「じゃあ、……2人でスポーツの観戦にでも連れて行って」


娯楽の発達が乏しい時代、彼らの娯楽と言えばそれくらいのものだった。

(コロッセオ的な背景)


オジ「あぁ、それくらいなんでもないさ」




宮殿にて


コーダ「道路を整備せよ、市場にお金をかけ、作物を貯蔵する倉を拡張せよ」

オジ「……」

コーダ「ふふふ、どうしたオジマンよ。ダビデルの仇であるオレが憎くないのか?」

オジ「いや……結構、真面目に頑張ってるし……ダビデル死んでないし……

   まぁ……いいかなって」

コーダ「意外と薄情だなキミは……

    まぁいい。オレは欲望だけのダビデルとは違う。

    民に嫌われないような政策をすればよいのだ。

    税金も下げるし、兵役も短くするし、ヌーディストビーチも推奨する」

オジ「最後のは願望だから」


1p


後日


文官②「財政の枯渇が酷く、文官たちに払う給料がありません。

    褒美が少ないと、国に協力してくれる人材が減ってしまいます……」

コーダ「何故だ。……何がいけないというのだ! 裸一貫で頑張ったのに」

オジ「裸一貫だからじゃない? 」

コーダ「ふむ、公衆の面前で謝罪をしよう。一肌脱がなければな」(ムラムラ)

オジ「それはだからあなたが脱ぎたいだけで……」


全裸


コーダ「だが示さなければならない。権威とは衣の上から着るものだ。

    王と臣下は平等でなければならぬ。裸の王などいないのだから」

オジ「いるじゃん、あなたじゃん」


石でできた宮殿的なところで、文官と全裸の王の記者会見開始


コーダ「はぁはぁ……むふふふ、いいかお前たち、

    今回の一件は全て私の責任だ。こちらで対策を検討する」


文官②(対策か……腹に一物を抱えているような言い方だな)

文官③(腹じゃなくて……股間なんだけどな)


2p


図太いメイド「あの……」

コーダ「なんだねキミ」


図太いメイド「服を全部脱ぐと仰いましたが、でしたらその王冠も脱ぐべきでは? 」


オジ「あっ」


コーダ「……あっ」


文官②③「あ……」


その後、コーダは冠を脱ぎ政権をまた別の者へ渡した。

コーダの政策が空中分解したことにより、また民は混乱したが、

反省することもなく、次の王もその次の王も暴走を繰り返していく……



1p


※※※


次の王


「金が豊かなら市民は喜ぶ。

 金貨を大量に生産して配ればいいじゃろう。1人あたり2000兆円を配ろう」


文官②「王!そんなことをすれば物価がとんでもないことに!!

    お金があっても物資が……!!」


※※※


その次の王


「市民を納税金額別に分けて管理しちゃえばいいじゃん。

 法律も複雑にしてさ、賢くて社会的な人材だけを贔屓しよう

 頭が悪いヤツはややこしい税金を理解できないし」


文官③「どこまで行っても競争……淘汰し合うばっかりでみんな病んでます……

    隣の国に亡命するものも増え……人口が減ってしまいます!! 」


※※※


そのまた次の王


「娯楽と芸術が非常に発展した国は、居心地がいいと聞きます。

 そこにだけひたすら投資しましょう、軍事費も教育も後回しです」


文官②③「大干ばつです! 今年の食糧はもう殆どありません!

     自然災害への対応も後手後手に回っており……! 」


※※※


1p


さらに次の王


「猫を吸え……猫を信仰せよ……」(猫と和解せよ)


オジ「にゃ~ん……」


国民達「にゃ~ん……!! 」


図太いメイド「にゃ~……ん」(こっそり小首をかしげている)


※※


小麦畑に帰ってくるオジマン


ダビ「……オジマン!久しぶりだな、なぜここに!?側近の仕事は!?」

オジ「バカバカしくなって辞めてきた。

   麦畑は…すこし小さくなったな。

   俺も畑仕事に戻るよ…貧乏に戻るけどそれは俺以外も同じだしな」

ダビ「もう、この国は終わりかもしれないな……」

オジ「……」


顔度アップのダビデル


ダビ「ここの王様カスみてぇなのしかいねぇな!! 」

オジ「お前が言うんかい」


現政権の王でさえも、猫アレルギーであったことが判明し、

そのまま失脚するという形になった。


2p


オジ「王冠を手にしたからと言っても、上手くやらなければ意味がない。

   王になれる権利を誰でも手に入れられるようになったというのに、

   結局まだ誰も、幸せになっていない、ということか」

ダビ「ネコちゃんは幸せそうだったぞ」

オジ「ネコちゃんて」


先の6人のダメな王の顔が浮かぶ


オジ「みんな最初はアホみたいな顔して王冠を取り合っていた。

   しかし、みんな失脚したり引退したり怪我をしたり……

   後悔ばかりしていることに気が付き始めたんだ……」


ダビ「アホみたいな顔……か」(さりげなく自分がディスられてることに気が付き、微妙な顔をするダビデル)


オジ「さて、次の王様はどんなことを言い出すのかな?

   国民に笑われるのがいつものことかも知れないけど……」


王様の変更がすっかり恒例になり、動じなくなってしまった二人


1p



レンガ造りの中央広場

かの王冠を被り、高台に上った王が姿を現し、国民に宣言をした。



チョビヒゲ・ナチョス王



「戦争をします」



「戦争を、します」



「もう金も物資も小麦もこの国にはありません。

 となりの国に攻め込みます。勝てば全てを奪うことができます。

 そうすれば経済も豊かになるでしょう……戦争をしましょう」


「よって、来月開催のスポーツの祭典は軍事パレードに変更とする」



ざわつく国民



ダビ「これは……」

オジ「あぁ、マズいな……」


2p


ダビ「おい文官! これは流石にどうにかした方がいいんじゃないか?」


文官①「にゃーん」

文官②「にゃーん」

文官③「ネコチャーン」


オジ「ダメだこいつら、政治鬱になってやがる! 」

ダビ「先王の方針で兵役も疎かになっている。

   こんな状態で戦争なんかしても勝てるわけ……」


デカい台車に積み荷と樽を乗せて、メイドが現れる。


メイド「あらオジマン殿、お久しぶりです」

オジ「あ、図太いメイドさん! 」

ダビ「あの時の、度胸ある図太いメイドさん! 」


メイド「あんまり図太い図太い言わないでくださいます?」


オジ「大荷物ですが、どちらへ? 」

メイド「高飛びですよ。亡命というやつですか?

    隣のヤスンデール王国に逃げます。もうこの国はダメでしょう? 」

ダビ「……そうだな。オレも……いっそのこと……図太いメイドさんと……」

メイド(また図太いって言った……)

オジ「おい!ダビデル!お前までそんなことを言うのか!?」


ダビデルとオジマンは一緒に何年も小麦畑を耕してきた仲だ。

一番気さくに話せる間柄だ。


ダビ「だが現実を見るんだ。国の政治から目を背け、

   勝てもしない戦争のために、スポーツの祭典を蔑ろにするような王だ。

   5年に一度のこの祭典を、皆がどれだけ待ち望んでいるか……

   それを潰されたんだ。もうこの国はお終いなのかもしれないな

   オレは独り身だ。土地を捨てても悲しむ身内はいない」


オジ「ダビデル……」


メイド「オジマンさん、あなたはどうするの?」


ダビデル「オジマン……」


~回想~



オクタヴィアがオジマンの働く麦畑にやってきたときのことである。


オク「わぁ! 私、こんなにも金色に輝く小麦、見たこと無いわ!」

オジ「わはは、この辺の水や土壌の恩恵なのさ。

   この近況の国々でも、ここまで色鮮やかな麦畑はここでしかないらしい」


オク「とっても綺麗……私、この一面の黄金色……好きだわ」

オジ「金が好き? オクタヴィアも存外俗物なところが……」

オク「いいえ、オジマン」


くるりとオクタヴィアが回る。


オジマンの頬が赤くなる。


オク「あなたの瞳と同じ色だもの」



※※※


鍬を握りしめる。



オジ「ダメだ。オレはいけない」


ダビ「オジマン……」


オジ「オクタヴィアはこの国でしか育たない麦畑が好きなのだ。

   スポーツの観戦でルールも知らぬ、味方チームも知らぬ、

   荒ぶる男たちを見て、大声を上げて笑うのが好きなのだ。

   だからオレは、……国を捨てるくらいなら、戦争を止める」


メイド「……」


オジ「ダビデル……オレに力を貸してくれないか!? 」


ダビ「……ったく、しょうがねぇなぁ」


ダビデルは、オジマンのように譲れないものがある人間のことが、

羨ましかったのだ。自分もそうなりたいと思っていた。


ダビ(ちなみに、スポーツの祭典って具体的にどんな感じなんだ? オレ実は行ったことなくて)

オジ(オリンピック的なアレだ)

ダビ(オリンピック的なアレか)


2人の男の会話を聞いたメイド


メイド「……私も……手伝えることはないだろうか?

