第10話「卒業と告白」

誠の大学一般受験日から数週間後、卒業式を迎えた。

大学に進学する人、浪人する人、就職する人と様々な旅たちの日であった。

式が進むにつれて泣きじゃくる人が増えて、終わる頃には女子の半分以上は泣きじゃくっていた。

聡美も例外なく泣きじゃくっていた。高校生活3年間、水泳を頑張ってきてなかなかタイムが伸びずにスランプになった事。大会に出ても勝てなかった事。色々な事が思い出された。

そして、式が終わり教室に戻り最後のホームルームが始まった。

その頃には、泣きじゃくっていた人達も落ち着き先生の話に聞き入った。

全てが終わり教室を出て校庭に。そこでは思い出にそれぞれ写真を撮り合ったり、最後の別れのハグをしたりしている。聡美もみんなと写真を撮ったりした。

しかし、聡美には最後にしなくてはならない事がある。それは、誠への告白だ。

みんなと写真を撮ったり、別れのハグなどをしながら誠の姿を探した。

聡美は誠の姿を見つけると駆け寄って行った。そして、色々を高校生活3年間の思い出話をして、ついに告白のチャンスがきた。「あのね誠。私、実は・・・・」と言いかけると「誠!写真撮るぞ!こっち来いよ~」と誠の友達から声がかかった。「おぉぉ~わかった。今行くよ〜」と返事をして「悪い。写真撮るからまた今度」と言い残し聡美の元から去ってしまった。

誠は、わかっていた告白されることを。そして、凄く照れ臭かった。そこに丁度よく声がかかったので助かったのだ。

数日後、聡美は大都市の大学に進学するための引っ越しの日が来た。この間、誠に会えていない。

引っ越しの為に慌ただしくしていたために会う時間が無かったのだ。

そして、聡美は引っ越して行ってしまったのだ。聡美の心には、何かひっかりがある。地元を離れる悲しさでもなく、新たな生活が始まる不安でもない。それは、誠に告白出来なかった事だった。

誠は、たぶん地元の大学に進学するから「誠には、誠の新生活が始まる」と聡美は諦めるしかなかった。

聡美は、大学から電車で20分ぐらいの所にマンションを借りて引っ越した。入学式まで聡美は、引っ越し荷物の片付けと生活基盤を整えるのにアタフタしている。誠に告白できなかった事を思い出す暇などなかった。

そして、入学式の日を迎えた。大学の入学式は、高校の入学式と違い3倍?4倍?それ以上の人数が出席。そこに、親たちが出席するので物凄い人数で行われたのだ。

式が終わり聡美は、会場の外に出た。会場の外では、同じ高校から大学に入学してきた人達が楽し気に話している。聡美には、同じ高校から大学に入学してきた友達はいない。なので、外に出て親と合流する予定でいた。親を探しているとフッと見覚えのある後ろ姿を見つけた。誠だ。まさか〜これだけの人数がいれば一人や二人ぐらい似たような人はいる。それに、誠は地元の大学に。誠が一般大学受験すると言っていたけど、この大学を受験しても誠の学力だと合格はムリ。違う大学を一般受験したんでしょ!と思い親と合流することにした。

親と合流すると親から「おめでとう。聡美。聡美と離れ離れになり寂しくなるけど、大学頑張るんだよ」と。聡美もそれに答えるように「ん!がんばる。心配しないで」と。親は、帰りの電車の都合で直ぐに聡美の元から離れなくてはならなかった。離れる際に「そうそう!誠君、一般受験して地元の大学よりイイ大学に合格したらしい」と言い残した。親を駅まで送り手を振ってわかれた。

聡美は、親を送りマンションに帰る途中「誠もやるじゃん!私も誠に負けられない。これから頑張って行かないと」と決意を新たにした。

翌日、ついに大学生活が始まった。大学に行き講義室に入ると、まずは単位の取り方などのガイダンスから始まった。

ガイダンスが終り講義室を出て校舎の外に向かう。校舎の外には新入生を獲得しようと各部・各サークルのブースがぎっしり並んでいて一生懸命に勧誘している。聡美は、水泳を続けるのか!?新たに違うことをするか!?迷いながら様々な勧誘する人達の間を歩いていた。そんなさなか見覚えのある後ろ姿。また~入学式の時と同じじゃん~と思いながら今度はしっかりと顔を確認しよう!と思って後を付けた。

そして、ある勧誘を受けた時立ち止まった。それは、バトミントン部だった。チラシを受け取り振り向いた瞬間、顔が確認できた。それは、誠だった。聡美は、人をかき分け勧誘には一切答えず急いで後を追った。しかし、追いつかず見失ってしまった。

聡美は《あれは誠だよな?見慣れた顔だから間違えるはずがないよな?》と思いながら勧誘の激しい道を戻って行った。

その時「あっ!全国高校水泳大会で優勝した聡美さんでしょ!?水泳部に入部しに来てくれたんでしょ!?」と勧誘された。そこは、水泳部のブース前だった。《えっ!なんで!?》と思いながら「違います。違います」と言うのが精一杯。「とりあえず仮入部ということで」押し切られてしまった。

聡美は、本当に良かったのだろうかという気持ちで色々な部やサークルのブースを回って説明を受けた。

そしてその日の大学のガイダンス・部やサークルの説明を受けて帰る時に再び見覚えのある後姿を発見。

今度は見失わないように後を付けていった。

人が多く後を付けて行ってあと数メートルで追いつくと言う所で校舎の角を曲がられてしまい、聡美は慌てて人をかき分けて走り出した。

そして、聡美が角を曲がると姿が無かった。《あれ?いなくなった。見失った》と思い来た道を戻ろうと振り返ったら人が立っていた。聡美は、ビックリして後ずさりをした。そこに立っていたのは見覚えのある顔だった。そ・そ・それは誠だった。聡美は、大声で「誠!」と言いながら涙を流し誠の首に腕を回して勢いよく飛びついた。

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「水の中で輝く女子高生、夢を追い泳ぎ続ける」 ニート「キムチ」 @kimchi17

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