第33話オカ研にもバレンタインが!?

さて、本日の語りは、この俺…最上輝也が話そう。

今日は、バレンタインというなんとも健全な男にとっては嬉しかったりもする日。

俺にとっては、この学校に転入してきてから初めてのバレンタインだった。

これまで俺は、それなりにチョコは貰ってきた派なのだが……。

「おはよ!輝也!?」

「ああ!仁か!おはよう!」


俺達は、こうしていつもの様に登校していた。

学校入口へと着いた俺は、当たり前の様に下駄箱から上履きを取り出そうと扉を開けると。

ぼとぼとぼとっ!!と音を立て何かが、俺の足元に落ちる。


「うわっ!?なんだなんだ!?」


見ると…そこには包みに入ったチョコが散乱していたのだ。


「まちかよ!これ全部輝也宛なのか!?」


仁は、そう言いながら俺をじと見てくる。


「な…なんだよ……。」

「まぢかぁ……」

「えっ!?」


突然…仁はその場に泣き崩れる。


「うっうっ……うううぅぅ。」

「おい!仁!こんな所でやめろって!」

「だってよ〜!何で!何で輝也ばっかりこんな……。」

「いやいや!仁だってもしかしたらチョコが、入ってるかも知れないしさ!」

「いや…空っぽだったけど…。」

「じゃ、じゃあこれから手渡しで貰えるかも知れないし、まだ…」


俺は、そこで話を中断する。

それは…教室前で数人の女子がニコニコ笑顔で 俺達の目の前に立ち塞がっていたからだ。


「お!?来たかもしれないぜ?仁!?」

「なにっ!?どれどれ??」


すると…三人の女子は声を揃える。


「「輝也君!?手作りチョコです!貰ってください!」」

「えっ!?」

「は!?」


そして三人は俺にチョコを預けると、きゃーきゃー言いながら立ち去ったのだった。

その後の仁には…しばらく触れる事が出来なかったのだ。


そして放課後。


俺は、落ち込んでいる仁と部室へと向かう。


「はぁぁ……いいよな輝也。」

「何がだよ…?」

「僕まだチョコ一個も貰ってないんだぞ??」

「あ!仁!ほらこれからオカ研行くんだし部長が何か用意してるんじゃないか??」


俺はそんな話をすると、既に部室前に辿り着いていたんだ。

ガラリと戸を開け中に入る。

そこには誰の姿もなく…一枚の紙がテーブルの上に残されていたんだ。


「これは??」


俺は紙を手に取り…読んでみる。


『今日はバレンタインデーなので…さ、先に帰ります…あ!今夜ここに来てください♡涼子』

「こ、これは部長からの何かの誘いなのか!?どうなんだろうな?仁??」


俺は振り返ると仁は目が…ハートになっている気がする。

こうして俺達は、部長の何かの企みであろうハズの指定場所に集まったんだ。

時間は午前一時。


「これは…何かの部長の戯れ…だろうなぁ?」

「ん?これは僕達どちらかに対する部長の愛の告白が待ってるハズだ!!貴様にはやらんぞ!輝也!?」

「はぁ?何言ってんだ?仁?」


鼻息荒くしている仁は、一先ず置いておくとしよう。

そしてこの場所は…とある公園だ。

ここに何があるのか?

そこまで知らされてなかった俺達に、ふとLINEが届く。

それは…仁も同様だったらしい。

俺達はLINEに目を通す事にする。

送信者は藤野涼子…部長である。


「ここで…数年前バレンタインデー当日にチョコを渡すはずだった女子が殺害された…そしてその怨念は未だ途絶える事はないらしい。」

「仁??」


文面を読んだ俺は、仁に声をかける。

すると…仁はいつもと違う表情をしている。


「いくぞ!輝也!?」

「お!おう!」


そんな仁と俺は、公園内に足を進める。

肌寒いこの季節に、ここの公園は結構えぐい。

寒さに加えてジメジメした空気…そして時折パキパキっと小枝の折れた音が聞こえる。

その時…俺の耳に誰かの声が微かに聞こえる。


「甘くなぁれ。」


俺は振り返るが…後ろには誰の姿もない。

そして、前を歩く仁に更に着いていくように先を急ぐ。

すると。


「………あっ!?これは…甘いかなぁ…」


そんな声が聞こえた気がする。

更に辺りを見回すが誰の姿もない。

すると聞こえてきたのは咀嚼音だ。

くちゃくちゃと何かを貪る音が聞こえてくる。


「ん?仁?何か聞こえないか?」


その時…仁はもう少し先まで進んでいるようだ。

俺は仁の後を追う。

仁は黙々と指定場所へと向かう。

そして遂に俺達はその場所へと辿り着いたのだ。

闇夜の中に薄暗いロウソクの灯りのような影が見える。


「着いた…ここの古い御堂の中に…あれが部長か!?」


そして仁はガラッと扉を開く!!

すると。


「お…お前ら…お…おそかった…な…。」


頭と口から血を流しそう話したのは…。


「ぎゃーーーーーーーーーーーっ!?」


我に返った仁は、慌てて逃げていく。

そんな仁を見ていた俺は部長を見る。

頭からは血を流すように見せる為の血のり…そして口元には血と見間違えたチョコを食べていたのだろうチョコが見える。


すると。


「なんだ…仁め……逃げおったか。」

「えっ!?部長??」

「これからチョコを渡そうかと思ったところだったのだけれども。」


すると手には二つのチョコを持っていた部長。


「あ…あのな…オカ研だから…こういう渡し方で良いであろう?」

「はい!」


俺目には血のりを顔面に塗り…薄暗い中、少し照れた部長が…可愛く見えた。

ハッピーバレンタイン!!


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