第9話「大学受験」

月日が経ち晩秋、誠の大学受験の日を迎えた。誠は、受験会場に着き自分の受験番号の席に着席するが緊張で落ち着かなかった。

教科は、国語・数学・英語の3教科。まずは、国語から。試験問題が配られ暫くすると試験管の「始め!」の合図で試験が始まった。問題を読み解きながら解答用紙に答えをスラスラと記入していく。

聡美から借りた問題集が誠の受験する大学のレベルより難しい問題集だったので、試験問題をスラスラ解答することが出来たのだ。

国語の試験が終り、誠の緊張も解けて2教科目の数学、お昼を挟んで3教科目の英語と1教科目の国語の様にスラスラと調子よく解答することが出来た。

試験が終わり帰宅すると、ベッドに倒れ込んだ。いくらスラスラ問題が解答出来たとは言え、バトミントの練習・試合での疲れとは違う。今までにない疲れが襲ってきたのだ。

ベットで寝ていると聡美からスマホに電話がかかってきた。寝ぼけながら電話に出ると「どうだった?ばっちり出来た?」と明るい声が聞こえた。「ばっちり出来たよ。次はお前の番だから」と答えるのが精一杯。そのまま寝落ちしてしまった。

数日後、聡美の大学受験日である。聡美の受験する大学は、今住んでいる地方都市から離れた大都市にある。なので前日に家を出て受験会場近くのホテルに向かった。ホテルに着き、食事を買いにコンビニへ。戻ってくると聡美のスマホに誠から電話がかかってきた。「ついに明日だな。頑張れよ!あんな難しい問題を解くんだから大丈夫だから!」と。その言葉を聞いた聡美の頬に一筋の涙が流れた。

翌日、聡美の大学受験日。教科は国語・数学・英語の3教科。誠の受験科目と同じで教科・同じ時間割で試験が始まった。

聡美は、あまり緊張してなかった。開き直った感じで受験に臨んだのだ。どの教科でも「うっ!?なんだ!」とつまづく試験問題があったが何とか解答していった。

受験がお終りホテルの部屋に戻ると、誠と同じようにベットに倒れ込み寝てしまった。

お腹が空いて目を覚ますと夜中だった。食事を買いにコンビニに向かうと「夜中なのに街が明るい。人が沢山歩いてる。車も沢山走っている。そして、騒がしい。これが大都市なんだ。私が住んでる地方都市とは違う。合格して大学に通うことになったら大丈夫なのだろうか?」と少し不安がよぎった。

二人の推薦入学の大学受験は終わった。数日後、それぞれの推薦入学試験の合否の結果が郵送されてきた。二人とも合格。しかし、高校生活は、まだ終わらない。受験時期が晩秋だったのでまだ学校での授業は残っている。二人は元気よく学校に登校して勉強を続けている。そして、冬休みを迎える。

高校を卒業したら誠は、地元の大学に。聡美は、大都市の大学に。別れ離れになる。そこで聡美は、お正月に誠と一緒に初詣に行ってその帰りに告白する計画を立てた。悔いを残さないために。

「誠!お正月一緒に初詣行かない?」「悪い。俺、受験勉強あるから」と意外な答えが返ってきて驚いた。

「えっ?どうしたの?地元の大学に合格したじゃない?どう言う事?」と不思議と怒りが入り混じった顔で勢いよくたずねた。「実は・・・・行きたい大学があって、その大学を一般受験するんだぁー」と聡美の勢いに負けて、たどたどしく誠は答える事しか出来なかった。そんな事とは聡美は知らず、聡美の計画はまたしても失敗してしまったのだ。

約1ヶ月後、誠の一般大学受験の日を迎えた。聡美は、誠がどこの大学を受験するか知らない。なので、受験日の日も知らない。誠は、聡美に知らせる事なく希望大学の一般受験に臨んだ。


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