第14話 「四合院」「ソグド文字」について

 このエッセイは鷲生の中華ファンタジー「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」の「あとがき」です。


 拙作のURLはコチラです→https://kakuyomu.jp/works/16817330658675837815


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 今回、冬籟はザロに「武官にならないか?」と誘いかけています。

 冬籟が有能な人材のリクルートに余念がないのは後々の展開の伏線となっておりますのでご記憶いただければ助かりますw


 白蘭の泊っている宿は、中庭を囲んで四つの建物があります。この点は中国の伝統的な建築様式の「四合院」にのっとってます(ただし後述するように独自設定もあります)。


「四合院」は中国の伝統建築として有名なものですが、一応Wikipediaの解説を引用しておきます。


「名前のとおり四つの辺に建物を置き、中央を庭園とする。方形の中庭を囲んで、1棟3室、東西南北4棟を単位とする北方中国伝統的家屋建築である」

(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9B%E5%90%88%E9%99%A2)


 紙媒体としては、図説中国文明史8隋唐 開かれた文明 31頁に「三彩の宅院模型「三彩の庭院模型」の写真が載っています。


 30頁には以下の記述があります。


「中華宮の官吏と一般の士人の住宅は、伝統的な中軸線と左右対称のレイアウトを多く採用しており、回廊で四合院をつなげている所もあれば、回廊を用いずに長方形の四合院となっている所もあります」


 この『図説中国文明史6隋唐 開かれた文明』では敷地には大門をくぐらなければなりません。


 拙作では冒頭部分、白蘭が街路に面した二階の部屋から下の往来を見下ろしているという設定となっています。

(そして雲雀が人買いに連れて行かれそうになのを目撃するのです)。


 さきほど「四合院は有名だ」と書きましたが、スミマセン、物知らずの鷲生はこのとき四合院をきちんと認識してなかったんです……。


 ただ、書きながら中華ファンタジーの資料本を探していく中で手に取った「図説 民居―イラストで見る中国の伝統住居』では、倒座房という建物があります。


 このような出入り口近くの建物の部屋というのはあまり格が高くないようであり、隊商のリーダーである白蘭が過ごす部屋には格式の面からみて相応しくないかもしれませんが、白蘭は華都の事情を少しでも早く詳しく知りたいので、「あえて」道に面した部屋を取っているのだ……ということにしております。物語の都合ですw


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 今回、雲雀がザロの字に関心を示します。


 お読みいただいてお分かりのように、拙作の中では、琥の言葉はヨーロッパの言語がそうであるように、表音文字・アルファベットで成り立っているということになっています。

 この設定は物語の後半の展開に関わってきますのでご記憶いただければ幸いです。


 史実のソグド人の言語については、ソグド人ならこの方という森安孝夫さんの『シルクロードと唐帝国』で国際語として使われていたのだという記述があります(124頁)。


 表音文字かどうかという細かいことまではこの本には書かれていないのですが、Wikipedia「ソグド語」などを見ていると、ヨーロッパのアルファベットとは違いもあるものの、ざっくり表音文字ではあるようです。


 ソグド人は他の民族に溶けあってしまい、ソグド語も現代にはありません。

 森安孝夫さんの『シルクロードと唐帝国』の355頁にソグド語のその後が書かれています。


7月28日追記

子どもの世界資料集に文字の系統図があり、ソグド文字も出てきましたので、その写真を近況ノートに掲載しておきます(山川出版社 詳説世界史図録 6頁)

https://kakuyomu.jp/users/washusatomi/news/16817330661062241565



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 今回から白蘭の呼び名が「小娘」から「商人」に昇格しましたw

 もう一段、ぐっと呼びかけが変わります。

 どうか最後までご愛読くださいますよう。


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