    これでも宮殿内の給仕だ。多少の内部の情報は持ってる。

    後手後手に回る行政に、私も思うところが無かったと言えば嘘になる」


ダビ「図太いメイドさん、あんた本当に、いい度胸してやがるぜ」


メイド「いい加減、図太いというのはやめてもらおうか」


オジ「なら、君の名前を教えてくれ」


メイド「私の名前か……」



メイド「オリンピアだ」




※※※


町はずれの木のテーブルで作戦会議


オリ「でもどうやって戦争なんて止めるんだ? 」


オジ「戦争前の軍事パレードの催し物に、小さなラグビー大会がある。

   出場チームに内通者を送り込んでパニックを起こす」

ダビ「でもそんなにうまくいくのか?」

オジ「王冠を欲している者、あの王を嫌っている者……

   戦争はしたくないが王の責任は負いたくない者……

   スポーツの祭典が無くなり、熱狂に飢えている者……

   今そんな輩がこの国には溢れている。

   内通者が少なくても混乱状態は作れる」

オリ「その後はどうするんだ? 王が変わっても政治が変わらなければ……」

オジ「戦争が起こるよりマシだ」



オジ「〝政治〟とは元来〝まつりごと〟を語源とする。

   祭りでなければ、変わらない国の意識というものだってある」



ダビ「ダジャレじゃん」

オジ「うるせーーバカ、うるせーーー!!」



オジ「内通者はどうする? 」

ダビ「知り合いに屈強なラグビー選手がいるんだ。彼らなら協力してくれる」

オジ「ダビデル……お前にそんな知り合いがいたとは……」

ダビ「オレのインスタのフォロワーは100万人だぜ? 」

オジ「紀元前やぞ……で、そいつらはどこにいるんだ? 」

ダビ「北東のヌーディストビーチに集まってくれることになった」


スマホもどきをドヤ顔で見せてくるダビデル


オジ「結局ヌーディストビーチ役に立ってんじゃねーか!! 」


3p


ダビ(ところでラグビーってこの時代にあったっけ? )

オジ(やかましいんじゃボンクラお前が言うな行くぞ決戦だ)





当日


何やらすさまじい演説をするチョビヒゲ・ナチョス王に、

なされるがままに洗脳されていくネコチャン(国民)たち


作戦実行直前


待機中の20人の全裸のラガーマンと、オジマンとダビデル

オジ「なぁダビデル……どうして先々々々々々々代のエラシ様は、

   こんな愚行に及んだのだろうな……」

ダビ「かの王は子宝に恵まれなかった。

   子供に恵まれない者は子孫に土地を残せない……

   託す者がいなければ、無責任にもなるし、やけにもなったんだろう」

オジ「そっか……童貞って……辛いもんな」

ダビ「なぁ話聞いてたか? なぁ、聞いてたか人の話おい」



オリ「お前たち!宮殿中のメイド仲間を通じて、情報共有は完了したぞ

   何をぼそぼそしている! いくぞ! 」



1p


試合開始と共に作戦開始

取っ組み合う数十人の屈強な男たちと高まる熱気

歓声が沸き上がって興奮する軍人と国民とネコチャン達

突如、特等席のチョビヒゲに接近する謎の男たち

ユニフォームを脱いで裸体を晒す内通者

そしてナチョス王の胸倉を掴んで高台からフィールドへ落すダビデル

ナチョス王「な、なんだねキミたちは……! 」

ダビデル「試合開始だ……! 行くぞオジマンッ……! 」

全裸男たち「oh~ハッスル~~!! 」(ムキムキ)


1p


ラガーマン①「うおおおお! 」

触発された軍人「おおおお!! 」

ラガーマン②「うおおお!

絶対この作者ラグビーのルール調べずに描いてるけどうおおおお! 」

興奮した観客席「ネコチャーーーン!」



大混乱に乗じて、観客だけではなく国民中の民衆もそれに参加していく。


オリンピアも、その美人メイド軍団も、


男も女も、文官も奴隷も、子供もネコチャンも、


みんながみんな、全裸で王冠を追いかけて、推し付けて、投げて、叫んだ。


1p


熱狂、発狂、乱闘、飛び交う王冠、押し付け合う責任混沌、もげるチョビヒゲ

腐り切った国政に対するうっぷんを晴らすかのように、

みんなが祭りに呑まれてスッキリしていく


ナチョス王「なにをやっているんだ! 私を助けろお前たち! 」

文官①②③「にゃ~ん」

ナチョス王「き……貴様ら……」



かつて、どこかの国に、古代スポーツの祭典の源流が存在した。


そこで行われていたスポーツは全て、みなが裸体を晒した。


男性も女性も鍛え上げられた肉体を晒すことが、会場を沸かしたのだ。


そこではみなが日々の抑制を解き、自然体のままで、存分に身体を動かした。


その祭りは、人々の心に確かな刺激を与え、晴れ晴れしい心持ちにさせたのだ。





1p


もみくちゃでズタボロにされたながらも、

本来の目的を忘れ、狂乱する群衆がうっかり落とした王冠を目撃するナチョス王

地面を這いずりながら王冠に手を伸ばす。

これさえあれば、と思っていたが、また立ちはだかった男たちに睨まれる。


1p


オジマン「ヘイ! パス! 王冠!」


味方の兵士や文官にさえ見放されたナチョス王のパスを、オジマンは求める。

差し伸べてくれた手と高まる高揚感で、ナチョス王はついに……

その場の雰囲気に呑まれて王冠をオジマンにパスしてしまう。


ナチョス王「せーの、むふぅん!!! 」(女の子投げ・内股・ハートマーク)

オジマン「王……! 」


最後の最後で、ナチョス王は混沌の熱狂に身を任せた。


1p


そのまま筋肉の波に押しつぶされていく王を背に、

オジマンは走った。脳裏に小麦畑と妻が浮かぶ。


オジマン「うおおおお! おおおお!! 」


ビーチの向こうに心配になって来た妻が見えた、腕を広げて立っている


1p


全力疾走して走り抜けるオジマン


オク「あなた!!」


妻の腕に走り込む


愛のタッチダウーーーーン!!

(それはアメフトじゃあああ)


国民中が巻き込んで、全員が全てを燃やしきって倒れた。


2p


オク「あなた……こんなにボロボロになって……」

オジ「……みんなの我慢が限界だったんだ。遅かれ早かれこうなってたさ」

ダビ「だが、戦争が無くなっただけだ。問題はまだまだ山積み……

   オレはあんな思いをするのはごめんだ」

オジ「あぁ、オレだってそうだ。王様なんてなったってしょーがない

   オレはまたオクサンと2人で……」


1p


オク「あ、あのねオジマン……2人じゃなくって……」

ダビ「?」


女性なので察して静かにしててくれるオリンピア(堂々とした全裸)


オジ「それって……」

オク「お腹の中に、赤ちゃんがいるの……」

オジ「そうか……そうか!やったな!やったじゃないか!!

   わはは!オレも父親になるのか!それは楽しみだ!!

   家族3人で将来が……将来……が……」



コーダ「お~~い」


1p



後から遅れてくるラグビー軍団と、さらっと混じってるコーダ元・王

国民、文官、メイド、ネコチャン、元愚行を働いた王たち、ヌーディストが集結

みんなボコボコで、ヘトヘトで、スッキリしている。


身勝手に責任を押し付け合って喧嘩して、

でもみんなでスクラムを組めば、戦争だって止められたのだ。

ここに居る人たちが何よりの証拠だった。



モブ「ありがとう。全部めちゃくちゃになっちゃったけど、

   なんだかスッキリした気がするよ。キミが作戦を考えたんだろ?

   みんな、キミに感謝してるんだ」



ボロボロになった土地を見る。

ナチョス王のパスの感触がまだ手に残っている。



オジ「……そうだな……」



オクタヴィアの、腹部の丸みを見る。

ラグビーはチームプレイだ。何かあったらみんなでバカみたいに騒げばいい。



オジ「やってみるか……王様」



カポっと、ヒビの入った国宝の王冠を被る。

小さくて合わない。



オジ「あ、これMサイズだ」



ダビ「……しらんがな」



※※※



物陰に潜む男性に気が付くオリンピア


オリ「……良かったんですか? エラシ王」


王「バレちゃったか、オリンピアくん」


オリ「……っていうかあなたも全裸なんですね服を着てください」


王「キミもじゃよ」


オリ「まさか……ここまでがあなたの筋書き通り……だったんですか? 」


王「いいや……そこまでは考えとらんよ。ただな……」



青空を見て、寝っ転がる王(チンコがスースーする)



王「ワシ1人でずーーっと考えるの……疲れるんじゃよ。

  みなの意見は……みなで考えて決めればいいのに……」



王「王冠があれば王様になれるから、なんでも叶えられる。

  じゃが、その代わり、みんなの願いをなんでも聞かねばならん。

  責任も王冠も被ったから、どっちも投げ出したくなった……」



王「ワシも……裸でスクラム組んで……みたかったなーって」



オリ「王……」



王「まぁもう大丈夫じゃろ、王冠なんて無くとも」



王「あ、あとオリンピアちゃん乳液持ってる?」

オリ「は、はぁ持ってますけど……何に使うんです?」

王「腹に塗るの♡」

オリ「王マジそれやめてください」



1~2p

36~38p



おしまい

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