第30話オカ研!最上輝也

「さぁ!言ってみろ!?我々の今日の目的はなんだ!?」


俺達オカ研の主要メンバーは今とある廃棄に来ている。

ここは部長である藤野涼子さんの父親の知人が生前経営していたという。今はもう既に廃墟となっている病院なのだ。

そして、ここを本日の職場見学の視察…いや…部長曰く、最近ここに幽霊が出るようになったという話で、我々はここの調査と言えば聞こえはいいが好奇心だけの心スポ調査に来たというわけだ。

そして我が部長は人一倍気合いが入っているようだ。


「いいか?さっきも話したと思うがここはもう潰れてからかれこれ20年ほどはたっているらしい…心スポとしては新しい現場ではある…だがそんな現場のここで何かが起きたら…私はここを心スポとしてはれて世に広められるという訳だ!!!分かるか??」

「おお!それは凄いです!さすが部長!!」


仁はやたらと部長に甘く持ち上げるのが上手い。

俺がいつもの様にしていると部長は問いかけてくる。


「おい!輝也!?聞いておるのか??」

「はい!聞いてますよ部長。」

「やれやれ…輝也のやる気が最近あまり感じられないのだが。」


部長のその言葉に俺はふと、我にかえる。


(あれ…そういや、俺って只々仁に誘われてここに入っただけ…だよな。いつまでここに…いるんだ…俺…。)


そう考えた時二人の言葉が聞こえる。


「置いていくぞ!輝也!?」

「輝也ーーー!早く行くぞーーー!!」

「おう!今行く!!」


(今日終わったら…抜ける事伝えようかな。)


俺は二人の後をおう。

この病院は四階建てだ。昔はエレベーターも使用可能だったが今はタダの廃墟だ。

移動は足で全て周るしかない。

俺達は一階から全ての部屋に立ち入り、そして一部屋ずつ調査していく。

時間はこの時、午前一時。

しかもこの辺りには住居が無く聞こえてくるのは虫の声くらいなのだ。

まずは一階を調査するも何も無さそうだ。

そして俺達は二階へと向かう。

深夜の廃墟である院内。

不気味な雰囲気を漂わせ俺達に感じるのは無の音と視界を遮る暗闇だ。

俺達の装備は懐中電灯のみだ。

肌に感じるのは割れた窓ガラスから時折吹き込む僅かな風。

俺達は三人で一歩一歩進んでいく。

二階も難なく過ぎ俺達は三階へと進む。


「ふぅ…そう簡単には霊というものは現れんものだな。」

「そうですね…部長が怖かったり??」


仁は冗談でも和ませようとしている。


「輝也??おい!輝也??」

「えっ?あっ!ああ!」


俺は立ち止まっていた。

さっきの事を考えていたからだ。

そして俺達が辿り着いたのは手術室だった。


「ここは。」

「ああ…手術室だな…霊が出るというのはこんな場所なのだろうか。」

「あ!すみません!さっきの辺りにトイレあったんで僕ちょっと行ってきますね!」


仁はそう言い残し、走り出していく。


「じゃあ我々が先に入っておくか??」

「あ!了解です!」


俺は部長と二人先に入る事にしたんだ。

そして別々に懐中電灯を当てながら調査していく。

ここは手術室。

病院での死と言えばここで起こる事がやはり多いのだろう。

あまりこの部屋の雰囲気は良くないように俺は感じていた。

そして、俺はここに部長と二人でいる事を思い出し、先程の話をしようと声をかけようとしたその時。

ガシャガシャーーんっと色々な物が落ちる音と共に部長の叫び声。


「キャッ!!!!!」

「えっ!!??部長???」


俺は部長を確認する為ライトを向ける。

すると、照らした先には転んでいる部長の姿。

部長の元へ行き彼女の顔を見ると、その表情は恐怖の形相を見せる。


「あ…あ…………てる……や……。」

「えっ!!??」


俺は部長の視線の先へと目をやる。

そこには…なんと…恐ろしい表情を浮かべヨダレを垂らしてこちらを見ている巨大な顔が!!!


「部長!!!しっかたねぇな!!」


俺は部長を抱き抱えると。

走り出す!!!!!

今見た何かを俺は振り切り部長を抱え走る。

後ろから感じるのは奴の気配なのか。

俺達を追ってきているのか??

俺は走る。

次第に部長の腕もきつくなる。

よほど怖かったんだろう。

だから…こんな事もう…止めたらいいのに。

俺は考えるのを止め無我夢中で走った。

でも。

いつしか脳裏に部長そして仁と三人で過ごした時が思い浮かんでくる。


「くっ!」


俺はひたすら走る。

すると部長が口を開く。


「輝也…。」

「はい?」

「オカ研…やめるの…であろう?」

「えっ!?」


俺の思いがいつしか伝わってしまったのだろうか。


「言わぬでも分かっていた…ただ…今まで付き合ってくれて…ありがとう。」


部長はそう言うと俺にしがみつく腕に力が篭っていた。

「はぁ…はぁ…はぁはぁ」

「ようやく…出れてこれたよ…ありがとうな輝也。」

「いえ…部長。」

「ん?なんだ??」

「部長…怪我してますよ…。」

「気にするな…かすり傷だこんなもの。」


部長は俺の腕から降りる。


「くっ!?」

「ほら…部長…痛むんでしょ。」

「ああ…すまん………。」


俺は部長の顔にライトを当てる。


「うわっ!やめろバカ!輝也!お主。」

「あはは!部長!部長がすーぐ怪我するしさ、これからも俺がこうして助けるからさ。俺まだいるよ。オカ研…好きになったんだ、ここが。」

「えっ!?」


すると病院の入口からライトが見えてくる。


「おーーーい!部長!輝也!おいてくなよー!!」

「お?なんだ仁?泣きながら来おったな。」

「ほんとだ…何かあったかー?」


俺達は仁に大声で答えると仁は走りながらさらに叫ぶ。


「トイレで滑って足を用を済ませた中に突っ込んだんだよー!!」

「「なにーーーーーーーっ!!!??」」


仁が俺達に近づいてくる。


「「くるなーー!仁!近づくでは無い!!」」

こうして俺達の絆はより深まったのである。

そして部長の願い通りここは心スポ登録されたのです。





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