仁のプレゼント。
「仁!!??」
私を守るように立ち尽くしている仁。
仁がおりんさんと対峙しているこの状況。
だが……肝心の仁も、うっすらと見えているように見えてしまう。
つまり霊体なのだろうか。
「仁……?……。」
私は仁にそう問いかける。
すると…こちらにすーーーっと微笑見かけてくれる仁。
「話せないのか!?」
私の問いかけに仁の表情はかげっていく。
悲しそうな顔をする仁。
私は胸が痛くなる。
こんなにも…こんなにも人の声が、人の言葉が欲しくなってしまう事などあるのだろうか。
私は仁の気持ちに、たまらなく苦しくなる。
私はここへ仁を救う為にここへ来たのだ。
それが逆に助けようとしてくれている。
「仁……話せないのであれば…聞いてくれ…。」
すると仁は私の目をじっと見ている。
「私は仁にプレゼントを貰った…めちゃくちゃ可愛いクマのぬいぐるみは本当に嬉しかったのだ。」
仁はニコニコと私を見ている。
「私は嬉しくて嬉しくて仕方なかったのだが……いつものLINEの返信がなくてな……そして学校へ行っても仁はいなかった…私は悪いとは思ったが、気になり仁の家まで行ったのだ…するとお手伝いさんから仁の様子を聞き調べた…そこで辿りついたのが怪しい会社だ。」
私は一息つくと言葉を続ける。
「だが……あの会社は全て購入者に何かあれば自己責任という会社だった……そして私はこのクマのぬいぐるみに何かあるのでは!?と考えた時……きっと仁が残したのであろうメッセージに気がついたのだ…そう、僕はひとし、クマ、と。」
仁は嬉しそうに微笑む。
「おりんさん!!???」
私は私達の前にふわふわとういているおりんさんに声をかける。
私を襲いかかろうとしていたおりんさんを再びみると。
震えながら涙を流し始めていたおりんさん。
私達に何かを感じたのだろうか、それとも自身に起こった悲劇に悲しんでいるのか。
人間である私にその声を聞く事はできない。
だけど……私がなにかに襲われそうなところを救ってくれたいたのは間違いなくおりんさんと仁なのだと思う。
すると涙を流していた、おりんさんの表情が別物へと変わっていた。
私達を見る目がおりんさんのものとは変わっていた。
これは私達を襲ってきたであろう…おりんさんをあの人形へと閉じ込めた男の怨念かなにかなのだろう。
私はその恐ろしい怨念に恐ろしさを感じるが…今はこうして仁が一緒にいてくれてるのだ。
すると手に温かい何かを感じる。
目を向けると……私の手に触れてくる光。
これは…まるで仁の温かさなのかも知れない。
私はぽーーーっと見ていると……なんと、仁の手に僅かながら質感を感じ始める。
「えっ!?仁!?」
私が仁を見つめると仁はニッコリ微笑んでくれる。
そして。
ぐあああああああああああーーーっと叫んだのはおりんさんの声ではない呪いの人形師の声なのだろう恐ろしい大声。
そのまま私達に向かい襲いかかってくる。
すると。
私に目の前でポンっという音を立てたのは握りしめていたクマのぬいぐるみ。
次の瞬間私の手に感じた仁の手のしっかりとした手を握りしめてくる感覚。
「仁。」
「涼子……さん。」
そして、私達の身体から眩い光が解き放たれる。
その光は、ぱーーーーーーーっと辺り一帯を照らし放たれていく。
そして。
◇
◇
◇
「仁……おかえり。」
「部長……ただいま。」
◇
◇
◇
私達が気がつくと、人形寺の本堂の中に寄り添うように寝ていたのだ。
「あれ!?」
「部長……。」
私にニコりと微笑んだ仁。
帰ってきてくれたんだ。
私は目から熱いものが込み上げてくる。
私達は……。
◇
◇
◇
「ふぅ……お嬢様……なんとか間に合って良かったです。」
私達を救ってくれたのはこの人形寺の住職とおりんさんだったのだという。
住職は話してくれたのはこうだ。
私達の危ういところを…気を失いかけていた住職を起こしたのがおりんさんだったという。
そして住職は人形を鎮めるべく経を祈り続けたという。
私達は奇跡的に救われたのだという。
だがその時、人形師も消えたのだがおりんさんも消えていったのだと。
だがその時のおりんさんの表情は、私と仁を見て…不思議と幸せそうな顔を浮かべていたという。
「おりんさん。」
「部長……今回は本当にありがとうございます、助かりました!」
「いやあ…本当に良かったな…だがあんな事はもうするのではないぞ!?」
「あはは、わかりました!僕は今回みたいな事はもう…しません。」
「よし!!ならばよし!我々はオカ研だ!またオカルトを追っていくぞ!!」
「はい!!部長にずっと着いていきます!!」
私達は、ようやく元の生活へと戻れそうである。
だけど少しだけ変化が起こっていたのだ。
それは皆さんに分かるだろうか。
いやあ、分からないだろうな。w
「さあ帰ろう。」
「はい!!」
私達は手を握り歩き出した。
◇
◇
◇
「仁のプレゼント」〜完〜
お読み下さりありがとうございました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます