第12話オカ研夏の思い出

皆様こんばんは!

おや?夏の疲れが出ているようなお顔をされてますね?

どうぞそちらに腰を落ち着けて、私の話でも聞いていきますか?

そうですね…。

ではこの夏を締めくくるお話でもいたしましょうか?

さて!夏といえば夏祭りでしょうか?

あの彼らオカ研のメンバーも夏祭りへと行ったようで。

「俺の名前は『最上輝也もがみてるや』俺の通う学校にもオカルト研究会という少々変わったメンバーがいる活動クラブがあるのですが。」

「おい!『輝也』!?何をお前はさっきからブツブツ言っているのだ??」

「こちらの素敵な女性は『藤野涼子ふじのりょうこ』俺の入っているオカ研の部長をしている女性。オカルト話がめちゃくちゃ得意でそっち系の話になると人が変わるという変わり者。でも…残念なくらいすげぇ可愛いんだよな。」

俺がそんな事をつぶやいていると部長は俺の目の前に仁王立ちをしている。

折角の浴衣姿が台無しな程だ。

するとそんな俺達の後方からはぁはぁと息を切らしながら近づいて来る者がいた。

こいつはひとし俺の親友でもある。

「はぁはぁ!部長も『輝也』も酷いよ!ちょっと待ってくださいよ!?」

「仁!!やっと来たか!?」

「部長!なにもジャンケンで出店並ぶの決めなくても!?皆で色々な所に並べば全部買うのにこんなに時間かけなくても済むじゃないですか?」

部長は仁の持っていたりんご飴を奪いひと舐めする。

ペロリと舐めるその姿。

そして口の隅に少しだけついている飴。

俺もそして奴…仁の顔を見ると部長のその行動になぜか顔を赤らめ先程までぶぅぶぅ言っていた仁も黙るのだった。

というか俺もその光景に不覚にもドキドキしてしまったのだ。

「さぁ!いこうか?」

「「はい。」」

ああ…男とは何故!?

女性のこんな仕草を見ただけでときめいてしまうのだろう。

ある意味これが怪奇だ!

俺はそう思ったのだがこの部長には勝てない事を改めて知ったのだ。

その後。

ひとしきり夏祭りを三人で楽しんだ後、俺達は見晴らしのいい高台へと辿り着く。

「ふぅ…夏というのはいいものだな?お前達もそう思わないかね?」

「確かに!」

「後はここに可愛い女の子でもいたらなぁ。」

「バカっ!?仁!?何を言って…」

「あ!?」

そこには鬼よりも恐ろしい何かに変身した部長の姿を俺達は見た気がした。

「「ひいいいいいーーーーーっ!!!」」

「ふぅ…おまいはひ!?ほんはひほはいははひはひひはいんはっはは!!(お前達!?そんなに怖い話が聞きたいんだったら!!)」

口いっぱいに飴を頬張る部長は飴を俺に手渡しそして。

語り始めたんだ。

「語ってやろうではないか。身も毛もよだつ話を。」

俺達は凍りつきながら部長の話を聞くのだった。



さて。これから話すのは私も聞いた話でな…実は今日のこの祭りは大昔から伝わっている祭りでな…。

この地に大昔とある村があったのだ。

村は農村だったのだがある時この村は日照り続きで農作物も枯れ果て…そして大飢饉が訪れた。

村の者は話し合い天に祈るも当たり前だが効果はなかった。

そんな時この村に一人の大男が現れる。

「村の者よ!我の名は『百舌鳥もず』街でこの村の噂を聞き付け来てみたのだ。我の言う通りにすればこの飢饉を乗り切ることができるぞ!!」

男はこの村の現状を見るやいなや、そう声を上げたのだ。

村の者達は初めは騙されてると思ってはいたが話くらいは聞こうとする。

シャクッ!!

百舌鳥もず』はどこからともなくとある実を取り出しひとかじりする。

「おお!あれは!?」

「あれは!?りんご!?なのですか?」

村の者もりんごという果実は知ってはいた。

なぜならこの村でも今は枯れ果ててはいるが育っていたのだった。

「貴方様は神?なのですか?」

誰かがそう言った。

「そうとも!いいか?このかじったりんごだがここに植えてしまおう!さすればこの木はたちまち育ちこの村の飢饉も乗り越えられると言うもの。」

「おお!それは助かります!!」

「「凄いです!!貴方はりんごの神ですか?」」

村人皆が口々にそう歓喜の声をあげる。

こうしてこの村はりんごによって救われたのである。

「へぇ!部長!今回は平和に話は終わりましたね!」

「いい話で完結とは!初めてだ!」

俺も仁も部長に感想を述べる。

部長は俺から奪ったりんご飴をひと舐めする。

「続けるぞ?村人達はりんごのお陰で食べ物にありつけ潤ったのだ…『百舌鳥もず』を崇める村人達そんなある時……村の若い娘はいつもの様に『百舌鳥もず』の元へ食事を届けに行く。」

部長はりんご飴を舐めながら話を続ける。



「『百舌鳥もず』様!お食事をお持ちいたしました!」

すると何か様子がおかしい。

耳を澄ます娘。

「うぅぅぅ……」

「『百舌鳥もず』様??」

娘は『百舌鳥もず』の部屋の扉越しから異様な声を聞く。

娘は恐る恐る扉を開けるとそこにいたのは。

くちゃくちゃと何かを頬張りぺろぺろと滴る水滴を舐める『百舌鳥もず』の姿が!!??

「ひっ!?」

娘は『百舌鳥もず』の変わり果てた姿に怯えその場にへたりと座り込んでしまう。

「くくく…俺様のりんごをたらふく食ったお前達…この時を待っていたぞ…やはり美味い!」

ジュルリと舌なめずりをする神男様。

娘の視線の先には同じ村の娘である八重やえの変わり果てた姿。

「ひっ!ひぃぃぃーーっ!お助けぇぇぇ!!」

次の瞬間。

ガブリッ!!!

「きゃぁぁぁーーーーーっ!!」

百舌鳥もず』に捕まった娘はまるでりんごを食うかのようにその肉を食われ…そして滴る血の色はりんごの様に真っ赤だったのだ。

俺も仁もその話に動けなかった。

部長はこともあろうに話に準ずるかのようにりんご飴を堪能していた。

「こうしてその男『百舌鳥もず』はりんごを食わせた村人達を次々とくらい…この村には一本のりんごの木しか残らなかったのだ。そして、この祭りはその木と村人の供養の為に行われるようになったといわれているのだよ?」

ペロッ!

部長は妖艶にりんご飴を舐める。

だけど俺達は動けない。

「なんだ?お前達!また私の話にすっかり恍惚の表情をしているのか?」

「あ!あがが………。」

仁の何かを見たかのような表情。

それはまるでその『百舌鳥もず』の姿を見たかのような…。

いや違うんだ!!

それはこの俺にも部長の真上に巨大な男が部長に今にも襲い掛かりそうな姿が見えている。

「うわあああーーーー!!!!」

一足先に仁は走り逃げ去る!!

俺は部長の手を取り走る!!

「あっ!」

部長はりんご飴を片手に俺と共に走る!!

「「うわあああーーーーーーっ!!」」

きっと部長の目にも映ったであろう奴は。

先程話していた『百舌鳥もず』の姿だったのかもしれない。。。

おやおや。

オカ研のメンバーも貴重な体験をされたみたいですねぇ。

お?貴方は実に優秀ですねぇ!

私の話を逃げずに聞いていたとは?

あれ?

どうしました??

おやおやどうやら。

寝たみたいですね。



あ!寝たのではなく。気絶してたのですね笑

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