第4話 「西域の国」「アレキサンドライト」について
このエッセイは鷲生の中華ファンタジー「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」の「あとがき」です。
拙作のURLはコチラです→https://kakuyomu.jp/works/16817330658675837815
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白蘭は冬籟にも話していますが、父親が若い女に入れあげて母親ごと見捨てられたという生い立ちです。で、母親も夫の愛情を取り戻すことばかり考えていて娘にとって良い母ではありませんでした。
この成育歴から、白蘭の見かけの年齢よりも冷めた物言いが出てきます。
琥についてはシルクロードのソグディアナ地方のサマルカンドあたりと想定していますが、あまり史実に忠実ではありません。
拙作「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」では、董帝国の周りに四神を擁する四つの国があるという設定です。
サマルカンドは中国から康国と呼ばれていました。他にも周辺にオアシス都市国家が散在しています。
森安孝夫さんの『シルクロードと唐帝国』という本に「ソグディアナのオアシス都市」95頁という図があります。そこからいくつか拾いだしてみます。
タシケント(石) ブハラ(安) キッシュ(史)、マーイムルグ(米)とかですね。
この本の96頁からこの辺の歴史を引用しておきます。
「ソグディアナはアケメネス朝を滅ぼしたアレクサンドロスの遠征の東の終点となり、以後、セレウコス朝シリア、バクトリア王国の領域に含まれる。その後、ソグディアナ全体に絶対的権力を振るう王は一度も出現せず、ソグド諸国家は互いに独立し、ゆるやかな連合を組んでいた」
「全体としても、紀元前2世紀からは(中略)遊牧国家の間接支配を受けることはあったが、八世紀前半にアラブのウマイヤ朝の直接支配を断続的に被るようになるまでは、ほぼ独立を保っていた」
「しかし、八世紀中葉にアッバース朝の直接支配下に入り、それ以降(中略)イスラム帝国のもとで、ソグド人としての独自性は失われていくことになる」
西突厥などが支配したことはあったにしても、サマルカンドの康国が他の都市国家を統合したりはしていません。
「西域に商人を民とする一つの大きな王国があった」というのは、拙作での独自設定です。
また、歴史的に時代が下るにつれてソグド人の独自性は失われたにせよ、西側の帝国がこの地域の商活動を制限したということはなかったかと思います(東西交易からは利益が上がりますしね)。
拙作で「琥王国が西の帝国の属国になると交易の自由が脅かされる」というのもこのファンタジー小説での独自設定です。要はお話の都合ですw
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あと、拙作で「砂漠の国だから交易以外にめぼしい産業がない」も、董から見て砂漠の向こうにあるのは確かですが、現実のサマルカンドの近くが産業がないというわけではありません。これも董の東西南北にそれぞれ特徴のある王国があるという架空の物語の中で、琥のお国柄=キャラを立たせているだけです。
なお、現在のサマルカンドらへんはどうなってるのかな?と下記の本を読んでみました。この「○○を知るための△章」シリーズ、面白いですよ!
↓
『ウズベキスタンを知るための60章』https://www.akashi.co.jp/book/b361137.html
そういえば、鷲生が住んでいる京都でウズベキスタンの物産展があったので、お出かけしてお皿を一つ買い求めていました! 棚に飾って眺めております。
写真を近況ノートにアップロードしております↓。
https://kakuyomu.jp/users/washusatomi/news/16817330660521396447
あ、芋づる式にもうひとつ思い出しました。
森薫さんの『乙嫁語り』の原画展が、京都国際マンガミュージアムで開かれて、もちろん行ってきたのですが。
そこにウズベキスタン含む中央アジアの展示コーナーがありました! 写真を撮りたかったのですが、ミュージアムから展示品の撮影は禁じられていたので撮らずじまいです。
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今回、「双輝石」のより詳しい説明を白蘭がします。
現実世界にアレキサンドライトという「明るい所と暗い所とで色が変わるとても珍しい宝石」があります。
図書館で子供向けの宝石図鑑を借りて見つけましたw。
Wikipediaにももちろん載っています。
「アレキサンドライト」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%AD%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88
「アレキサンドライト(alexandrite、アレクサンドライトとも)は、1830年、ロシア帝国ウラル山脈東側のトコワヤ(Токовой、Рефт)のエメラルド鉱山(ロシア語版)で発見された。金緑石(クリソベリル、BeAl2O4)の変種。
発見当初はエメラルドと思われていたが、すぐに昼の太陽光下では青緑、夜の人工照明下では赤へと色変化をおこす他の宝石には見られない性質が発見され、珍しいとして当時のロシア皇帝ニコライ1世に献上された。巷説では、このロシア帝国皇帝に献上された日である4月29日が、皇太子アレクサンドル2世の12歳の誕生日だったため、 この非常に珍しい宝石にアレキサンドライトという名前がつけられたとされている。」
↑ウラル山脈の東で発見されたのだそうですので、そこにあるんなら中央アジアでも知られていたかもしれない……という妄想を膨らませて拙作「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」に登場させております(鷲生の想像ですから、この時期のシルクロードの交易品にあったなどと言う史実はありません)。
屋内と屋外で色が変わるので真贋が分かりやすい宝石だと言えるでしょう。
西妃の護符として使われていたこの石を、皇帝が内密に発注したことで、後宮で何か起こったのではないかと白蘭がその謎解きに乗り出します。
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さて、何が起こり、どう解決するのでしょうか。
どうか最後までご愛読くださいますよう。
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