第2話 通報
「え、何これ.......。なんで、ジェシカが倒れてるの?」
ようやく口を開いた小柄な女性が、顔を真っ青にして問いかける。一方で、フィルは残酷な光景を見ながらも、どこか冷静でいた。
「見れば状況的に分かるだろ」
「ええ、嫌でも分かるわよ!でも、受け入れられるわけない!」
「エラ。気持ちは理解できるけど一旦、落ち着こうよ」
セトという青年が、穏やかな口調でエラの感情を鎮めようと試みた。だが、その喋り口がエラの怒りを逆に爆発させた。
「誰が落ち着けるか!こうなったのも元々、アンタらのせいだろ。アンタらが護身用に必要だからって、私の反対を無視するから!」
「だけど、もしなかったら、数年前に押し入った強盗に殺されてたんだぞ」
「は?関係ないでしょ!私が問題にしてるのは拳銃なのよ?」
「なぜ、今更になって言う?今の今まで、何も文句言ってこなかったじゃないか!」
「言ったって聞かなかったくせに!」
「2人とも止めてよ。言い争ったって意味ない。まずは警察に連絡しないと」
フィルと、エラの言い争いに歯止めをかけようと、セトが間に割って入った。しかし、エラの機嫌はもちろん、フィルの機嫌も直ってはいない。そのため、同じ空間に居ることを嫌ったエラは、フィルやセトを睨むような顔を浮かべた。
「勝手にすれば?私、部屋に戻るから。さようなら」
「くそ。自己中な女め」
わざとらしく大股に、且つ足早に去っていくエラが見えなくなった後、フィルが壁に思いっきり拳をぶつける。だが、不幸中の幸いか壁に穴が空くことはなく、代わりにフィルの声にならない叫びだけが、耳の中に入ってくる。セトはそれを無視して部屋を離れ、自らの携帯を見つけ出すと、すぐさま然るべき場所に発信した。
「もしもし、警察ですか?たった今、殺人事件が起きました!」
「事件ですね?すぐに駆け付けますので、詳しい場所を教えてください」
「ヴィゴール通り2番地5丁目、フィル・リーマン邸です」
好奇心の矛先 刻堂元記 @wolfstandard
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